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No.206(2013/10/31)
フォルクスワーゲン工場の労働者協議会結成をめぐって

 全米自動車労組(UAW)による、労働組合に対する反発が強い米国南部テネシー州・フォルクスワーゲン(VW)チャタヌガ工場の組織化をめぐり、賛成、反対の論議が激しさを増している。
 会社とドイツ労働組合幹部たちはヨーロッパで普及している"労働者協議会=ワークカウンシル(WC)"設置を解決策として提案している。
 ドイツVWのオステルロー労働代表が訪米し、「労働組合ということではなく、経営会議に時給労働者とホワイトカラーの声を反映するWC設置」を提案する計画である。
 労働協約を交渉しストライキを組織する米国労働組合にとって、ドイツで普及しているWCが受け入れられるか、テネシー州労働者と政治家を満足させられるか、南部諸州に工場を伸ばす自動車産業にUAWの楔を打ち込めるか、大きな課題である。
 ドイツでのWCは長い歴史があり、経営への労働者参加"ミットベシュティムング(共同決定法)"の重要な柱でもあるが、経営者もWCが労使紛争を回避し、生産性を向上させる方法と考えている。
 しかし多くの米国人は、成長率ゼロのヨーロッパで国民健康保険や6週間バケーションと並んで一般慣行化したものがWCだと受け取る反面、ドイツの失業率を5.2%に抑えているのもWCと理解している。
 チャタヌガのひとつの問題は、「WCに加入するのに1600人労働者がUAWに入る必要があるのかどうか」である。UAWはWCを歓迎はするが、「法的に見て過半数の労働者が労働組合を承認して初めて可能となる」と述べており、多くの労働専門家も同意見である。
 この点コーネル大学のハード教授は「もし会社がWCのような代表者制度を設定して労働組合がそれに反対した場合、それはカンパニー労働組合として認定され、米国労働法に違反することになる」と語る。
 ドイツにおいて、労働組合とWCとが協力する場合は多いが、両者は同じではない。WCの委員は従業員から選出され、人員整理など労働条件に関する協議に参加する権利を持つが、賃金交渉などには関与しない。それは労働組合の特権であり、多くは産業別に交渉される。また労働組合のある会社と無い会社の間の明確な区別は無く、誰でも労働組合に加入できる。労働組合が力を持つのはストライキや経営への圧力をかける場合、充分な多数労働者を獲得した場合である。最低規模以外の企業では、労働者が労働条件に影響を与える諸政策について協議する委員会委員を選出する。大企業では労働者代表が監査役役員会に名を連ねて、役員人事や主要政策の協議に参加する。200人以上の企業では会社がフルタイムで労働者代表の給与を負担する。VWについていえばチャタヌガを除く全ての工場にWCがある。
 ドイツにおいても、経営者は時として従業員の意見に耳を傾け、情報を提供するのを嫌がるが、経営危機などに際して労使協力には効果的だとする点では異論が無い。ある調査では2009年の急激な景気後退時に労使協力により失業が抑えられたとする結果も出された。
 ゲザムトシュテル(製造業経営者協会)でも「いかなる制度にも長所、短所があるが、ミットベシュティムングには基本的に得るべき価値があると見ている」と見解を述べ、オステルロー氏は米国においても活かされると考えている。
 それがチャタヌガ労働者に受け入れられるかどうか。また「労働組合組織が出来ることは州の経済成長にマイナス」として反対する共和党議員や、その州知事とも面談してどういう結果が出るか、注目を集めている。

AFL-CIOトラムカ会長が訪中

 中国は過去半世紀にわたってアメリカの労働運動に問題を起こしてきた。数十万人の職を奪い、米国製造業崩壊にも大きな役割を果たしたといわれる。
 その間、アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)会長が訪中したことは無かったが、それをトラムカ会長が破ろうとしている。共産党公認以外の労働組合は認められていない中国訪問であり、マスコミへの発表は無いが、予定は4日間といわれる。
 その中で、トラムカ会長は北京・徐州・上海を訪問して労働者や弁護士たちと面談し、移民労働者の訓練所や炭鉱、上海のGM工場なども訪問し、労働者同士の意見交換をする予定だという。
 AFL-CIOは傘下のソリダリティー・センターを通じて世界の労働運動を支援しているが、中国については警鐘を鳴らすことが多く、外国為替の操作や人権問題については激しい指弾も行なってきた。過去には中国の世界貿易機関(WTO)加盟を阻止する米国内の最大勢力のひとつでもあった。
 他方、中国労働組合との門戸を開こうとする米国の労働組合もあり、2011年にはAFL-CIOを脱退した労働組合による"勝利への変革(チェンジ・トゥ・ウイン)"がウォルマートに労働組合を結成した中国総工会(ACFTU)を訪問したこともあるが、その後、中国政府から制裁措置を受けて関心も薄れた。
 ニュージャージー州ラトガーズ大学のベンズマン教授は「トラムカ訪中は、AFL-CIOが中国総工会を好んでいないとしても、中国労働者との接点の必要性を何とかして模索する必要性を感じたからだろう」と語る。中国労働者の労働条件改善は人道的立場からも望ましいことだが、同時に労務費が高まることで米国への仕事の回帰に繋がる効果も期待しているとみられる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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