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No.222(2014/1/7)
デトロイト市の破産判決がカリフォルニア、ニューヨーク、シカゴに暗い影

 公務員年金の減額を禁じているミシガン州で、連邦破産裁判所によってデトロイト市の破産判決が下された。同市は今後裁判所の管理下で債務を整理し、財政再建を図ることになる。デトロイト市は、過去に財政を支えてきた自動車産業の衰退や治安悪化による人口流出で約180億ドル(約1兆8747億円)もの負債を抱え、今年7月に破産の申し立てをしていた。連邦破産裁判所のロード判事は、公務員年金も削減の対象になると認定した。
 この判決を受けて、カリフォルニア州で破産申請中のストックトン市やサンバーナーディーノ市で年金削減論議が巻き起こっている。カリフォルニア州でも多くの市町村が多額の年金支払いに苦しんでおり、年金減額を認めない州法が、他方では増税も規制していることから、警察や消防などの予算を削っている現状がある。
 その中でストックトンの再建計画は市債債権者に対し1%以下という償還を提示しながら、年金は減額していない。この点について投資会社各社が、多くの年金を扱う"カリフォルニア公務員退職基金"との交渉がなされていないと苦情を訴えたが、却下され、1社を残して市との和解に応じた。他方、サンバーナーディーノ市では年金減額を求めて上記退職基金への保険金支払いを停止しているが、これも係争中である。
 さらに12月8日には、ニューヨーク市議会でも公務員年金の減額を禁じる州法の改定が論議になり始めたと報道され、次にはシカゴの警察官、消防士を含む公務員年金の赤字が市民1人当たり7100ドル(約73万9465円)に達するという深刻な事態も伝えられている。
 連邦破産法では判事の認定による大幅減額を認めてはいるものの、債権者の間に差別があってはならないとしている。デトロイトの判決では減額は調停によるとして、特定額は示しておらず、合意には多くの時間がかかると思われる。
 その中で、赤字財政に苦しむ多くの地方自治体はその事実を率直に公表しながら、将来に禍根を残さないよう留意しつつ、出来る限りの支払いを続けてゆくしかない。

*1ドル=104.15円(2013年12月25日現在)

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ファストフードの15ドル(1562円)賃金要求をめぐる議論

 12月5日、ニューヨークをはじめとする全米100都市のファストフード店従業員たちが、現行およそ9ドル(約937円)の時給を「生活可能なレベル」にするため15ドル(約1562円)の引き上げを要求して全日ストライキを行なった。
 レストラン側は賃上げが高額すぎること、自動化などで雇用は減少するとして反対しているが、数百万ドルを注ぎこんで賃上げ要求を推進している国際サービス従業員労働組合(SEIU)は「運動がかくも活発化した現在、マクドナルド、バーガーキングなど各社は交渉に応じざるを得ない状況にある」と言う。
 15ドル(約1562円)への賃上げの価格への影響は、その3分の1が労務費であることから3ドル(約312円)のハンバーグが3.50ドル(約364円)から3.60ドル(約374円)になると予測されるが、別の見方は退職率の低下や生産性向上で値上げは10%程度の止まるとするものもある。しかし業界側は値上げによる消費者離れなどで値段は最終的に25%から50%上昇するという。
 多くの意見は穏健な賃上げなら良いが、15ドル(約1562円)への急激な賃上げは自動化機械の導入などで雇用が減少するとしており、カリフォルニア大学のノイマーク教授も雇用が5-6%減少すると推計するが、同時に現在政府が支出するフードスタンプなどへの補助金70億ドル(約7290億円)への依存も減るとしている。
 15ドル(約1562円)への賃上げ要求達成の方法としては住民投票や市議会における決定に訴える方法があり、最近ではカリフォルニア州のシータック市の住民投票で空港従業員への15ドル(約1562円)が承認された。SEIUのヘンリー会長は、マクドナルドなどが徴収するフランチャイズ料の引き下げなどを示唆するが、業界側は「そうなるとファストフードからの撤退が出てくる」と言う。しかしヘンリー会長は「われわれ労働組合90年の歴史の中で、賃上げで企業がつぶれた経験は無い。雇用の確保はわれわれにも大切だ」と語る。
 全国小売協会は「今の経済の問題点は十分な雇用が無いということだ。小売やサービス産業は大きな成長の余地があるブライト・スポットだ。それなのになぜ雇用を減らす方法をとるのだろうか」と主張する。
 値上げをすれば消費者離れを引き起こすと述べる経済学者がいるが、低賃金労働者への賃上げが消費を増やして停滞する景気を底上げするという学者もおり、今後の動向が注目される。

*1ドル=104.15円(2013年12月25日現在)

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