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No.151(2012/11/16)
ネパール連邦民主共和国の民主化への変遷(6)
現在、ネパールでは10年以上にわたる内戦状態が終わり、ネパール王国からネパール連邦民主共和国へと生まれ変わったが、政治や経済、教育のいずれを見ても不安定な状況が続いている。
 このような状況の中で国際労働財団(JILAF)では、独立ネパール労働組合会議(NTUC-I)と協同で、(1)職場の環境改善セミナー(2)労使関係セミナー(3)児童労働撲滅のための学校プロジェクト(4)インフォーマル労働者への草の根支援事業(SGRA)――などを展開。ネパールの地域や社会に貢献するプロジェクトを行なってきた。
 今号では現地に駐在しているJILAF・和田正夫フィールドマネージャーが、ネパール情勢について報告する。
和田フィールドマネージャーからの報告

  マオ党(ネパール共産党・毛沢東主義派)を中心とする現政府は今年5月27日、ネパール連邦共和国になって最初の憲法を2年以内に制定するという目標を果たせず、4度目の制定期限の任期満了を迎えた。政府は期限内の実現は困難と考え、制憲議会任期の再延長案を提出したが最高裁が許可せず、4年間の制憲議会を解散した。そのため、マオ党を中心とした現政府は、現在も臨時政府として存続中である。
 ネパールでは、2006年まで政府軍と共産党毛沢東主義派(マオイスト)の間で内戦が続き、新憲法の制定は不安定な情勢を改善するためにも重要な課題となっている。
 
 バブラム・バッタライ首相が5月27日に発表した、今年11月の再度の制憲議会選挙も臨時憲法の法的な改正と選挙実施のための予算や準備期間不足、すべての野党との合意不足などを理由に白紙に戻り、現在も何の進展も見られない。
 これに対しコングレス党(ネパール会議派)や共産党UML(ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義)などの主要野党は、これまで何度も締結した約束合意事項が現政府によって曖昧なまま実施されず、話し合いを持つたびに異なる意見や方針が変わることが問題であると主張。そのため現政府が、総辞職し政権を放棄することが先決であり、与野党合意の新政府が樹立され、新憲法制定議会選挙などの現状打開を図るべきとの方針を打ち出した。
 しかし現政府は取り戻した政権を死守することに固執し、政府寿命の延命と次期選挙の票取りを目的に国民に対して国家予算のばら撒き作戦に出ている。
 マオ党のキラン・バイディア元副党首などのマオ党からの分裂により、反マオ党政治色を鮮明に打ち出し、現政府の批判勢力の立場として現政府の即時解散などを要求し、プラャンダ党首、バブラム・バタライ首相に対し全面的な反政府行動を立ち上げつつある。
 この臨時政府のこれまでの成果をあえて挙げるならば、元マオイスト兵の政府軍への統合雇用業務が少し進展しており、すでに数千人の解雇と徴用のために一般軍人と幹部職への面接、試験業務が終了し最終段階を迎えつつあることである。
 他の元マオイスト兵は、社会復帰資金としてそれぞれ数十万円を支払うことで決着していた。しかしこの国の莫大な予算がマオ党の資金として流れ、幹部職などの懐に入ったことが元マオイスト兵などからの証言により外部マスコミに流れている。
 また元マオイスト兵が1万9000人であることや、毎月の日当資金についても疑問が出ており、その疑惑解明に調査の手が入りつつある。しかし現政府がその当事者であり、この調査が正当に実施されることは難しい。
 これらのマオイストによるさまざまな贈収賄偽悪もマスコミを賑わせているが、これまでの11年余りの内戦による殺人や反逆などの罪で、民主的な裁判が開かれる時代を迎えるには、まだまだ年月がかかると思われる。逆に、マオイスト兵がこの国の悲惨な内戦の歴史に、英雄的な立場でこの国の教科書に描かかれことになる可能性もある。

国際労働財団(JILAF)
  ネパール・フィールドマネージャー 和田正夫

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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