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No.214(2013/11/26)
フィリピンの労働事情

 国際労働財団(JILAF)は、グローバル化が急速に進展しているアジアの中で、インド、マレーシア、フィリピンの3か国の過去招聘参加者を再度招聘し、10月23日、連合会館で労働事情を聴く会を開催した。
 報告されたフィリピンの労働事情の中から、雇用情勢の特徴と労使紛争解決のメカニズムについて紹介する。報告者は、フィリピン労働組合会議(TUCP)のアンナ・リザ・ロタ・レガシピ女性・苦情処理委員。

【フィリピンには失業者のほか、不完全就労者が19.2%占める】
  めざましい経済成長が伝えられるフィリピン経済であるが、雇用面に目を向けると経済成長とはかけ離れた厳しい実態となっている。
 フィリピン労働雇用省(DOLE)の発表によれば、2013年7月時点の15才以上人口は、6446万8000人と推定され、このうち、労働力人口は4117万8000人で、労働力率(LFPR)では63.9%となる。これは、2012年7月の労働力率(64.0%)とほぼ同じ水準である。労働力人口のうち、就業率は92.7%、失業率は7.3%と推定されている。
 地域別に見た失業率はNCR(マニラ首都圏)が最も高く、推定で10.9%となっている。失業者のうち、男性が61.3%を占めていることに加え、失業者のほぼ半分(48.9%)が15~24歳の若年層に偏っている。
 2013年7月の不完全就業率は前年同月の22.8%から19.2%へと大幅な低下が明らかとなった。不完全就業者数は、734万1000人となり、前年同月比で122万4000人の減少となった。不完全就業率は、いわば潜在失業率と同じ意味を持っており、生活のため追加的な仕事を必要としている者である。
 2013年7月の不完全就業者のうち、労働時間が週40時間未満の就業者の割合は57.1%を占め、40時間以上働いた就業者は41.8%となっている。また、部門別では、農業部門41.7%、サービス部門42.0%、工業部門16.3%となっている。
 不完全就業者と失業者を合わせると1000万人を超える状況にあり、また、若年層の高い失業率等を考えると、極めて厳しい雇用状況と言わざるを得ない。

2013年7月の労働力調査(LFS)の結果

2013年7月 2012年7月
15歳以上の人口(千人) 64,468 63,114
労働力 率(%) 63.9 64.0
就業率(%) 92.7 93.0
失業率(%) 7.3 7.0
不完全就業率(%) 19.2 22.8

2013年7月の推定値は暫定であり、変更になる場合がある。

【労使紛争解決のメカニズムに新たな制度がスタート】
 労使紛争の主な原因には、違法な解約や解雇、適正賃金の不払い、労働条件、労働協約(CBA)違反、セクシャルハラスメント、職場での暴力(言葉、肉体的、精神的暴力など)などがある。こうした問題がエスカレートすれば、公式の労働事件として労働裁判所への提訴、あるいは争議(ピケ、ストライキ、座り込みなど)に発展する。
  労働組合が未組織の企業の場合、会社側は職場における協議・対話の場として労使協議会(LMC)を設置し利用している。しかし、多くの場合、LMCは組合を弱体化するために利用されている。LMCの労働側代表は、一般に経営側によって指名されている。このため、労働側代表は会社側に友好的な労働者の中から選ばれている。したがって、LMCにおける協議は有効な社会的対話とはなっていない。
 労働組合が未組織の企業では、通常は苦情処理委員会が労働者の苦情の解決にあたる。苦情処理委員会で解決されない労働事件は、労働裁判所や全国労使関係委員会(NLRC)で争われることになるが、その前にシングルエントリー・アプローチ(SEnA)で仲裁・調停を経なければならないこととなった。
 SEnAは、先ごろ可決された共和国法第10396号(あらゆる労働事件に対する任意的紛争解決方法としての調停・仲裁を強化する法律)に基づき制度化された。SEnAは、労使紛争を公式の労働裁判所に送る前に、30日間で任意の調停・仲裁を行う義務的手続である。その目的は[1]労使紛争または労使関係から生じた問題に対し、迅速、公平、低費用かつ利用しやすい解決方法を提供する[2]あらゆる労働事件の解決に調停・仲裁の活用を奨励する[3]紛争解決に関わるDOLE関係機関間の協力と調整を強化することにあるとされている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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