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No.191(2013/8/27)
バングラデシュ新労働法の課題

 バングラデシュ政府は、1129人の縫製労働者が犠牲となった今年4月24日の首都ダッカ近郊のラナ・プラザ・ビル縫製工場の崩壊事故で、国際世論から厳しい指弾を受けた。こうした非難に対応し、バングラデシュ政府は労働者保護強化のため、『労働法』を改定した。しかし、労働組合指導者や人権団体は、この改定は不備が多く満足できるものではないとして、労働組合の結成や活動に支障を来すと批判している。
 この『新労働法』では、企業利益の5%を従業員基金に充てることを規定しているが、輸出専用の工場は適用除外となった。これは、バングラデシュのアパレル産業が、中国に継ぐ世界第2位の年間180億ドル(約1兆7542億円)輸出額で、国の経済を支える重要な産業となっているからである。
 また『新労働法』は、労働組合結成時に必要な全従業員の30%の同意署名リストを、労働省が経営者に事前に示すことを禁じている。しかし、事前に経営側にリストが漏れ、労働組合結成指導者が解雇されるなど、組合結成への妨害がしばしば行なわれている。バングラデシュ縫製産業労働連盟 バブル・アクテル委員長は、「経営側による労働省の役人の買収なども考えられ、解雇制限や安全防止策など別途の規定が必要だ」と語っている。
 人権団体であるヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)は、「この『新労働法』により病院の労働組合結成が禁止された。また依然として輸出加工区(EPZ)での労働組合結成が禁止されていることから、かえって労働組合には厳しい状況となった。バングラデシュ政府は、ラナ・プラザ・ビルの惨事から『労働法』の改定により世界の目をそらそうとしている」と語っている。
 今回の改定では、ストライキが著しく社会一般に被害を与える場合および、国家利益に反することがある場合にはストライキを禁止できるなど、ストライキに対する制限が強化された。また、外資や外資との合弁会社では、3年間ストライキが禁止された。
 さらに、バングラデシュの労働組合が他の国から技術、安全衛生、財政などの支援を受ける場合は、事前に政府の許可が必要となった。
 国際労働組合総連合(ITUC)をはじめとする労働組合は、この改定は縫製産業の経営側の国会でのロビー活動の結果で、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準に反し、労働基本権が守られていないとして、欧州連合(EU)や米国は現在延期しているバングラデシュへの貿易優遇措置である一般特恵関税制度を実施しないよう求めている。

*1ドル=97.46円(2013年8月19日現在)

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メルマガNo.188(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/188.html
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