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No.218(2013/12/11)
全米各地で最低賃金引き上げの運動続く

 アメリカでは、オバマ大統領が連邦最低賃金を引き上げる政策を提示し、ノーベル経済学賞の受賞者であるポール・クルーグマン教授らも、アメリカ経済にとって有効な政策であるとの支持を表明しているが、経営側から資金提供を受けている雇用政策研究所は、賃金引上げが失業者を増大させると指摘している。
 シアトル近郊のシータック市では、最低賃金引き上げの住民投票が郵送により行われ、従来の最賃9.19ドル(約940円)を15.00ドル(約1534円)に引上げるとする提案が承認された。
 投票率は58%で賛成3040、反対2963という77票の僅差であった。このため反対派は集計の再チェックを要求して、再点検が行われる。
 この住民投票に運動資金として使われた金額は広告、郵便代など210万ドル(約2億1480万円)を超え、労働組合側は国際サービス従業員労働組合(SEIU)の32万5000ドル(約3324万円)を筆頭に合計140万ドル(約1億4320万円)、企業側ではアラスカ航空の15万5000ドル(約1585万円)、レンタカー企業の10万ドル(約1023万円)など合計70万ドル(約7160万円)を使い、投票1票当たりの金額が327ドル(約3万3449円)にのぼるという、特に労働組合の強い意気込みが際立つ結果を示した。
 現在、連邦段階では最低賃金7.25ドル(約742円)の10.10ドル(約1033円)への引き上げ論議がなかなか進まない中、全米各地ではこうした動きが起きており、さきに15ドル(約1534円)が市長の拒否権にあったワシントンDCでも2016年までに11.50ドル(約1176円)とする提案が民主党により再度上程され、アラバマ州やバージニア州の郡でも11.50ドル(約1176円)が論議されている。
 民主党優勢のカリフォルニアではすでに2016年までに10.00ドル(約1023円)にすることが決められ、マサチューセッツ州でも同様の論議が行われており、ニュージャージー州では11月に、住民投票によって時給8.25ドル(約844円)とすることが決まった。サウス・ダコタやアーカンソーという赤字の州でも引き上げ論議が起きている。これらは民主党による次回選挙への下工作という面もあるが、DCなどでは物価上昇による実質的要求が強い。1968年の最低賃金は、現在の物価指数との比較では10.77ドル(約1102円)の水準にある。
 こうした各地における最賃引き上げが実現することになれば、その影響は全米各地に急速に広がる可能性がある。

*1ドル=102.29円(2013年12月3日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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