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No.116(2012/4/9)
ILO事務局長選挙にガイ・ライダーITUC前書記長が立候補
ILOの取り組みを推進する指導者が必要
  国際労働組合総連合(ITUC)は、ILO事務局長選挙でガイ・ライダー候補の推薦を正式に決定し、ミヒャエル・ゾンマー会長、シャラン・バロウ書記長の連名で1月21日、同氏の当選に向けて各加盟組織が全力で取り組みを展開するよう要請文を送付した。
 ITUCのシャラン・バロウ書記長は、「世界は1930年代以来の深刻な雇用危機に直面しており、ILOが国際レベルで果たす役割は極めて重要だ。ILOは今、豊富な経験を持つガイ・ライダーを必要としている」と強調した。
 ITUCからの要請を受けた国際産業別労働組合組織(GUF)のひとつで、サービス産業を代表する、UNIグローバルユニオンのフィリップ・ジェニングス書記長は、ガイ・ライダー氏の支持を加盟組合に呼びかけ、「未曾有の金融危機という異常事態に果敢に取り組む指導者がわれわれには必要だ。この状況下でILOのディーセントジョブと社会正義の取り組みを推進できるのは、ガイ・ライダーだけである」と述べている。
 
連合の支援活動
 連合・古賀会長も1月25日、野田首相に対し、日本政府としてガイ・ライダー氏を支持するよう要請し、「新しいILO事務局長は、労働をめぐる諸問題に精通し、ILOにおける豊富な経験を基盤に、社会対話を重視しながら任務を着実に遂行することが求められる。連合は、ガイ・ライダー氏こそがこの任に最も相応しい人物であると確信している」と支持を訴えた。
 また、ガイ・ライダー氏が、日本の政府および使用者側のILO理事と直接会談できる機会を2月22日に設定し、野田首相、玄葉外務大臣、加藤外務大臣政務官、津田厚生労働大臣政務官、使用者側ILO理事――と会談。同氏は所信表明を行なうとともに、5月28日の選挙における支持を訴えた。
 
ILOの果たすべき役割
 経済的・社会的危機にあってILOは、その加盟国に対して政策支援や技術援助を中心に重要な役割を担っている。ILOでの経験をはじめ労働基準、査察制度、労働市場諸機関、社会的対話や雇用政策――など、その役割についてガイ・ライダーほど広範囲な知識と経験をもつ候補者は見当たらない。また使用者とのパートナーシップのあり方を十分認識しており、良好な相互信頼関係を今日まで築いてきた。グローバル化により、グローバルビジネス環境も変貌しており、ILOにも変革が必要だ。ILO事務局長の前に立ちはだかる、さまざまな課題に積極的に取り組みG20を動かし、雇用と不平等問題が是正されるよう取り組みを進めなければならない。
 現在、ILO事務局次長を務めるガイ・ライダーは労働者活動局長も経験している。また、2002年に国際自由労連(ICFTU)書記長に選出され、2006年には国際的な労働運動を統合し、ITUC結成に導いた。1980年代にUNI創立のメンバーであった国際商業事務技術専門職員労連(FIET)で専門職・技術職員担当として活躍した経験もある。
 
ILO事務局長選挙について
 ILO駐日事務所からは事務局長選挙について、[1]ILO事務局長の任期は5年間[2]理事会による選挙で選出され、投票日は5月28日[3]理事会は政府側正理事28人、労働側正理事14人、使用者側正理事14人、合計56人で構成[4]立候補者はガイ・ライダーを含め9人――であると発表された。
 今回の選挙は、現職のフアン・ソマビアILO事務局長が一身上の都合から2014年3月までの任期を切り上げ、本年9月30日で退任する意向を表明したことを受けて行なわれる。
 ガイ・ライダー氏の立候補届けは、ILO理事会労働側の理事である、ミヒャエル・ゾンマーとルーク・コートベックの両氏によって提出された。ゾンマー氏は、ドイツ労働総同盟(DGB)会長でITUC会長も務めている。コートベック氏はITUC会長代行である。
 なお、ILO理事会による各候補者へのヒアリングが3月30~31日に行なわれ、出席していた労働者側ILO理事からは、ガイ・ライダー氏へのヒアリングは、非常に好評であったことが報告されている。

・リノベーションによる団地の再生

鈴木  不二一
■鈴木不二一 プロフィール
  1946年生まれ。1971年東京都立大学人文学部卒。情報通信産業労働組合連合会(情報労連)に入局。賃金調査部で主に賃金調査と賃金政策を担当。連合総研研究員、同副所長。東京大学社会科学研究所客員助教授を務め、2009年より同志社大学・ITECアシスタントディレクター。『社内キャリアと職業生活』『ホワイトカラーのキャリアと労働組合』『現代日本のコーポレート・ガバナンス』著書多数。
リノベーションによる団地の再生
 昭和30年代の東京を描く「ALWAYS 三丁目の夕日」の第3作目は、1月21日に公開され、1ヵ月間で220万人を動員した。第3作目が描くのは東京オリンピックが開かれた昭和39年、すなわち30年代最後の年である。残念ながら30年代レトロ・ムービーとしてはこれが締めくくりとなるのだろう。
 この映画の舞台になっている高度経済成長が始まった日本では、急速に増加する都市人口の住宅需要を満たすため、全国各地で公共集合住宅、いわゆる「団地」の造成が急ピッチで進められた。 
 その後、約半世紀の星霜を経て、この頃に建てられた団地は、建物の老朽化や施設メンテナンスの困難などの技術的問題に加えて、空き家の急増による治安問題や、独居高齢世帯の増加による「家族の孤立化」など、深刻な社会問題をも抱えるに至る。放置すればスラム化する危険性もあるとさえ言われている。
 第二次大戦後、都市部郊外に急拡大した大規模住宅地の抱える社会問題はヨーロッパでも同様にあり、各国で地域再生のための政策が展開されている。いずれにも共通するのは、人口流出や産業構造転換で衰退化した地域の再活性化プランの一環として、社会政策と地域再生政策を一体的に取り組むというアプローチがとられていることだ。
 ドイツでは、2000年前後に「シュリンキング・ポリシー」(創造的縮合政策)は、人口が減少し経済の回復が望めない地区で、明確な撤退ビジョンを共有し、戦略的かつ整然・着実な縮退を行なうことを打ち出している。人口減少局面にある日本にとって示唆するところが大きい。
 また、フランスやイギリスでは、「郊外住宅団地」という従来の開発主義的志向から脱却し、街路の復活による地区の再構成と街らしさの演出、雇用、医療、福祉、防犯――など社会政策と一体化した政策展開がなされていることも大きな参考となる。
 日本でも、団地再生の試みは各地で展開中である。とりわけ注目すべきは、これまでの「建替」という手法から既設住宅の「リノベーション」(既存の建物に大規模な改修工事を行ない、用途や機能を変更して性能を向上させ、価値を高める)による再生へと次第に力点が移行しつつあることだ。こうした取り組みは、連合の主張する政策とも合致する。
 都市景観保全のための規制が厳しいヨーロッパでは、ゼロベースでの建築が困難なことから、リノベーションは技術面のみならず、社会的制度としても発達を遂げてきた。日本にもようやく、リノベーションによる既設住宅の再生と再利用という転機が訪れようとしている。
 ユニークな企画展示やアーバン・デザインを手がけ高い評価を得るデザイナーの原研哉氏によれば、リノベーションの分野で意外な頑張りをみせているのが、「独立行政法人・都市再生機構」(旧住宅公団)であるという。
 単に住戸の内部を改装するのではなく、建物そのものの階層を減らし、ルーフバルコニーを確保、建物を水平・垂直に合体して広い間取りを実現、あるいはエレベーター設置、共有施設を付加するなど、工法的にも高度な技法が駆使されている。それだけにとどまらず、コミュニティ施設の配置や景観への配慮など、コミュニティとしての「団地」の再生という点でも、都市再生機構のリノベーションは充実しているとのこと。
 さらに、原氏は「首都圏だけでも1000近くの団地、戸数にして40万戸を超える住宅供給を実現し、それを継続管理している日本の都市再生機構のノウハウは、まさに希有な先行事例であり、その経験は増加する都市人口への住宅供給を焦眉の課題とするアジア諸国に輸出可能な知的財産でもある」と指摘している。
 連合の掲げる地域活性化の課題は、意外な所にも、その糸口が見いだせるようだ。リノベーションによる都市再生は、「働くことを軸とする安心社会の構築」による産業活性化、日本再生とも深く関連する。今後、重視すべき産業分野のひとつであろう。
 昭和30年代に少年時代を送った者として、リノベーションによる団地の再生が「ALWAYS三丁目の夕日」の輝きを蘇らせ、そのノウハウがアジア諸国の社会的発展にも貢献できるとしたら、こんなにうれしいことはない。
発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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