バックナンバー

No.131(2012/7/2)
ウィスコンシン州・知事リコール選挙

 ウィスコンシン州のウォーカー知事(共和党)に対するリコール選挙は6月5日、250万の投票を記録し、民主党のバレット候補(ミルウォーキー市長)46%、ウォーカー知事が53%の票を獲得し、共和党の勝利に終わった。アメリカの知事リコール選挙は3回目となるが、現職の勝利は初めてのことだ。
 共和党陣営には全米の企業や富裕層から4600万ドルもの巨額資金が集まり、大々的な広報宣伝活動を繰り広げた。これにより、1600万ドルの資金力で動員による個別訪問活動を展開していた民主党と労働組合を大きく上回る結果となった。
 投票所の出口調査では、知事リコールに反対した有権者でも経済政策や中間所得層政策の点で共和党ロムニー候補よりも期待できるとし、17%がオバマ支持と回答した。
 しかし、このリコール選挙は、[1]経済安定に必要な中間所得層維持のために公務員を擁護する[2]増加する政府債務と増税の原因が公務員であり、医療や年金も応分の負担をさせる――の二つに分かれていた。
 ウィスコンシン州は1911年、米国で初めて「労働者災害補償制度」を制定した州(連邦1916年)で、1959年には全米で初めて州公務員との労働協約を締結する権利を認め、賃金、年金、休暇などを交渉する権限を付与し、労働問題に進歩的な州である。民間労働組合の組織率は一桁台と低下しているが、公務員労働組合は37%を維持し、民主党が強い地域でもある。
 しかし、ウォーカー知事が公務員の「団体交渉権」を制限させる州法、『団体交渉権制限法』を成立させてからは凋落に転じた。特に組合費の強制徴収禁止条項により、地方自治体労働組合(AFSCME)では組合員が過去1年間に6万3000人から2万9000人に、アメリカ教職員労組(AFT)は1万7000人から1万1000人へと激減した。
 このような結果が、公務員年金基金への滞納額が830億ドルに達したイリノイ州や、市予算の20%に達したサンディエゴ市をはじめとした州や市にどのように影響するのか注目されている。
 全米各州での公務員年金と医療保険への滞納額は1兆ドル以上といわれ、イリノイ州では公務員の賃金凍結、年金、医療保険への受益者負担増額の動きが強まっており、ニューヨーク州では民主党のクオモ知事でさえ、組合問題に取り組み始めた。しかし、州知事の多くは労使の対立を避けるため、話し合いによる解決努力を続けている。
 その一方で、ミシガン、ミネソタ、ミズーリ、ニューハンプシャー州など、2010年の中間選挙で共和党が優位となった議会では、企業の競争力強化のため、労働組合の力を制限する必要があるとして、民間労働組合を対象に組合費納入や組合加入を従業員の自由意志とする『労働の権利法』などの立法化を急ぐ気配にある。
 進歩的な政治家は公共政策を維持できる道は行政をできるだけ効率化することだと考えており、公務員の労働組合改革の必要性を主張している。

サンディエゴ市とサンノゼ市で公務員年金削減

 全米に広がる州公務員労働組合の労働条件や権利問題をめぐる闘いが激化している。
 一般的に公務員の給与や年金、医療保険は民間労働者に比べて優遇されており、州の財政を圧迫し、財政破たんに追い込まれる州もある。この問題を解決すべく、公務員給与や医療保険、年金の水準低下や自己負担額の増額を実施しようとする地方自治体に公務員労働組合が反発している。
 すでに財政破たんした自治体は、ロードアイランド州セントラルフォールズ市、ペンシルバニア州ハリスバーグ市、アラバマ州ジェファーソン郡で、今後も増加することが予想されている。
 カリフォルニア州の主要都市であるサンディエゴ市とサンノゼ市では、公務員の年金を削減することを目的とした住民投票が6月5日に実施され、それぞれ65%、70%の賛成を得て可決された。今回の提案は、労働協約の制約を受けない新規採用者を対象に労働条件などの変更を行なってきた過去事例とは違い、協約の適用を受けている現職公務員の協約内容を変更するという点で、従来とは大きな転換を示すものであり、赤字に苦しむ全国の市町村に影響をおよぼす可能性がある。現在、公務員の年金制度は、定年を迎える多くの中高年者への年金支払いが膨大な金額となっており、このままでは、現職の賃金より退職者への年金支払いが多くなるという状態だ。
 これに対しサンノゼ市・警察官労働組合は、「年金削減は、その保護をうたうカリフォルニア州の法律に違反する」として最高裁に提訴。しかし、市当局は[1]年金保険料の個人負担を16%引き上げ、現行年金を維持する[2]年金支給開始年齢を引き上げ、削減幅を少なくする[3]新規採用者には確定拠出制度を適用する――などの代替案を盛り込んだ対案を裁判所に提出した。
 サンディエゴ市、サンノゼ市ともに多額の財政赤字に苦しんでおり、債権投資家たちに不安が広がり、市公債の発行が中止。警官のレイオフ、消防署の日替わり閉鎖、公共施設である新設図書館4ヵ所の閉鎖などを余儀なくされている。
 住民投票の結果は、「30年の勤続で現職給与の90%を保障する警察官・消防士年金」などに対する住民の不満が向けられた形となり、サンノゼ市・リード市長(民主党)も「市の業務を軌道に乗せるには公務員の年金削減はやむを得ない措置である。ロードアイランド州・セントラルフォールズ市の財政破たんによる年金の支払い停止という事態は避けたい」と述べた。
 シカゴ市・エマニュエル市長(民主党)は、退職者年金の自動的物価調整の停止を求め、さらに米国最大の年金基金未納状態にあるイリノイ州では、クイン知事(民主党)が年金削減を主張する共和党優位の議会と懸命の折衝を続けている。
 また、セントラルフォールズ市に続いて財政破たんの危機にある、ロードアイランド州プロビデンス市では年金の物価調整停止が市長から提案され、組合員の批准投票にかけられている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.