バックナンバー

No.208(2013/11/8)
インドにおける労使紛争の現状と課題

 国際労働財団(JILAF)は、9月26日、「海外労組トップリーダー・有識者聞く!~アジアで増大する労使紛争を未然に防止するために~」をテーマに、労使紛争未然防止セミナーを開催した。
 以下、セミナーで報告されたインドにおける労使紛争の現状と課題について、概要を報告する。

報告者:インド全国労働組合会議(INTUC)
R.D.チャンドラシェカール青年担当書記長

 インドの労働力人口は4億5600万人となっているが、このうち組織部門といわれるフォーマルセクターの労働者は、わずか6.2%の約2800万人である。残りの93.8%は未組織部門(インフォーマルセクター)である建設業や農業等で働いている。また、毎年2000万人の若者が労働市場に加わると推計されている。
 
【労使紛争の現状】
 インドの労働組合の活動は活発化しているが、これは、外部の闘争的な組合リーダーによる扇動によるものと、賃上げなどをめぐるストライキなどで労働争議、ロックアウトが起きているためである。
 インドの労使紛争で見られるストライキの多くは、自動車産業で全体の30%を占めている。次いで自動車の部品や電子産業が18%、3番目は繊維・アパレルの12%となっている。公共部門におけるストライキは、数字的には非常に低い。

【外資系企業の労働事情と労使紛争】
 外資系企業における労働者の力は、契約労働者をはじめ様々な雇用形態の労働者が増えたことによって、労働者の力の分散化が進んでいる。賃金も労働者のタイプによって異なり、同じ機械で同じような仕事をいていても、賃金・労働条件、その他の福利、ボーナス、インセンティブ、全てが違う。さらに、契約労働者は、トレーニングの機会が十分ではない、もしくは全く無いという問題がある。
 外国企業における正規労働者の割合は1割ぐらいである。残りの労働者は、全て非正規であり、団体交渉には全く参加できない。その結果、賃金等に大きな違い(格差)が出る。契約労働に従事をしている労働者は、請負業者かエージェントを通じて仕事をしており、このような業者も多数あるため、団結に結びつきにくい。
 2008年は、労使紛争やストライキが非常に多く1000件ほどあったが、その後減少してきた。2013年9月の段階では340件が記録されている。労使紛争には、基本的に労働省またはそれぞれの地域にある労使委員会が間に入り、紛争の解決に当たっている。しかし、経営者、企業によっては、労働省や地元の労使委員会の勧告を受け入れないところもある。
 公共部門は、インド国内で最大の労働者を雇用しているが、この公共部門でもストライキが起きている。その原因は、サービスの条件や賃金である。経済特区においては、労働組合の登録(労働組合法により当局に登録することによって権利が保障される)もできないという問題がある。 
 
【労使紛争と労働者の課題解決に向けて】
 2008年から12の主要なナショナルセンターのうち、ほとんどの産業や業種をカバーしている7つの組織が連合を組み、政府と交渉し調整を図ってきた。例えば、2月に全国的なストを行ったが、その後、国はハイレベルな委員会(ハイパワーコミッティー)を設けた。この委員会では、首相や労働大臣も参加して交渉を行い、国は、インフォーマル労働者に対して社会保障を付与するという結論を得た。7つのナショナルセンターの協力によって、このような成果が得られた。
 また、労働組合の指導者は、多くの労働者に支持される者を選出する必要がある。外部から来た人たちが指導するのではなく、内部で選ばれ、支持された人たちが指導者になるべきである。( インドの労働組合役員は、役員総数の3分の1または5人の少ない人数まで、外部から役員を受け入れることが可能)
 最近のインド経済は、経済成長率も落ち込み、インフレも起きている。生産性もこの2年間落ちている。こうした結果が購買力に影響を及ぼしている。しかし、こうした中でも、スキルアップするため、様々な形で教育や研修、訓練の機会というものを提供すべきである。こうしたスキルアップによって労使紛争は少なくなるはずである。

報告録(詳細)はこちら

過去の関連記事
メルマガ8/22お知らせ(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/ex014.html
メルマガNo.183 (http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/183.html)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.