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No.181(2013/6/27)
貧困層の大多数がオバマケアへの加入不可能に

 米国の健康保険は、日本のように公的医療保険による国民皆保険ではなく、自由診療が基本で、医療費は高額である。そのため、高額な医療費に備え、公的な健康保険または民間の保険会社の健康保険に個人の意思で加入することになる。経済協力開発機構(OECD)加盟国の2010年医療費状況によると、米国の1人当たりの医療費は8233ドル(約80万円)と最も高く、日本の約2.7倍となっている。
 公的医療保険は、[1]65歳以上の高齢者、障害者向けのメディケア制度(2011年時点で約4900万人加入)[2]連邦政府が最高50%を限度に州政府と保険料を分担する貧困層向けのメディケイド制度(2010年時点で約6800万人加入)がある。
 サラリーマンや自営業者などは、各自が民間の保険会社と契約するか、企業が契約している保険会社に加入する。しかし、民間医療保険を契約している企業は、全企業の約6割程度となっている。
 また、保険会社の高額な保険料が払えず、無保険状態になっている人は全人口の約14%に達している。
 こうした中で、国民皆保険をめざすオバマ政権提案の『医療保険制度改革法』(通称オバマケア)が2010年議会で承認され、受給資格の緩和などを定めたメディケイドの新制度が2014年から本格的に施行される。これにより2500万人が新たに保険に加入し、さらに州の負担を増額して制度を拡充する各州では、貧困層の住民570万人が保険に加入できるといわれている。しかし現状は、多くの州が保険負担の増額と制度拡充を拒否しており、貧困層の大多数が健康保険に加入できない状況にある。
 新保険制度は、国民に保険加入を義務付け、保険料の支払いが困難な中・低所得者には補助金を支給することにより、保険加入率を94パーセント程度まで高めて医療格差を是正することを目的としている。多くの州で、貧困レベルとされる個人年収1万1490ドル(約112万円)から4万5960ドル(約449万円)までの人たちが、5000ドル(約48万円)程度の連邦税控除を受け、それを補助にして民間健康保険加入の支払いに当てることが可能となる。しかし、貧困レベル・ライン以下の人は保険料が払えず、健康保険加入への道が無い。
 2010年に『医療保険制度改革法』を通過させた民主党政権は、すべての州で負担が増額され、健康保険加入者が拡大すると期待した。しかし昨年、最高裁判所がメディケイド制度拡充は、州の義務ではなく自由選択によると判決を下したことから、主として共和党優位の25の州を中心に、長期的に経費が増大することを懸念してメディケイド制度拡充への動きが止まった。かつて、1965年にメディケア制度とメディケイド制度が発足した時にも、各州が同調するまでに数年を要したことがある。
 保険を必要とする多くの貧困層住民が暮らしている南部のテキサス州、フロリダ州、カンザス州、アラバマ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ジョージア州などは、保険に加入できない不満が、負担を拒否する州政府ではなく、オバマ政権に向けられる可能性もある。
 新保険制度は2010~2020年にかけて段階的に実施されており、本体部分の実施は2014年1月からとなる。保険に加入しない人や企業には罰金税が課されるが、新保険制度拡充を拒否する州で、健康保険の申請を拒否された貧困層には罰金が課せられない。
 こうした中で、連邦政府は今年夏、新保険法の『医療保険制度改革法』の周知と普及のための全国キャンペーンを展開し、税控除やメディケイド拡充内容、『児童健康保険法』の存在などへの理解を徹底させて、少しでも多くの人の保険加入を促進したい構えである。

1ドル=97.6985(2013年6月21日現在)

労働組合間の紛争でメキシコの大手鉱山が閉鎖、ホンダでも労使紛争

 メキシコは古くから鉱業国で、世界有数の銀の生産国であり、鉛や亜鉛なども生産量で世界の上位を占めている。メキシコの大手鉱山会社であるミネラ・フリスコ社は、保有している8鉱山のうちメキシコ中部と北部のサカテカス州にある金・銀および銅の4鉱山が既存の労働組合と新労働組合との間の勢力争いのために閉鎖されたと発表した。
 新労働組合側は「会社寄りの既存の労働組合に不満を持つ労働者が新労組に加入変更しており、会社はこうした労働者の200人を解雇したことに抗議するストライキだ」と述べた。
 しかし、会社側では解雇の事実は否定しており、「これは2つの労働組合間の争いの結果であり、会社は中間に挟まれて困惑している」と述べた。
 世界の鉱山資源の会社では、労使対立が激しい。資源価格の高騰で企業業績が好転したにもかかわらず、従業員の待遇改善が進まないことが主な原因であり、賃金水準の低い途上国では特に対立が激しくなっている。
 会社寄り、政府寄りの既存の労働組合に対する不満は増えており、メキシコ中西部のハリスコ州にあるメキシコ・ホンダ工場でも新労働組合であるユナイテッド・ホンダ労働組合が台頭し、会社から11人が解雇され、労使紛争が起きている。
 今年2月には、現在の政権与党の制度革命党(PRI)に反旗を翻した教職員労働組合(SNTE)ゴルディジョ委員長が横領着服の容疑で逮捕されるなど、政権との軋轢が増えている。

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メルマガNo.174(2013/05/20) http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/174.html
メルマガNo.168(2013/03/18) http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/168.html

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