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No.179(2013/6/21)
韓国における非正規労働者の現状と課題

 近年、日本において、グローバル競争の激化、サービス経済化が進展する中で、パートタイム・アルバイトや派遣労働者を中心とした非正規労働者の増加が著しい。このような状況は、韓国だけではなく欧米諸国にも見られており、さまざまな問題を生みだしている。
 韓国では1997年の経済危機以降、解雇規制の緩和、派遣法の導入など労働市場の柔軟化政策が実施され、少子化、所得格差の拡大、わが国を上回る非正規労働者の増加などが社会問題となっている。
 国際労働財団(JILAF)は、韓国労使発展財団・国際労働協力センター(KOILAF)からの招きで、5月に若手労働組合リーダーを中心に4人の訪問団を派遣し、韓国労働事情の研修と交流を行なった。

 1.非正規労働者の現状
 韓国の非正規労働者の割合は、2007年3月時点で全雇用労働者数の55.8%をピークに、その後減少してきたが、2012年8月時点でも、47.8%といまだ高い水準にある。また男女の比率は、男性396万人(39.1%)、女性452万人(59.4%)となっている。
 韓国の非正規労働者は、[1]雇用契約について期間制、繰返更新、継続不能の3形態からなる時限的労働者[2]職場で同種業務に従事する通常労働者より所定労働時間の短い時間制労働者[3]派遣や下請けの労働者である非典型労働者の3種類に分類されている。
 正規労働者と非正規労働者の賃金格差に加え、韓国はOECD諸国の中で最も男女賃金格差が大きく、男性正社員の賃金を100とした場合、女性正社員が67.2%、男性の非正規労働者が52.8%、女性の非正規労働者が40.3%となっている。
 派遣労働者の現状は、1998年に派遣労働制度が導入され、2011年には約10万7000人となっており、派遣労働者を雇用する事業所は、約1万3000社を数える。

 2.非正規労働者を取り巻く法律とその課題
 韓国は非正規労働者の権利や利益を守るため2007年、『期間制および短時間労働者保護等に関する法律(非正規労働者関連法)』、『改正派遣勤労働者の保護等に関する法律(派遣法)』、『改正労働委員会法』などを施行した。
 『非正規労働者関連法』は、[1]2年を超える契約労働者は、期限の定めの無い無期雇用契約に転換し、直接雇用することを経営側に義務付ける[2]賃金や労働条件などにおける不合理な差別の禁止[3]差別を受けた非正規職員は、労働委員会に対して是正命令を求めることができる――などの内容となっている。
 しかし、非正規労働者への不適切な対応や不合理的な差別の解消には至っていない。例えば、差別是正を申請できるのは、差別を受けた当事者のみで、その差別が同一または類似する業務を担当している比較可能な正社員と比べ、不合理な差別を受けた場合にのみ申請が可能となる。また、契約期間満了による事実上の解雇である契約解除の脅威を押し切ってまで、差別是正を請求する事が出来るかどうかという疑問が提起されている。そのため2012年6月時点で、差別是正手続き制度を利用したのは、わずか35件に過ぎない。
 法律施行前の有期労働契約の雇止め率は、44.6%(韓国経営者総協会(KEF)調べ)であったが、施行後の2010年6月~2011年7月までに、1年6ヵ月以上、2年未満の有期労働契約で雇止めとなったものは46.15%と、施行前と大きな差はない。
 韓国では、継続雇用への移行には、有期契約労働者の労働条件を見直して、正規職に転換させる「正規職転換」と従来の有期契約労働者の時と同じ労働条件で、契約のみが無期契約となる「継続雇用」とに区別されている。継続雇用の場合、従来の正規職とは異なる賃金・昇進制度が適用される既存の正規職と従来の非正規職との中間形態といえる「準正規職」と呼ばれる分離職群が導入されることもあるが、労働条件の格差は依然として存在したままとなっている。さらに、派遣法上に該当する場合、使用者としての責任を負わなければならいないことから、業務の請負や委託などの契約を結びアウトソーシング化する逃避現象も表れている。

 3.おわりに
 連合は、これまで有期契約労働者の雇用の安定と処遇改善に向けた法整備を求めてきたが、その内容の一部を織り込んだ『改正労働契約法』が2012年4月から施行されるなど一定の前進がみられた。また、韓国でもパク・クネ新政権は、非正規労働者に対する差別是正を重点政策課題のひとつに掲げており、今後の動向が注目される。
 非正規労働者の処遇をめぐっては、日本・韓国ともにさまざまな課題を抱えており、法整備をはじめ労働組合の果たす役割は大きい。同時に、職場においては、関係する労働法の遵守状況をチェックするだけではなく、労使協議や団体交渉を通じて、非正規労働者の処遇改善などに向けた取り組みを積極的に展開することが求められている。

過去の関連報告
韓国労使発展財団との意見交換会を開催(2012/12/18)
http://www.jilaf.or.jp/report_admin/basics/view/289
韓国国際労働協力センター(KOILAF)若手労組活動家招聘プログラム(2012/5/24)
http://www.jilaf.or.jp/report_admin/basics/view/228

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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