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No.171(2013/4/12)
ミャンマーの労働組合事情最前線
解雇された7人の女性労働組合役員と
  FTUMマウン・マウン書記長(奥)
シュエダゴン・パゴダ

 軍事政権下であるものの、民主化を推進しているミャンマーの経済に対しては、内外から成長の期待が高まっていることに加え、民主化プロセスの一つとして『労働組合法』(2011年)が制定されて以来、労働組合設立数は着実に増加している。
 ミャンマーの労働組合は、軍事政権下で弾圧を受け続けてきた。国際労働組合総連合(ITUC)に加盟しているビルマ労働組合連盟(FTUB)*は弾圧され続け、マウン・マウン書記長をはじめとした幹部は亡命を強いられた。
 日本労働組合総連合会(連合)は、構成組織や国際産業別労働組合(GUF)などの協力を得ながらビルマ日本事務所をサポートし、在日ビルマ人のビルマ民主化活動の支援や、ビルマにおける人権や労働組合権を守るための取り組みを展開してきた。
 2011年3月の民主化によって、亡命していた労働組合幹部の一部は帰国しはじめており、民主主義を育成する存在として労働組合に注目が集まっている。
 国際労働組合総連合(ITUC)は2012年12月、ミャンマーにおける労働組合の結成、急速な外資参入下での健全な労使関係および労働条件の向上などを支援することを目的に、ITUC本部直轄のITUCミャンマー事務所を設立した。
 ミャンマー政府に登録を認可された企業別労働組合数は、ITUCミャンマー事務所・中嶋滋所長によると2013年3月11日時点で、429組合、組合員数は4万717人となっており、その内142組合(1万8536人)がミャンマー労働組合連盟(FTUM)に加盟している労働組合である。FTUMマウン・マウン書記長によれば、登録申請後に政府から労働組合登録を拒否されたことは無く、現在登録許可待ちの労働組合数は1200組合に上るという。
 しかし、職場では労働者の権利が侵害され、仲裁委員会が公正に機能していない状況にある。例えば、ラインタヤ工業団地にある台湾系資本のグレイト・フォーエバー衣料工場で2013年1月10日、政府登録された労働組合が労働条件などの改善を求めたことをきっかけに、労働組合役員7人全員が解雇処分となる事態を引き起こした。労働組合役員は全員女性(21~27歳)で、収入は土日出勤し、平日5時間の時間外労働をして、ようやく月8000~9000円となる。(土日出勤や時間外労働の無い場合は、月平均4000~5000円)。就業中私語をすると工場長から体罰を受けてきたため、労働組合を結成した。7人は郡・区仲裁委員会および中央仲裁委員会に訴え、3人の職場復帰は認められたが、その理由は明らかにされていない。
 現在、職場復帰を認められた3人は、残り4人の職場復帰をめざして、他の工場の12の労働組合と共にストライキ中にある。FTUMは政府に対して仲裁委員会の判決に対する抗議文を提出した。
 ミャンマーの『労働組合法』第44条(d)では、「従業員が組合員であること、または組合活動を行なうことを理由に解雇してはならない」と明記されている。しかし、現実はこのように労働者の権利は守られないことも多く、安定した労使関係を築く必要がある。そのためにも[1]労働組合とは何か[2]労働者の権利とは何か――など、基礎的な労働に関する知識を普及させ、定着させていくことが急務となっている。
 マウン・マウン書記長は、「FTUMの当面の課題は、組織化と組合員教育にある。例えば、組織化推進のために、労働組合登録のための申請書の作成方法について細かく指導する一方で、労働組合を設立しても実際に団体交渉できていない労働組合が多く、政・労・使の間で団結権および団体交渉権に関する共同セミナーの開催が望まれている」と述べた。

 *ビルマ労働組合連盟(FTUB)は2013年3月、ビルマ労働組合連盟(FTUM)(M:Myanmar)に名称を変更し、ITUCおよびITUC-APは、FTUMへの名称変更を承諾。

※参考 ミャンマーにおける労働組合数と組合員数
ミャンマー労働組合
 (政府登録済)
企業別労働
 組合数
組合員数 FTUM加盟組合 FTUM組合員数 FTUM加盟率
農業系労働組合 173 7,899 65 9,419 37.6%
製造業系・サービス業系労働組合 256 32,818 77 9,117 30.1%
合計 429 40,717 142 18,536 33.1%
出典:ITUCミャンマー事務所(2013年3月11日)

 (注記)
 FTUM加盟組合とFTUM組合員数は、政府登録証の発給ベースでカウントしている。その一方、ミャンマー労働・雇用・社会保障省が公開している企業別労働組合数と組合員数には、政府登録時点の数が統計上タイムリーに反映されていない。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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