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No.115(2012/4/2)
ILO「世界の雇用情勢と2012年度版」と国連「世界ユース白書」から
若者を取り巻く状況
 「一部の若者の失業は、全体の繁栄にとって危険である」――国際労働機関(ILO)・シリナチス雇用総局長は、世界で7500万人を超える若年失業者の現状を、「ILO憲章」の一文になぞらえ、こう表現した。
 昨年、ロンドンからイギリス全土へと広がった若者の暴動、ニューヨークのウォール街でも、人生設計を描けない若者たちが街を占拠し、"We are the 99%"と主張する。開発途上国では、従来からあった児童労働や強制労働が、グローバル化の進展によって加速。いくらかの改善は見られるものの、若者の未来がさほど明るいと言えない状況が続いている。
 
 
「一部の若者の失業」が持つ影響
 ILOが本年1月24日に発表した「世界の雇用情勢2012年度版」によると、世界で、若者の失業者は7500万人、ワーキング・プアと呼ばれる層は1億5000万人を超える。
 ILOのシリナチス雇用総局長は、この現状について、「一部の若者の失業は、全体の繁栄にとって危険である」と、『ILO憲章』の「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」になぞらえて言う。そして、数百万人が働いても勉強もしていない状態は、社会にとって人的資源の大きな浪費であるだけでなく、社会の結束を危機にさらすと指摘する。
 また、ILO・ソマビア事務局長は、2月22日の「世界社会正義の日」に公表したメッセージで、「尊厳と正義の探求」を訴えたが、この中でも、若者の失業について言及。今後10年間に、若者を含む6億人分の雇用を確保するとともに、不平等の縮小と仕事の尊厳の再評価、さらには対話・協力・合意形成を根源とする『ILO憲章』の世界的な民衆運動への影響が必要と述べている。
 同時に、ソマビア事務局長は、「社会正義の新たな時代の中で、すべての人に、ディーセント・ワークを提供できるような、人類の尊厳を基礎とした、社会と成長のビジョン構築と実現」が必要とも言っている。
 『世界の雇用情勢2012年度版』は、「リーマン・ショック、ユーロ危機などの中で、もっとも打撃を受けたのが、若者であり、社会・経済の現状をふまえれば、若者の雇用が短期的展望として、実質的な改善が見られるとは思われない」と悲観的なコメントを残しており、ソマビア事務局長が訴える『社会と成長のビジョン』の早急な実現が求められている。
 
「アラブの春」の背景にも高い失業率
 国連が2月7日に発表した「世界ユース白書」も、「世界の雇用情勢2012年度版」と同じように、若者の雇用についての懸念を明らかにしている。
 この中では、景気が低迷すると、若者ほど早く解雇されることや、就職しても能力開発の機会がほとんどないため、失業の可能性が高くなると指摘。将来の生計や所得の見通しも損なわれていると分析する。
 また、「世界ユース白書」は、昨年来の「アラブの春」の背景に、中東・北アフリカで、若者の失業率が異常に高いことを上げている。2010年現在、世界全体の若者の失業率12.6%(成人4.8%)に対し、中東は25.5%、北アフリカは23.8%。さらに、この地域では、若年女性の失業率は、中東で39.4%、北アフリカで34.1%だと言う。
 
国際労働運動の役割
 ILO、国連ともに、世界の若者を取り巻く現状をふまえた対応策について、適切な教育・訓練の提供、若者に対する財政的・社会的投資の拡大を早急に実現しなければならないと提言。これらの対策については、政府、企業だけでなく、労働組合の関与の必要性が述べられており、ITUCをはじめ、国際産業別労働組合組織(GUF)が、各地域・国での政策づくりに積極的に加わることが求められている。
 日本でも、若者の失業率(2012年1月現在)は、全体が4.5%であるのに対し、15~24歳は8.5%、25~34歳は5.6%と高い。
 連合は、「政策・制度 要求と実現」で、日本で、不安定化や非正規化が進む若者の雇用対策として、ジョブカードの導入や能力開発機会の提供などを打ち出している。
 若者が、自由に人生設計を描ける社会を作るため、これらの政策を世界の仲間と共有することは、日本としての国際労働運動に対する貢献の一つと言える。
発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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