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No.190(2013/8/20)
米国・デトロイト市の破産、公務員労組への打撃

 米国・ミシガン州デトロイト市は2013年7月18日、地方公共団体の債務整理を規定した『連邦破産法』9条の適用を連邦破産裁判所に申請した。
 この破産申請は、自治体の財政破綻としては米国史上過去最大となり、全米数百万人の公務員にとって大きな打撃となる。
 デトロイト市の財政破綻は、汚職の拡がりや資金の乱用、自動車産業の破綻、住民の市外移住による税収の大幅減、連邦政府からの補助金削減などが重なり慢性的な財政難に陥った末の結果である。長期負債は、少なくとも180億ドル(約1兆7542億7900万円)になると見込まれ、そのうち35億ドル(約3411億999万円)が年金の積立不足債務、57億ドル(約5555億2199万円)が2万1000人の退職者健康保険料、残りが市債となっている。
 米国の公務員は、労働協約交渉で賃上げが難しい場合、年金増額や健康保険の充実に切り替えるなどの努力を行ない、それも難しい場合には、人員削減や給与削減なども受け入れてきた。さらに、ウィスコンシン州では『団体交渉権法』により、労使交渉の権利を奪われた。その上シカゴ、シンシナティからサンタフェにいたる数十都市や郡においても、巨額の年金積立金不足問題に直面している。
 しかし、確定貯蓄年金や退職後の健康保険は最後の砦として守り続けてきた。今回の財政破たんにより、この最後の砦が切り崩されることにより、年金基金積み立てが遅れている全国の地方自治体へも今後波及する可能性がある。
 民間企業が経営破たんした場合には『従業員退職所得保障法(エリサ法)』が適用される。この『エリサ法』は、企業年金制度の運営に関する規制を包括的に定めた法律で、従業員の受給権の保護を主な目的としている。そのため、企業が破綻した場合に年金を引き継ぐ年金給付保証公社の創設や、企業年金の運営状況の情報開示義務などが定められている。
 しかし、公務員にはこのような法律が無く、破産で年金を減額されるようになると、労働組合加入の意味が少なくなり、労働組合の衰退が促進される恐れがある。
 こうした事態に直面して、地方自治体労働組合(AFSCME)は「ミシガン州憲法では公務員年金の支払い義務の免除ができない」として、破産申請を認めないよう激しい訴訟闘争を開始した。しかし先週、連邦破産裁判所が破産法処理の障害となる訴訟を禁じると判断したことから、事態が難しくなっている。
 AFSCMEのスティーブン・クレイスバーグ労使交渉局長は「年金は平均で1万9000ドル(約185万円)程度、消防士や警察官でも3万ドル(約292万円)程度である。しかし、デトロイト市が『破産法』を申請することで、長年勤勉に働いて老後を当てにした人たちが生活の糧となる年金を失うことになり、政府と住民が争うようなものだ。年金支払いの不履行が拡がれば、労働組合も雇用主に支払い義務を立法化することを要求することを検討しなければならない」と述べた。
 他方、アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)は連邦政府と議会に対してデトロイト市への支援を即時開始するよう要求すると同時に、ミシガン州が行なう援助に合致する連邦援助を求めた。カーニー報道官は「デトロイト破産の問題は現地の指導者と債権者が解決すべきものである。しかし、景気後退で荒廃した地方に投資機会を設けるなど別の形の援助なら、その用意はある」と述べ、介入に消極的な姿勢を見せている。
 

*1ドル=97.46円(2013年8月19日現在)

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ニューヨーク市のファストフード労働者が最低賃金引き上げを求めてストライキ

 米国・ニューヨーク市のマクドナルド、バーガーキング、ウェンディーズなどのファストフード店の労働者が7月29日、連邦法定最低賃金である7.25ドル(約706円)を、約2倍の15ドル(約1461円)への引き上げと搾取の停止、労働組合の結成を訴えてストライキを行なった。
 ストライキは、ニューヨークで数百人が参加し、さらにミルウォーキー、シカゴ、デトロイト、カンザスシティでも行われ、数千人が参加した。今後も全米各地で同様のストライキが予定されている。
 今回のストライキは、ファストフード労働者の権利向上を支援する「ファストフード・フォワード」、国際サービス従業員労働組合(SEIU)、地元の労働組合などが組織した。「ファストフード・フォワード」は、景気回復後もなかなか上昇しない賃金と、ますます増え続ける低賃金を問題視して、昨年結成された組織である。代表者は「賃金が上がれば、労働者は直ぐに買い物に回す。消費押し上げの経済効果は即刻出る。世界の中でも物価の高いニューヨークで基本的な生活を維持するためには、最低でも15ドルの時給が必要だと」と語った。
 他方、マクドナルドのコメントを発表した全国レストラン協会は「最低賃金を倍増すれば雇用にさまざまな影響を及ぼす。特に未熟練労働者の雇用を減少させることにより10代の雇用に影響する」と述べたが、バーガーキングとウェンディーズは「労働者の権利を尊重する」と述べた。
 労働者の多くは子供などの家族を連れてストライキに参加したが、ある労働者は「1日13時間働く日もあるのに、アパート代も値上げされ、今の賃金では生活できない」と語り、別の労働者は「レストランのメニューにあるものが買えない。ここで自分が何をしているのか分からなくなる」と語る。
 ストライキに賛同して参加したニューヨーク出身の民主党下院議員も「ファストフード業界は、年間2000億ドル(約19兆4919億円)もの売り上げを上げている。しかし、そこで働く多くの労働者は、連邦政府が支給する低所得者層向けの食糧配給対策であるフードスタンプと、貧困者向け医療保険であるメディケイドに頼っている。これは非常にいまいましく理不尽なことである。公正な賃金が支払われるよう努力したい」と語った。

*1ドル=97.46円(2013年8月19日現在)

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