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No.159(2013/1/8)
インドネシア労働運動の昂揚、2013年最低賃金は4割増

 世界140ヵ国の5000万人の組合員を抱える国際産別組織であるIndustriALL(インダストリオール)は、インドネシア労働組合総連合(KSPI/CITU)、全インドネシア労働組合総連合(KSPSI)、インドネシア福祉労働組合総連合(KSBSI)の3ナショナルセンターで構成されているインドネシア労働組合協議会(MPBI)が今年10月に行なった、50万人を動員したストライキやデモによって、アウトソーシング労働者の問題とリビング・ウェッジである最低賃金の大幅改善を成功させたと賞賛している。
 アウトソーシング問題では10月29日、派遣労働の禁止を求めていた労働組合側の粘り強い要求を政府が受け入れ、11月21日に新法が実現した。その結果、警備保障や食堂、清掃サービス、運輸、鉱山の5分野ではアウトソーシングが規制される。インダストリオール・ユリキ書記長は、インドネシア金属労働組合連合(SPMI)委員長でもあるCITUのサイド・イクバル会長の指導力を評価した。
 インドネシアの1億1800万人の労働者の35%が不安定雇用の労働者と推定され、新しい規制は1600万から2000万人の労働者が正規雇用となり、地位の改善が図られる。また、いかなる契約雇用者でも3年以上の同一職務勤続で正規雇用者へ移行される。
 もう一つの成果は最低賃金の大幅改善である。ジャカルタ、ブカシ、ボゴール、カラワン、バタムなど、インドネシアの工業地域で2013年1月1日より最低賃金が40.2%引き上げられることになった。
 ジャカルタ特別州では44%増の月額220万ルピア(2万068円)に引き上げられ、近年の平均引き上げ率は20~30%になる。インドネシアのインフレ率と成長率は高く、今回の大幅増加率は2016年までに中国、マレーシア、タイに追いつこうとする労働組合の方針に沿うものだ。インドネシアはGDPにおいて世界16番目だが、賃金水準では69番目だ。
 次なる目標は2014年1月から健康保険を実現し、2015年までに年金保護を政府に実行させることだ。
 現地の報道では、多くの労働者はタイ並みになった賃金増で「食べるのに精一杯だったが、買い物が楽しみ」と率直に喜んでいる。また、デパート関係者は4割増の最低賃金引き上げで消費が喚起されると歓迎している。
 インドネシアの最低賃金は州、地区、市レベルで各地域の物価動向を調査の上、行政当局の政令で定められ、最低賃金を決めた政府への評価も高いが、経営者団体のAPINDをはじめ中小企業の経営者の反発は強い。
 APINDは12月の記者会見で「ジャカルタ特別州での最低賃金220万ルピアが来年実施されたら少なくとも1万人の労働者が職を失う。特にカーペット企業100社は工場閉鎖となり、靴メーカーも同様である。輸出産業であるカーペットや靴メーカーは中国との競争力が失われ、インドやベトナムに工場を移転することになる」と発言した。
 ジャカルタ特別州の最低賃金引き上げを基準に各州、市など地方の最低賃金も相次いで確定しはじめている。しかし12月5日、45%増の204万ルピア(1万8609円)となるバタムの小企業130社が最低賃金政令の実施延期を州裁判所に訴える準備をしており、リアウ州の商工会議所やAPINDは知事に圧力をかけている。
 また、数千の中小企業は2年間の財務帳簿を提出し、新最低賃金の免除を申請しようとしている。その場合、公認会計士の監査が入り、経営上困難性が認められることが条件となる。政府もカーペットや繊維、製靴などの労働集約的産業に働く300万人の雇用を考え、新最低賃金の適用延長を検討している。
 しかし中にはメダン市のように州の最低賃金を上回る146万ルピア(1万3318円)に対し、労働組合もAPINDも合理的な水準と賛成している地域も出てきている。
 
出所:インダストリオールニュースおよび現地紙
 
*1ルピア=0.0091円(2013年1月7日現在)

エジプト 新憲法制定に向けての動向

 2010~2011年にかけて大規模な反政府(民主化要求)デモや抗議活動を主として中東地域を中心としたアラブ地域で発生したアラブの春は、2010年12月18日に始まったチュニジアのジャスミン革命から、アラブ世界に波及した。
 エジプトは、チュニジアのジャスミン革命に触発され2011年1月25日、「1月25日革命」と呼ばれる大規模な反政府デモが発生。ホスニー・ムバラク大統領は2月11日、エジプト軍最高評議会に国家権力を委譲し、30年におよぶ独裁政権に終止符が打たれた。
 エジプト労働組合連合(ETUF)は、唯一のナショナルセンターとして法的に独占的な地位を得ており、すべての労働組合はETUFへの加盟を義務付けられていた。またETUFは、国民民主党(NDP)の最大支持母体としてムバラク政権下では大きな影響力を行使してきた。しかし、ムバラク政権の崩壊や民主化への流れが活発化する中で、ETUFの影響力は急速に低下するとともに、従来弾圧されてきた独立系労働組合が労働者の権利を守るための活動を積極的に展開している。
 こうした状況のなか、ムハンマド・モルシ大統領は今年11月22日、大統領の権限を強化する大統領令を発布し、11月30日には起草委員会が採択した旧憲法の規定を温存し、男女平等などがうたわれていない内容の新憲法草案を承認した。
 ITUCは、新憲法の草案は労働者や労働組合の活動を制限するため、政府に大きな権限を与えており、法に従わない場合、労働組合を解散させる権限を持つこととなる。さらに労働組合役員の年齢制限(60歳未満)や女性の権利、女性差別の禁止、児童労働、強制労働などに関する項目が欠落していると指摘した。
 ITUC シャラン・バロウ書記長は「エジプトの労働者は、ムバラク独裁政権との戦いで常に先頭に立ち、新しい政権を誕生させた。しかし、モルシ大統領が国際基準である『結社の自由』を容認しなければ、エジプトを国際社会の責任あるメンバーとして容認することはできない。われわれは、エジプトが自由で民主的な労働運動の発展を認める社会体制の確立を強く望んできた。しかし、今回提案された憲法の内容は、労働者のめざすゴールから明らかに遠ざかっている。モルシ大統領に対して基本的人権や労働組合権を尊重する憲法に修正することを強く要請する」と述べた。
 エジプト・カイロでは、連日大統領に抗議するデモ隊と大統領を支持するイスラム勢力が衝突して、多くの死傷者を出した。これ以上の混乱を回避するため、大統領は12月8日に大統領令を撤回し、新憲法の賛否を問う国民投票を12月15日と22日の2回に分けて実施。63.8%の賛成を得て新憲法が承認された。
 しかし、この結果について野党側は投票結果を受け入れないという立場を表明しており、不安定な政情が継続される可能性があり、今後も動向が注目される。
 
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