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No.140(2012/8/27)
タイの最低賃金の動向について

 タイの最低賃金は、県別および職能別に定められており、2012年4月1日から県別最低賃金が大幅に引き上げられた。バンコク都と首都圏、プーケット県の7都県では、一律1日300バーツ(約755円)に、その他の県は一律40%引き上げられた。政府は2013年に最低賃金の引き上げを再度行ない、全国一律300バーツとする方針を打ち出している。
 昨年8月に発足したタイの現政権は、選挙公約である最低賃金を全国一律で300バーツへの引き上げを今年1月から実施する方針であった。しかし、この全国一斉の最低賃金引き上げに関して、産業界が強く反発したことや昨年秋の大洪水で多数の工場が被災したことなどを考慮し、引き上げ時期を4月に延期。さらに、全国一律の引き上げではなく、段階的に地域ごとに引き上げていくこととした。
 また、政府は産業界の不満を緩和するため、法人税率を30%から今年23%へ引き下げ、2013年にはさらに20%へ引き下げる方針としている。
 タイの賃金は、労働保護法第5条により、「通常の労働時間*において働いた労働の対価」と定義されている。しかし、交通費、住宅手当などの諸手当が、最低賃金として含まれるか法的に定義されていない。労働判例によると、毎月定額で支払われる交通費や食費は、労働の対価として賃金と考えられているが、実費で清算されるものについては賃金に含まれない、としている。
 この大幅な最低賃金の引き上げをめぐり一部で労働争議が発生している。今回の最低賃金改定にあたり、就業時間や休日、諸手当などを含めた労働条件の変更については言及していないため、労働条件の引き下げなども一部で発生している。そのため、「法定最低賃金の支払いを受けていない」「最低賃金の引き上げに伴い、労働条件を変更させられた」「福利厚生・諸手当と賃金の合計額が最低賃金とみなされた」など、さまざまなケースが発生しており、これらの諸問題に対して、政府は十分な対応ができていない。
 こうした問題の背景には、タイの賃金が法的に整備されていないことも一因としてあげられる。
 今後、政府や労働省および関連機関において、最低賃金支払いが遵守されるような監督機関、システムの構築が必要となっていくと思われる。

(JILAFタイ事務所・関口輝比古フィールドマネージャー提供)
  1バーツ=2.5193円(2012年8月21日現在)

タイの賃金(労働保護法第5条)
 「賃金」とは、雇用契約に基づき使用者と労働者の間で合意され、通常の労働時間*において労働をした時間、日、週、月、その他の期間について支払われるか、または、労働日における通常の労働時間に労働者が生産した成果に基づき計算されて支払われる労働の対価をいう。

*通常の労働時間(労働保護法第23条)
 使用者は、省令で定める業種ごとの労働時間を超えない範囲で労働者の1日の始業時刻および終業時刻を定めて、労働者の通常の労働時間とし、これを労働者に対して公示しなければならない。 
 ただし、1日の労働時間は8時間を超えず、かつ、1週間の労働時間の合計が48時間を超えてはならない。

2012年 最低賃金(日給)
は日系企業進出主要県
2012年 2011年
300 221 プーケット
300 215 バンコク、ナコンパトム、ノンタブリ、パトムタニ、サムットプラカーン、サムットサーコン
273 196 チョンブリ
269 193 チャチンサオ、サラブリ
265 190 アユタヤ
264 189 ラヨン
259 186 パンガー
255 183 ナコンラチャシマ、ブラジンブリ
254 182 ロッブリ
252 181 カンチャナブリ
251 180 チェンマイ、ラチャブリ
246 176 ソンクラー、シンブリ
241 173 チュムポン、パタルング、サツーン、サケオ
236 169 トラート、ビンガール、ランプーン、ノンカーイ
234 168 ガンペンペット、ウタイタニ
232 166 チェンライ、ナコンサワン、ブリラム、ペチャブン、ヤソトン、ローイエット、サコンナコン
230 165 チャヤプーム、ムクダハン、ラムパン、スコタイ、ノンブアラムプーン
225 161 ナーン
222 159 ヤラー

主要な県のみ掲載

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