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No.224(2014/1/17)
バングラデシュの最低賃金77%引き上げ

 バングラデシュの衣料品産業労働者の最低賃金は、現行の月額3000タカ(約4020円)から12月に77%アップの5300タカ(約7102円)に引き上げられると報道されている。前回の最低賃金の引上げは2010年であるため3年ぶりの改定となる。バングラデシュの最低賃金は、政府の設置した最低賃金委員会(政労使で構成)で審議し、産業・業種ごとに政府が決定する。改定は5年に1度となっている。また、昨年は労働法の改正も行われ、火災時の安全確保など、安全・衛生をはじめ大幅な修正がなされた。
 最低賃金の大幅引き上げのきっかけとなったのは、2013年4月、首都ダッカ近郊で1130人が死亡した縫製工場の倒壊事故にあるといえる。この事故以外にも火災などによる事故が度々起きており、これまでに多数の労働者(大半が女性)が犠牲がとなっている。こうした事故から、低い賃金と劣悪な労働環境に対する抗議デモや争議も度々起きている。今回の改定に対しても、労働側は8000タカ(約1万720円)の要求からかい離しているとして抗議デモを行っている。
 バングデシュの縫製産業の最低賃金は、月額約68ドル(約7129円)となったが、この水準はインド71ドル(約7444円)、スリランカ73ドル(約7654円)に近づいたものの、ベトナム79ドル(約8283円)カンボジア80ドル(約8388円)の水準からはかい離している 。なお、ベトナムは2014年から最低賃金を地域別に14%~16%程度引き上げる予定である。また、カンボジア政府も、今後5年間で縫製・製靴業の最低賃金を倍増させると発表している。

【経済を支える縫製産業の過酷な労働実態】
 ILO報告書「社会経済面のより良い成果に向けて雇用条件の改善を図るバングラデシュ(2013年11月)」によれば、バングラデシュは労働力の豊富さと人件費を含めたコストの低さを武器に世界でも有数の縫製大国となり、外貨獲得の大部分を縫製産業に依存している。輸出額に占める衣料品の割合は、1989-90年は39%であったものが、2010-11年には77%に達している。
 しかし、ベトナム、カンボジアなどでも安く安定した品質で縫製品が作られているため、常にグローバルレベルでの激しい価格競争にさらされており、そのしわ寄せが労働者への強い負荷となっている。長時間労働に加えて通勤時間も長いうえ、保険・衛生環境の劣悪さ、工場の事故・火災の安全対策の欠如など、労働者の働く環境は過酷である。
 衣料品製造業界では約400万人が働いており、そのうち80%以上が貧しい農村出身の10代後半から20代前半の女性である。その最前線で働く数百万人もの若い女性にとって、安価な衣料品を求める海外からの需要は貧困から家族を救う好機となる。また、衣料産業の女性労働者は、バングラデシュ経済を支える大きな原動力となっているものの、一般的には、裁断、縫製、アイロン、折り畳み、梱包などの作業に従事し、監督職へ昇進の機会はほとんどないのが実態である。
 衣料品事業が急速に拡大したことにより、最貧国のひとつであったバングラデシュの所得は大幅に増加し、世界銀行によるとバングラデシュの貧困層は1990年の57%から2010年には31.5%に減少した。実質GDP成長率は、縫製産業と海外からの送金などを背景に平均6%を超えている。このように好調な経済成長によって貧困率は下がってきてはいるものの、人口の76%が1日1人当たり2ドル未満の収入で暮らしているのが実態である。
 報告書は包括的な労働市場・社会政策が導入されない限り、バングラデシュは経済の勢いを維持し、持続可能な形で生活水準を改善させることができないだろうと警告し[1]既製服部門を中心とした労働条件の改善と経済展望[2]効果的な最低賃金の役割を通じた賃金設定政策の強化[3]インフォーマル就業者対策[4]男女格差対策等幅広い分野に対する措置の必要性を提起している。

*1タカ=1.34円(2014年1月8日現在)
*1ドル=104.85円(2014年1月8日現在)

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