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No.134(2012/7/20)
ロサンゼルス教職員労働組合(UTLA)が賃下げ案を了承

 2007年の住宅バブル崩壊に端を発した世界金融危機により、カリフォルニア州は2009年に財政破たん。銀行の融資も受けられず、州債も買い手がなく、業者への支払いや州職員の賃金支給も遅れる事態となった。このような状況の中で、ロサンゼルス学区では2009年、公立学校の教職員約8000人の解雇計画を提案。これに対して、教員、看護師、図書館職員、精神科のソーシャル・ワーカーなどの学校職員が所属するロサンゼルス教職員労働組合(UTLA)は大規模なデモを決行。UTLAとスクールバスや他の学校職員を組織しているチームスターズ・ローカル1572やカリフォルニア学校職員労働組合などに加盟する教育労働者は、2300人の教師の解雇撤回、医療手当の削減も阻止するという大きな成果を勝ち取った。
 しかしその後もカリフォルニア州は、医療・福祉・教育予算などを大幅に削減するため、公務員や公教育で働く労働者の大量解雇や賃下げ、学校閉鎖、チャータースクール(公設民間運営校)への移行など、さまざまな政策を進めている。このような厳しい財政悪化を背景に、教育労働者などへの過酷な要求は続いており、ロサンゼルス学区は、8月から始まる2012~2013年度の教育予算削減に基づき、昨年末に授業日数の短縮や教職員4000人のリストラなどを提案。UTLAは、この提案を撤回させる代わりに、[1]賃金率の変更はしない[2]年間授業日数を180日から5日間減らす[3]無給の授業日を10日間増やす――などの1年間の労働協約を承認した。
 ただし、この協約は今年11月に予定される、教育目的のための4分の1%消費増税および高額所得増税のカリフォルニア州知事提案が住民投票で承認されることが前提であり、否決されれば状況は厳しくなる。
 昨年まではプレ・スクール(幼稚園)、小学校、中学校、成人学校の一般授業日数が削減されたが、今回はプレ・スクールと成人学校が対象となる。ただし無給の授業日はすべての組合員に適用され、全員で痛みを分かち合う形となる。
 最悪のシナリオは、プレ・スクールと成人学校の廃止、13高校の閉鎖、小学校の美術と音楽の授業の停止、教室定員の25%増員に伴う生徒数の増加による教育の質の低下――などが想定されている。
 なお米国の学区は、公立の幼稚園から高等学校までの公立学校を束ねる特殊な法人としての公立教育の行政体で、学校運営を監督する教育委員会がある。通常は、市・郡と同等とみなされ、課税などの権利も持ち、多くが独立し独自の判断を下す。学区と労働組合による今回の協約も教育委員会の承認を必要とする。
 教育予算の削減や学校民営化などがますます激化する中で、UTLAは学区全体の労働者を組織して闘うための体制構築に向けて活動を展開している。

アルゼンチン労働総同盟(CGT)が大統領に抗議のゼネストを展開

 アルゼンチン労働総同盟(CGT)は、クリスティーナ・フェルナンデス大統領に抗議する「1日ゼネスト」を6月27日、運輸、医療、繊維、食品などの労働者が結集する中、五月広場で決行した。フェルナンデス大統領の再選を支援してきたCGTが大規模ゼネストを起こすのは初めてのこと。
 これは昨年10月、再選時にCGTが求めた国会議員候補者リストを大統領が拒否したことが原因で関係が悪化したもの。CGT ヒューゴ・モヤノ事務局長も、兼任していた正義党*の役職やブエノス・アイレス州知事職を辞任する事態に発展している。
 また、トラック運転手が6月25日、賃上げを要求し石油精製所への交通を妨害。これに対して大統領は、憲兵隊を動員し運転手を排除させたことでさらに対立が深まったとされる。ゼネストにより主要輸出品である穀物輸送や、国内の食品輸送は大半がトラックによるもので、経済に大きな混乱を与えた。
 アルゼンチン経済は、世界的不況の影響を受けて困難な状況にあり、CGTは25%のインフレ率に見合う所得税減税を要求している。しかし、2008年のフェルナンデス政権発足以降、政府は労働組合に対して労使交渉での賃金上昇率の抑制や年金増額法案の否決など、労働者側に負担を求めながら状況の改善を模索している。このように、大統領は労働組合には自制を求めながら、輸入制限や資本規制の強化、ドル購入の制限などの政策を実施。さらにスペインの石油・ガスの複合多国籍企業であるレプソル傘下のアルゼンチン最大の石油会社YPF(Yacimientos Petroliferos Fiscalesの国有化も押し進めている。 
 しかし、これらの政策により海外からの信用低下や投資の減少という状況が起き、経済運営に抗議する一般市民が大統領宮殿前で鍋釜を打ち鳴らし、自動車のクラクションを鳴らす状況が続いている。この抗議活動はスペイン語で鍋を意味するカセロラッソ(Carcerolazo)と呼ばれ、2001年のアルゼンチン経済危機の時には、大規模カセロラッソ・デモで3人の大統領が相次いで交代に追い込まれた。
 なお、3日間続いたトラック運転手による石油精製所への交通妨害は、25.5%の賃上げで妥結し収束した。
 

*正義党(通称ペロン党)=正義党を立ちあげたファン・ドミンゴ・ペロンは1946年、大統領就任以降、労働組合の保護や賃上げ、女性参政権の実現、外資系企業の国営化などの政策を推し進め、労働者層から圧倒的な支持を受けた。CGTは、ペロン党を支える最大勢力として、現在まで密接な関係にあった。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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