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No.127(2012/6/7)
労働側出身のILO事務局長が誕生

 国際労働機関(ILO)の第101回総会が5月30~6月15日、スイス・ジュネーブで開かれており、ILO加盟184ヵ国の政府、労働者、使用者からなる代表団が国際労働基準の策定を含め、労働問題に対する論議が行なわれている。
 この総会に先立ち、政府側正理事(28人)、労働側正理事(14人)、使用者側正理事(14人)で構成されるILO理事会が5月28日に開かれ、事務局長選挙が行なわれた。
 今回の事務局長選挙には、政府側代表8人、労働側代表1人、9人もの立候補者が乱立する極めて厳しい選挙戦であったが、イギリス労働組合会議(TUC)出身のガイ・ライダー氏が56票中30票を獲得し、事務局長に選出された。 
 労働側からの事務局長の誕生は、1919年のILO発足以来、はじめてのことであり、労働組合の団結と各国政府への働きかけが当選へとつながった。
 今回のガイ・ライダー氏のILO事務局長選出について、ITUC シャラン・バロウ書記長は、「ILOは、労働の世界で抱えるさまざまな課題に取り組む上で最も適任な人物を選んだ。世界はディーセントワークを大々的に作り出していく必要があり、彼の選出により雇用と労働者の権利が世界経済の中心となるだろう」と期待を表明。
 また、日本労働組合総連合会(連合)も事務局長談話で、「グローバル化が進展する中で、喫緊の課題は、公正で持続可能な社会を実現し、質の高い雇用を伴う新たな経済社会モデルへの転換が不可欠であり、ILOが果たすべき役割は極めて大きい。国際労働運動の重責を担った経験に裏打ちされ、国際労働基準の設定と適用監視を重視するガイ・ライダー氏は、必ずや世界の労働者の期待に応えてくれるものと確信する」と大きな期待を寄せている。
 なお、新たに事務局長に選出されたガイ・ライダー氏は、本年10月1日、13年間事務局長を務めたファン・ソマビア氏に代わり、第10代事務局長に就任する。

ガイ・ライダー 略歴
 1956年、イギリス・リバプール生まれ。ケンブリッジ大学卒業後、TUC国際部に入局。1985年に国際産業別組織(GUF)である国際商業事務技術専門職員労連(FIET、現UNI)工業部会書記後、ICFTUジュネーブ事務所長やILO理事会労働者側グループ書記、ILO労働者活動局長、ILO事務局長室長などを歴任。2002年よりITUCの前身組織である国際自由労働組合連盟(ICFTU)書記長を務め、2006年、国際労働組合総連盟(ITUC)結成大会において初代書記長に就任。2010年、ILO事務局長補着任。ILOの最も重要な任務である国際労働基準の適用を監視する責任者となる。
労働組合にとって世界で最も危険な国(コロンビア)

 世界的な経済危機によって始まった雇用危機は、現在もあらゆる地域で続いている。失業や貧困が増加し、治安が悪化し続けている中で、多くの国の労働組合は政府や使用者から厳しい弾圧を受けている。特に南米大陸は、多くの労働者が権利を著しく軽視され、時には権利が法律で保護されているにも関わらず暴力が振るわれることもある。
 コロンビアでは、軍と民兵組織が暴動鎮圧戦略を続け、ゲリラに対し市民のすべての行動が真偽を問わず抑圧されており、このような事態を背景に、労働組合活動家は危険分子として誤った認識をされている。
 コロンビア労働者中央連合(CUT)によると、コロンビアでは1986年以降、平均すると男女とも3日に1人の割合で、2800人以上の労働組合リーダーが殺害され、多くの活動家が脅迫や殺人未遂にあっている。
 2010年、労働者の権利を守ろうとして殺害された人は、世界各国で90人、コロンビアだけで45人(うち16人が労働組合リーダー)であった。国際労働組合総連合(ITUC)ではコロンビアを労働組合にとって最も危険な国としており、昨年の30人に続き今年も7人の労働組合指導者が殺害されている。
 銃撃されながら、難を逃れたのはカリ市公社労働組合(Union Sindical de las Empresas Municipales de Cali =SINTRAEMICALI)のアドルフ・デビア副会長。弟が殺害され、近くにいた4歳の少女と警官1人が重傷を負った。
 先月、カリ市公社労働組合の幹部2人にブラック・メールが送付され、殺害が予告された。差出人はブラック・イーグルと呼ばれる極右の民兵組織で、幹部本人の葬式の招待状が同封されていた。襲撃の動機は判明しておらず捜査中であるが、カリ市公社労働組合アルバロ・ベラスコ会長は、「襲撃されたデビア副会長やその他の組合指導者たちは死の脅迫を受けており、政府に対してさらなる警護体制を求めている」と語った。
 このことは10人の米国議員がオバマ大統領に送った書簡に記述された。米国は、コロンビアの労働法の改善や労働組合員への暴力の防止をFTA批准の条件としてきたが、コロンビアが約束した労働組合幹部の保護がなおざりな事を問題視している。
 現在、カリ市公社労働組合は、不当解雇だとする51人の労働者のITUCの支援を受けて、復職要求闘争を展開している。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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