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No.187(2013/7/30)
チリで労働条件改善と税制改革要求をめざしゼネスト突入

 チリは、中南米地域で最も工業化された国の一つで、南米大陸の最南端に位置する国土総延長が約4630キロメートルにも及ぶ南北に細長い国である。1970年代初めより国家主導型産業育成政策から民間主導の開放経済へと政策転換し、1980年代初めの債務危機を克服し、順調に持続的成長を達成させた。さらに、1991~1997年の平均実質経済成長率が8.3%に達するなど、長期にわたる高度成長を実現している。そのため、南米で最初に経済協力開発機構(OECD)に正式加盟が認められた国でもある。しかし、経済発展が労働条件の改善につながらず、2011年の失業率は7%を超え、労働組合は企業の5.5%にしか存在しておらず、労働組合組織率はわずか13.6%となっている。
 チリ最大のナショナルセンターであるチリ中央統一労働組合(CUT)は2013年7月11日、労働条件改善と税制改革を要求してゼネストに突入した。このデモでは、バリケードを敷き、朝の交通妨害、市バスへの放火などで67人が逮捕され、警官6人が負傷した。今回のデモには無償教育に賛同した多くの学生も参加した。CUTは、首都サンティアゴのデモ参加者は15万人であったと発表した。
 今年11月7日に現大統領の任期切れに伴い実施される大統領選挙では、教育と税制改革が大きな争点となっている。2010年に任期満了で退任し、現在は国連の女性機関事務局長を務める中道左派のチリ社会党 ミシェル・バチェレ前大統領が再度立候補しており、法人税の20%から25%への引き上げによる学費の無料化など教育改革と収入の格差是正などの税制改革を進めることを公約している。しかし、対立候補の右派の独立民主連合 ロンゲイラ前経済大臣は、学費の無料化には反対しながらも、税制改革は否定していない。
 チリはもともとストライキの多い国である。2011年には大規模な行進や抗議、ストライキが多発した。チリ中央統一労働組合(CUT)は、ゼネストを呼びかけて労働者や教員、学生を動員し数日間、国が停止状態に陥ったこともある。
 南米で最も治安の良い国と言われるチリで11月の大統領選挙に向けて、より一層ストライキが頻発することが懸念される。

ブラジルで「全国闘争の日」

 ブラジルの労働組合6団体による「全国闘争の日」(Dia Nacional de Luta)の7月11日、サンパウロ市やリオデジャネイロ市など27すべての州、156の都市で数万人の労働者が労働条件改善と公共サービスの改善を要求してストライキを行なった。このストライキは、ブラジルの法律に定められた基準に準拠し認可されたナショナルセンター6組織である、ブラジル中央統一労働組合(CUT)、労働組合の力(FS)、ブラジル一般労働組合(UGT)、ブラジル中央労働者組合(CTB)、労働者新中央組合(NCST)、ブラジル一般中央労働組合(CGTB)の6組織と、これを支援する全国闘争連合(CSP-Conlutas)、全国学生連合(UNE)の2組織によって行なわれた。
 労働組合が街頭闘争を呼びかけるのは、1980年代に軍事政権に対して、「いまこそ権利を」(Derecho ya)を組織して以来のことである。ストライキには、金属、運輸、建設、教職員、公務員などの労働者が参加し、18州、80ヵ所の高速道路を封鎖した。
 今回のストライキは、先月ブラジル全土に広がった全国的大衆デモに続くものである。前回のデモ行動は、汚職や劣悪な公共サービス、重税への怒りが爆発したもので、「サッカーのワールドカップや2016年オリンピックへの経費を、医療や教育、輸送機関の改善に向けろ」などを要求する内容で、このデモに参加しようとした労働組合・政党関係者は体制側とみなされ、デモ隊との間で衝突事件も発生した。今回のデモ行動では、週40時間労働制、賃金と年金の値上げ、下請け労働の中断、健康と教育などの社会福祉費予算の拡大などを叫び、色とりどりのプラカードを掲げて行進した。これにより、多くの学校が休校、病院は応急治療のみに対応し、多くの工場が門を閉めた。
 リオデジャネイロでは、イタグアイ港への交通が封鎖されたほか、約60ヵ所の銀行の支店で窓口が閉鎖され営業できない状況となった。また、市内では2500人がデモ行進し、警官隊と衝突。催涙ガスがまかれ、ゴム銃も発射されたが、負傷者はでなかった。サンパウロでは5000人がデモ行進したが、バスや鉄道などの交通機関は通常通りに運行された。
 FSジョアン・カルロス・ゴンサルベス事務局長は「今回のデモ行動で公共輸送、医療、教育の改善と農業改革、そして週40時間への労働時間短縮(現在月44時間)など、われわれ労働組合の要求をじゅうぶんに訴えることが出来た」と述べた。
 先月のデモに対し、ジルマ・ルセフ大統領は、[1]都市交通機関の改善に230億ドル(約2兆3000億円)の投入[2]油田使用料収入を使っての教育費用の低減[3]貧困地域への数千人の外国人医師の派遣――などの対応策を約束した。また、大統領は閣僚に対し、財政責任とインフレ抑制、政治改革、医療、公共機関、教育の5部門についての取り組みと問題解決を指示した。

1ドル=99.943円(2013年7月23日現在)

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メルマガNo.184 (http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/184.html)

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