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No.215(2013/11/28)
アメリカ急進右翼保守派茶会党(ティーパーティー)衰退の兆候

 急進右翼保守派の茶会党(ティー・パーティー)の衰退が目につきだした。
 茶会党はオバマ大統領選出の2009年ごろから米国政界に強い影響力を与えるようになり、2010年の米中間選挙でアメリカ政界に異様な保守主義の嵐を巻き起こした。共和党を動かし、オバマ・ケア阻止を目的として10月に政府機関を機能停止させ、アメリカをデフォルト寸前にまで追い込んだ。
 しかし、こうした動きが行き過ぎだとする反省が富裕層や保守派エリート、実業界に生まれており、政治を中間的なものに戻すきっかけになる兆候が出始めている。
 きっかけになったのは政府機能の停止もあるが、バージニア州知事選で共和党が敗れたこと、そして右派による貧者への攻撃と利益や富への崇拝が行き過ぎたとの反省がある。  
 フォーブス400で世界の金持ち252位にランクされ、世界最大の債券運用会社ピムコ(PIMCO)の投資責任者であるビル・グロス氏は「私が富を築けたのは、レーガンからブッシュへと続いた優遇所得税制、それに投資資金を容易にしたFRBの金融緩和政策であった。しかしそれは国民所得の中の労働者シェアを低下させ、富裕層の資本へのシェアを拡大させた。今日、富の偏在により労働者は大きく傷つき、金を借り、金融手数料を取る者の方が、生活に手を使う者より遥かに大きなチャンスを持つようになった」と嘆く。そして「今、一般所得の半額に置かれているキャピタル・ゲイン課税も一般と同率にすべきで
 あり、富裕層も相応の税負担を担うべきだ」と主張する。
 また、次の問題は富裕層や実業界が茶会党に何の影響力を持たない点であり、さらに茶会党が当選可能性を度外視して、その右翼的主張に沿う候補者しか支持しないことも大きな問題である。
 首都ワシントンの隣で人口も多く影響力の強いバージニア州では、4年前の州知事選挙で共和党が圧勝したが、今年は茶会の支持を受ける過激な右派候補、ケン・クッチネリ氏が民主党候補にあえなく敗北。同氏は人工妊娠中絶に反対するなどして宗教保守層にラブコールを送り、ランド・ポール上院議員や連邦政府を機能停止に追い込んだ立役者の1人テッド・クルーズ上院議員などを動員したが、茶会党系政治家の華々しい応援は、逆風を生み出したようだ。
 実業界はこうした現実無視の茶会党による失敗に苛立っており、バージニア州のフェアファックス商工会議所では民主党候補を支持する事態も起きた。また、共和党員や保守派知識層の中にも各州における福祉予算削減が行き過ぎだと考えるものが出ており、とりわけ、共和党のオハイオ州カジッチ知事は"貧しいものはふがいない怠け者"だとして貧者を攻撃する共和党を自ら非難しつつ、茶会党の反対も無視して、オバマ・ケアによる医療保険を拡充する決定を出した。また経営側の著名なシンク・タンクである"アメリカ企業協会"の会長も「社会セーフティーネットに対する攻撃はまったく不健全である」と述べて、低所得者向けに行われている食料費補助対策であるフードスタンプや失業保険を是認するよう保守派同僚に呼びかけている。同協会の専門学者も同意見で、フードスタンプ、失業保険が経済危機の際にうまく機能したとしているが、茶会党はこれらプログラムが単に人々の怠け癖を助長しただけと主張している。
 茶会党は特定の立場を持たない人民主義と考えられてきたが、茶会党が力をつけたときに、保守派と共和党員はその力を使おうとした。しかし、茶会党はもろ刃の剣であり、助けになるより傷つける公算も大きい。共和党内部では大企業や商工会議所などの保守本流が、同党予備選での茶会系候補擁立を避け、より穏健で、よりビジネスに理解のある候補を支援する動きが目立ち始めており、過激な茶会党を今後どのように扱うか、共和党は大きな難題を抱えている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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