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No.209(2013/11/12)
インドネシアにおける労使紛争の現状と課題

 国際労働財団(JILAF)は、9月26日、「海外労組トップリーダー・有識者聞く!~アジアで増大する労使紛争を未然に防止するために~」をテーマに、労使紛争未然防止セミナーを開催した。
 以下、セミナーで報告されたインドネシアにおける労使紛争の現状と課題について、概要を報告する。

報告者:インドネシア労働組合総連合(CITU) サイード・イクバル会長

 インドネシアの1人当たりGDPは、2011年の2500ドル(約24万6千円)から、2012年には3500ドル(約34万5千円)と急速に伸びている。しかし、貧富の格差を示すジニ係数は、2011年の0.39から2012年は0.41と不平等は拡大している。また、労働力人口の67%がインフォーマルセクターの労働者である。

【労働者が抱える最重要課題】
 インドネシアの最低賃金(全国平均)は、生活に最低限必要な費用の89.6%の水準にしか達していない。インドネシアのGDPはタイの4倍となっているが、労働者の賃金はタイの3分の1程度の水準である。
 インドネシアの労働者の約8割が、アウトソーシング(派遣労働、業務請負が中心)の労働者で、年金保障がある者は0.05%にすぎない。また、病気になっても保障がないうえ、賃金も低い。
 最近のインドネシアの労働争議の争点は2つあり、工場などの労働争議のほか、パブリック(公共性)における争点である。例えば、ほとんどの労働者が適用とならない社会保障制度。最低賃金の引き上げである。また、アウトソーシングの問題のほか、労働裁判の手続の問題などがある。最近5年間の主な争点のうち、1番目は社会保障、2番目が最低賃金の引き上げ、3番目がアウトソーシングの廃止である。

【労働争議の特徴と原因】
 2012年~2013年、工場などで起こっている労働争議の原因の第一は、組合つぶしで全体の36%を占める。次いで労働者の権利に関する紛争が28%、雇用形態(アウトソーシング、契約社員)の問題が28%。賃金紛争(毎年の賃金交渉)が6%、倒産をめぐる問題も2%となっている。争議の中には、犯罪である暴行、虐待、あるいは監禁、事務所の破壊なども起きている。
 次に争議のタイプで見ると、賃金に関する紛争、2番目が利益に関する紛争(利害衝突)、3番目が解雇に関する紛争、4番目が組合間、組合同士の間での紛争がある。
 労使紛争の解決には2つ仕組みがあり、一つは訴訟による方法、労働裁判所等の判断を仰ぐ方法。2番目は訴訟によらない方法で、最初は労使で協議を行ない、そこで解決できない場合は調停、仲裁に移行する方法である。

【社会保障制度の導入等の運動に成果】
 最近のデモは公共的な性格を持ったもので、年金などの社会保障の問題、最低賃金の引き上げを目指して行っている。このほか、ジェンダー問題もクローズアップされている。
 こうした問題の中でも、公務員などを除くと1億5000万人の市民が受けられない社会保障の問題が最も大きい。2番目が最低賃金である。インドネシアの最低賃金(2012年)を諸外国と比べると、インドネシアより低いのはカンボジア、ベトナムぐらいで、インドネシアは本当に低い。3番目が労働者の8割を占めるアウトソーシングの問題である。1日の労働時間が長いうえ、賃金も低い。解雇されても泣き寝入りせざるを得ないことも多い。
 以上のような状況を変えていくために、「ファクトリーからパブリック(工場から公共へ)」というスローガンを掲げ運動を進めた結果、2011年に新しい法律が制定された。 
 2014年の1月から、例外なく全ての労働者が医療保険、医療保障を受けられることになった。2015年には、年金保障も実現されることになった。
 派遣については、5業務(清掃サービス、労働者向けケータリングおよび輸送サービス、警備員、炭鉱・油田での補助業務)以外については原則禁止の方向1となった。
 以上のわれわれの行動は、テレビ等で取り上げられたことにより、市民、労働者へ労働組合運動の成果が伝わり、組合数、組合員数の拡大につながっている。また、これらの組合の行動には女性も多く参加している。

講演録(詳細)はこちら

*1ドル=98.71円(2013年11月7日現在)

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メルマガNo.92(2011/11/16)http://www.jilaf.or.jp/mbn/2011/092.html

1派遣労働の原則禁止については、経営側の反発が強いため、関係者の合意が得られるまで大臣令を出さないとも報道されており、今後の動向を注視する必要がある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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