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No.182(2013/7/2)
アメリカ自動車産業が大量人員採用をめざす

 米国自動車産業は、住宅バブルの崩壊による2006年のサブプライムローンと、世界的金融危機の発端となった2008年のリーマンショックの影響を受け、米国自動車メーカーのビッグスリーのうち、ゼネラルモータース(GM)とクライスラーが2009年に経営破綻し、自動車産業雇用者数が2005年の110万人をピークに、2010年には67万人と、4割減少した。
 このような状況から米国自動車産業は急速に回復しており、部品企業を含めて大量の人員採用に動いている。
 現在、自動車産業は生産能力の95%が稼動しており、多くの工場は24時間体制の3シフト制を敷く超繁忙状態にあって、長年停止していた設備拡張も再開の予定である。
 民間調査会社のオートデータ社によると、今年5月の米国新車総販売台数は144万4626台で、前年同月比は8.2%増と、24ヵ月連続で前年実績を上回っている。
 米国産業全体としては、先月に17万5000人の雇用増加を記録したが、失業率は依然として7.6%で、健全とされる5~6%台にはいまだ程遠い状況にある。しかし、米国経済回復の鍵と言われている住宅産業は回復傾向で、消費者の信頼度も5年間で最高となり、自動車産業の先行きは明るくなっている。2013年の自動車販売台数は1550万台に達する予測であり、過去6年間で最高となる。
 こうした中で今年1月から5月までに、自動車メーカーおよび部品メーカーは雇用を8000人増やしたが、その速度は加速しており、新たな雇用者は12月までに3万5000人に達すると見られる。この傾向は各社共通であり、クライスラーの3500人、ホンダの500人、GMの4000人、フォードの3600人の増加やレイオフ*された労働者の再雇用2000人。さらに、メルセデスなどを先頭にして、大手部品企業のリア、ボルグワーナー、TRWオートモーティブ、そして中小の部品企業でも大幅な増員をめざしている。
 米国自動車産業は、米国製造業全体の雇用の7%弱を占めており、過去にも他の産業に先駆けて雇用を増やした実績があり、2009年以降に増やした新規雇用は4人に1人に上る。
 自動車販売も2009年は1030万台だったが、今年は1500万台を超え、今後5年間の販売は増加が見込まれ、2017年には1700万台の予測であり、1990年代および2000年代の自動車好景気と肩を並べる。こうした販売予測の背景には、現在の自動車使用平均年数が過去最高の11.2年を数えていることや新規ドライバーの増加予測がある。
 一方、自動車産業における労働条件のうち賃金諸手当については、エンジニアやホワイトカラーは他産業と同額だが、工場労働者は減額された。新規採用者の時給は、永年勤続者のほぼ半額の16ドル(約1564円)となり、年金も確定拠出、退職後の健康保険も無い。しかし16ドル(約1564円)は、他産業の工場労働者の13~14ドル(約1270~1368円)よりは良い水準にあり、こうした経験の少ないエントリーレベル労働者の採用は容易である。しかし、エンジニアや熟練機械工、ソフトウエア開発者、溶接工などの採用は、特にデトロイト地域で応募が少なく、かなり難しい状況にある。
 また組立工場の数も2004年の70工場だったのが現在55工場に減少したが、それでも今年の生産台数は1070万台が見込まれ、2004の生産から85万台しか減少していない。各社とも限られた敷地内での増設や、ラインスピードを上げるなどして、既存設備を出来るだけ有効に活用しようとしている。

*レイオフ
 米国は、先任権に基づいたレイオフ制度を実施している。先任権とは、その企業での勤続年数により決定され、原則先任権の低い労働者(勤続年数の少ない労働者)からレイオフされ、企業業績回復時の再雇用時には、勤続年数の長い労働者の先任権が重視される。
 しかし、レイオフ本来の意味である「将来の優先再雇用条件付き解雇」は、自動車産業などの製造業に限定されており、金融、サービス産業などの産業では、再雇用は想定されず、業績悪化による集団解雇を意味する。

1ドル=97.765円(2013年6月26日現在)

カナダ自動車労組(CAW)が通信・エネルギー・製紙労働組合(CEP)と合併

 19万350人の組合員を擁するカナダ自動車労働組合(CAW)と11万人のカナダ通信・エネルギー・製紙労働組合(CEP)は、正式に合併することを決定した。これにより、30万人組織となり、カナダ最大の民間労働組合となる。
 CAWは、米国系自動車メーカーであるビックスリー(ゼネラルモーターズ、フォードモーター、クライスラー)の労働者と航空機のボンバルディア労働者などが主力であるが、CEPはグローバル・テレビ、ベル・カナダなどの通信、サンコア・エナジーなどのエネルギー企業、森林、紙製品の労働者が中心となっており、新組織結成後は経済の20部門以上を網羅することになる。
 ヨーロッパや日本などのメーデーにあたる9月のレーバーデイ(Labour Day)に開かれる合併大会では、新憲章や新役員などが決定され、名称はUnifor(Union for Canada)となる。
 合併についてCAW ケン・ルエンザ会長は「新組織結成により、各地での影響力を強めると同時に労働者に自信を与えたい。新たな労働者の組織化と並んで、失業者や契約労働者などにも発言の機会を与える組織として活動を広げたい」と述べた。

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No.164(2013/03/04)http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/164.html
No.161(2013/01/28)http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/161.html

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