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No.130(2012/6/28)
改善が進まないフォックスコン社の労働現場

 アップル社は、iPhoneやiPadの生産を委託している台湾の世界最大の電子機器受託生産企業(EMS)である、フォックスコンの中国工場における労働者への非人道的扱いについて国際的な非難を受け、本年1月に米国の公正労働協会(FLA)に加盟し、2~3月にかけてFLAの特別監査を受けた。
 3月29日に発表されたFLAの報告書では、長時間労働や未払い賃金、安全面での違法行為が行なわれているとし、来年7月までに、[1]労働時間の週40時間化[2]時間外労働は中国法定時間の月36時間以内とする[3]時間外労働を減らし、生産を維持するために不足する人員の補充[4]給与外諸手当の拡充――など、賃金や労働条件に関する是正勧告を通達。これを受けてアップル社とフォックスコン社は勧告された項目を改善することに同意した。
 香港のNGOであるSACOM(Students & Scholars Against Corporate Misbehavior)は、この報告書はフォックスコン経営陣が、労働者に対する非人間的な扱いや厳しい懲戒について見過ごしていると指摘。フォロー調査としてフォクスコン社の鄭州工場や深センの工場でアップル製品の生産に従事している170人の労働者に対しインタビューを実施。その結果は下記のとおり依然として多くの労働基本権違反が行なわれていることが明らかになった。

インタビュー結果

  1. 会社の許可なくジャーナリストや研究者との会話が禁止され、言論の自由がない。
  2. 会社が管理する労働組合に強制加入させられ、団結権が認められていない。
  3. FLAの調査は透明性に欠けている。労働者はFLAの報告者を見ることができず、改善措置への行動も起こせない。
  4. 基本給(下記参照)は増加したが、時間外労働が減ったことにより総体的に賃金が減少した。
  5. より厳しい生産目標の達成が要求され、その結果、不払い時間外労働が発生している。
  6. 全体的には過長時間外労働は減少したが、顧客のニーズがあれば時間外労働は増加する。新型iPadの生産を担当する労働者は、中国で最も重要な正月休みにも働かされ、さらに4月にはFLAと締結した月36時間以内を超える80時間の時間外労働を強制された。
  7. 現場監督者は労働者への懲罰として書かせた反省文を職場で発表させ、さらにトイレ掃除までさせており、人権侵害はいまだに継続している。
  8. 深セン工場では少なくとも728件の労働災害が記録されているが、労働者に充分な安全教育を実施していない。そのため、労働者は依然として使用している化学物質について説明を受けておらず、不安全な職場が存続している。
  9. 毎日、肉体的にも精神的にも消耗している。これまでの労働慣行を見直し、不払い時間外労働を無くしてほしい。

フォクスコン社現場労働者の賃金明細

  鄭州工場 深セン工場
基本給 1,550元(244ドル) 1,800元(284ドル)
査定後の基本給* 1,800元(284ドル) 2,200ドル(347ドル)
社員寮費控除 150元(24ドル) 110元(17ドル)
社会保険料控除 124元(20ドル) 144元(23ドル)
住宅準備基金控除 77.5元(12ドル) 90元(14ドル)
社員食堂昼食代控除 300元(47ドル) 300元(47ドル)
*入社9ヵ月で査定され、合格すれば基本給が上昇する

 SACOMは、フォックスコン社の不当な労働慣行を是正するよう、アップル製品を使っている全世界の消費者に対して、アップル社に圧力をかけるように要請している。
 
 米国での報道によると、アップル社のティム・クックCEOはロス近郊で開らかれたイベントで、iPhoneやiPadなど、「カリフォルニアで設計、中国で生産」とされているが「カリフォルニアで設計、米国で製造もあり得る」と発表。
 中国における労働条件劣悪という批判も浴びていることから、かたくなに拒否してきた米国生産に踏みきる可能性を示唆した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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