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No.168(2013/3/18)
オバマ大統領の最低賃金引き上げ提案をめぐって

 オバマ大統領は2月12日、今年の施政方針を表明する一般教書演説の中で、政権が取り組む課題の一つとして、最低賃金の引き上げの必要性について触れた。現在の『連邦最低賃金法』の時間当たり7.25ドル(約695円)を9.00ドル(約863円)に引き上げようとする提案だ。
 しかし大統領は、自動車の大型エンジンや駆動系部品を生産するノースカロライナ州にあるリナマー社の自動車部品工場を訪問した時に「フルタイムで働いて、貧困レベルにおかれている労働者があってはならない」と述べて、労働者150万人を念頭に生活できる収入の実現による中間層への支援を強化することに強い意欲を示した。 2012年の2人家族の貧困ラインは1万5130ドル(約145万円)である。
 最低賃金引き上げについては雇用を減少させるとする調査と減少させないとする調査の双方があるが、現状は賃上げの影響は極めて限られた分野にしか及ばないと言う見方が多い。その反面、米国経済の直近の問題は、財政赤字や緊縮財政、移民、健康保険などであり、最低賃金はその後だとする指摘もある。しかし2月20日の世論調査によると71%が最低賃金の引上げ賛成で、うち民主党支持層は87%、共和党支持層でも68%が賛成している。
 米国内における最低賃金の各州の状況は、米国西部諸州の大多数が連邦最低賃金を上回り、同等のレベルは中部と東部の多くの州、南部ではアーカンソー、ジョージア州がそれを下回り、テネシー、ミズーリ、アラバマなど5州では『最低賃金法』が無い。
 一方、カナダ自動車労組(CAW)の経済学者スタンフォード氏は「最低賃金引き上げは、経済面で低所得者の消費を促す効果がある。引き上げが急激でなく穏当なレベルなら雇用への影響はない」と述べている。なお、カナダには連邦最低賃金はなく、州レベルで設定されており、サスカチワン州の9.50ドル(約911円)からヌナブト準州の11ドル(約1055円)となっている。
 また、オーストラリアでは『最低賃金法』が16ドル(約1535円)とかなり高いが、高い経済成長のため失業率は5.4%と低く、その適用を受ける新規労働者はいない。同様のことが石油ブームのカナダ・アルバータ州にも起きており、実際の賃金は最低賃金法の9.75ドル(約935円)よりもかなり高い。経済成長率の高いところでは最低賃金法の意義は薄い。

1ドル=95.97円(2013年3月14日現在)

メキシコで『教育改革法』成立、横領着服の嫌疑で教員労働組合委員長が逮捕

 メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は2月25日、過去70年間で最大規模となる『教育改革法』に署名した。法案成立には、与党の制度革命党(PRI)と主要野党2党が賛成した。
 この『教育改革法』により、教職員の採用と業績評価、昇進が統一基準に基づいて行なわれることになり、学校数や教員数、学生数などが公式に調査、発表される。また、中学校卒業生を80%、高校卒業生を40%へ引上げることをめざし、4万の公立学校の授業時間を増やす。
 こうして、従来150万人の組合員を要する全国教員労働組合(SNTE)の管理運営に任せられてきた教育制度を大幅に連邦政府に移管することとなった。
 NSNTEは過去23年間、エルバ・エステル・ゴルディジョ委員長のもと、教員の採用・解雇は委員長が行ない、学校数や教員数、学生数も不明確で、数千人の教員が架空に給与台帳に登録されていた。麻薬の違法取引を行なうために結成された大規模な犯罪組織であるドラッグ・カルテルのボスも教員登録されたことがあり、教員の職業の売買、世襲制が行なわれてきた。委員長の周辺では汚職や反対分子への弾圧、時には殺人も噂されたが、今まで検察が起訴することはなかった。2006年、SNTEはPRIの主要な支持基盤であり、ゴルディジョ委員長は連邦議会の下院で制度革命党(PRI)において主要な位置を占めていたが、自身で新同盟(NA)を結成したことで、PRIを追放された。
 教育改革は昨年12月、大統領の最初の大仕事であり、キングメーカーとして政界や労働界に多大な権力を振るい、メキシコ最強の女性と言われたゴルディジョ委員長には大きな打撃となった。
 さらにメキシコ共和国検察総局(PGR)は、『教育改革法』成立の翌26日、米国・カリフォルニア州サンディエゴの別荘から帰国した空港で、労働組合資金の横領着服の嫌疑でゴルディジョ委員長を逮捕した。横領金額は1億6000万ドル(約153億円)に上り、スイスやリヒテンシュタインの銀行に振り込まれてマネーロンダリングされ、サンディエゴの別荘や整形手術費用、高価な衣装や宝石などに使われたと言われ、最高30年の懲役刑も考えられる。

1ドル=95.97円(2013年3月14日現在)

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