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No.216(2013/12/3)
マレーシアの労働事情

 国際労働財団(JILAF)は、グローバル化が急速に進展しているアジアの中で、インド、マレーシア、フィリピンの3か国の過去招聘参加者を再度招聘し、10月23日、連合会館で労働事情を聴く会を開催した。
 報告されたマレーシアの労働事情ついて紹介する。報告者は、マレーシア労働組合会議(MTUC)プレム・クマール・エーエル・アッパカッディ氏(メイバンク管理職組合事務局長)、キアン・ニアン・ロー氏(マレーシア労働組合会議サラワク支部事務局長)。

 【成長の中での格差拡大と外国人労働者】
 マレーシアにおける2011年の一人当たり国民総所得は8770ドル(約87万2000円)であり、上位中所得経済国である。また、2012年~13年の経済も実質で5%~6%の堅調な成長を維持できる見通しである。
 こうした経済成長から取り残された人々も多く、所得格差の拡大が続いている。マレーシア人的資源省の「National Employment Returns 2009」調査によれば、民間部門労働者の33.8%は、1月当たり700マレーシアリンギ(MYR)(約2万2000円)未満の賃金に甘んじている状況である。これは、2009年の貧困ライン所得である月800MYR(約2万5000円)をはるかに下回っている。とくに多いのは、サバ州で全体の63.0%の労働者が700MYR(約2万2000円)未満の賃金である。次いで、サラワク州の48.1%、マレー半島の27.2%となっている。
 マレーシアは、完全雇用(2013年の失業率は3.0%前後で推移)を享受しているものの、労働人口の4分の1以上を占める300万人の外国人労働者がマレーシアで働いている。このうち、約100万人は不法就労者である。外国人労働者の多くは、低い賃金の仕事をしており、適正な賃金が支払われていない。
 さらに、主としてインドネシアからの外国人労働者が約30万人いるが、彼らは国内労働者として雇用されている。この労働者たちは、多くが目に見えない存在であり、マレーシア労働法に基づくいかなる法的保護も受けてはおらず、低賃金、劣悪な労働・生活条件の下、長時間労働を強いられている。

 【最低賃金制度がスタート】
 2013年1月から最低賃金制度が施行されることになった。マレー半島では、900MYR(約2万8000円)/月、(4.33MYR(約136円)/時間)、サバ州とサラワク州では800MYR(約2万5000円)/月、3.85MYR(約121円)/時間)となっている。中小企業等への配慮から、施行時期は1月1日、7月1日などとなっているが、2014年1月から完全実施されることになる。適用労働者は、家事使用人を除くすべての労働者(外国人を含む)となる。2012年のマレーシアの平均賃金は1881MYR(約5万9000円)/月、中央値は1400MYR(約4万4000円)/月となっており、900MYR(約2万8000円)は平均賃金の47.8%の水準となる。
 MTUCは、「(労働組合の)承認要求に起因する紛争は苛立たしいものであり、労働者の適正賃金に関する交渉能力を妨げる」と述べている。これは、マレーシアでは労働組合が活動をしようとすれば、人的資源省の審査・登録を行うことが必要であるとともに、使用者の承認がなければ団体交渉もできない。使用者が承認を拒否した場合、労組は労働組合登録官に訴えることができる。しかし、労働組合の活動停止(最大6ヵ月)の権限が国にあるなど、当局の権限は非常に大きい。
 こうした抑圧のなかで、マレーシアにおけるストライキの件数は少ないものの、最低賃金の実施を求める外国人労働者によるストライキが起きている。人的資源省によれば、2013年3月、繊維、ポリエステル(ヌグリ・スンビラン州)、家具メーカー(ジョホール州)の外国人労働者約2000人が900MYR(約2万8000円)/月の実施を求めてストライキを実施した。外国人労働者は、バングラデシュ、ネパール、ベトナム、スリランカとインドネシアの出身で、大部分の外国人労働者が1ヵ月240 MYR(約7500円)~500MYR(約1万5500円)で働いており、外国人と地元の従業員を公正、平等に扱うよう要求した。

 【60歳定年制もスタート】
 最低賃金制度に続き、2013年7月1日以降、民間部門の最低退職年齢が60歳(2012年最低退職年齢法)となった。また、公共部門に関しては、2013年1月1日に実施済みである。これまでは、定年についての法的な定めはなかったが、ほとんどの企業で55歳定年制を採用してきた。55歳定年制はアジアの中でも少数(バングラデシュ、ネパール)で、60歳定年制が大勢となっている。
 MTUCは、60歳定年制の効果として、マレーシア人の所得水準の引き上げ、国内需要及びGDP(国内総生産)への貢献、退職時における十分な老後の備えの確保、個人の退職計画の促進、外国人労働者への依存の軽減、有能な人材の引き止めと確保をあげている。

1ドル=99.54円(2013年11月12日現在)
1マレーシアリンギ(MYR)=31.047円(2013年11月12日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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