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No.100(2012/1/24)
韓国の労働事情
 国際労働財団(JILAF)は、韓国労使発展財団・国際労働協力センター(KOILAF)との間で、定期交流を実施している。今回は、高木理事長をはじめとする日本側が訪韓し、日韓の労働事情について意見交換。この中で、韓国の政治情勢とFKTUの対応も報告された。
はじめに
 
KOILAFとの定期交流
韓国労使発展財団・国際労働協力センター(KOILAF)は、「自由で民主的な労使関係の定着と労働分野における国内外の連帯強化」を目的とし、韓国労働組合総連盟(FKTU)と韓国経営者総協会(KEF)が国からの財政支援を受け、三者構成で設立された組織だ。
 JILAFと、KOILAFは、日韓の労働情勢を共有するため、2004年から定期交流を開始。隔年で相互の代表団を受け入れるなどの交流を図っている。今回は高木理事長をはじめとするJILAF代表団が2011年11月21~25日、韓国を訪問した。意見交換等で知り得た、韓国の労働事情について報告したい。
 
韓国のナショナルセンター
 
FKTUとKCTUによる協働闘争
FKTU訪問では、韓国の労働運動の現状について意見交換をした。
 韓国では、FKTUを先頭に労働運動が展開されてきたが、1995年、韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)が結成され、2大ナショナルセンター体制となる。両組織は運動方針に違いはあるが、1997年の『労働法』の改悪、近年では「労働組合専従者賃金の支給禁止」「複数労組制の解禁」で共闘し、反対運動を展開することも、しばしばあった。
 このFKTUとKCTUの2大ナショナルセンター体制が続いてきたが、2011年11月1日、第3のナショナルセンターとなる「国民労働組合総連盟」が結成され、その翌日、「雇用労働部」に登録申請が行なわれた。韓国では「産業別労働組合や全国レベルの労働組合が2組織あれば、ナショナルセンターとしての登録要件を満たす」とされている。
 国民労働組合総連盟は、ソウル地下鉄労組が中心となり結成された組織だが、その構成は、運輸、都市鉄道、教員・教育、地方公社――等で、組合員は約3万人。今後、韓国労働界にどのような形で定着するかは未知数だ。
 
FKTUの政治活動
FKTUのイ・ヨンドク委員長との意見交換
 FKTUは、2007年の第17代大統領選挙の直前にイ・ミョンバク大統領候補の支持を表明し、政策協定を締結。総選挙でも4人の組織内議員を当選させた。
 しかし、イ・ミョンバク政権は、『労働組合および労働関係調整法』を強引に推し進め、「労働組合専従者賃金の支給禁止」「複数労組制の解禁」を実施。これにより、FKTUとハンナラ党の関係は悪化した。
 2011年1月25日に行なわれたFKTU第23代委員長選挙では、ハンナラ党との政策協定を批判していた金融労組出身のイ・ヨンドク元委員長が選挙に勝利。その後の定期大会で、この政策協定は破棄された。
 その後、イ・ヨンドク委員長は、2012年の総選挙と大統領選挙に勝利するため、野党連合に参加することを表明。しかし、傘下の産業別労働組合や地方組織がハンナラ党との関係を維持していたこともあり、FKTU内部でも調整が難航していた。
 この状況を打開するため、イ・ヨンドク委員長は、12月8日、臨時代議員大会を開き、賛成多数で野党連合への参加を決議。FKTUは、民主党、市民統合党とともに、最大野党となる「民主統合党」を結成、『労働組合および労働関係調整法』の再改定の要求を確認した。
 その後、民主統合党は1月15日、党大会を開き、初代代表にノ・ムヒョン前政権時代に女性初の首相を務めた、ハン・ミョンスク氏が選出された。韓国では既成政党への有権者の不信は根強く、大統領選挙の前哨戦とも言われた、ソウル市長選挙では、市民派の野党系無所属候補が当選している。このような状況から民主党合党は、代表選挙において、党員だけではなく、一般の有権者も投票できる形式として、約64万人が登録し、代表選挙が行なわれた。
 ハン・ミョンスク代表は党大会後の1月17日、FKTUを訪問し、イ・ヨンドク委員長との意見交換を行なった。この中で、イ・ヨンドク委員長は、「民主統合党は2012年、韓国社会を変えるための重要な一年となる。FKTUは労働者の社会・経済問題を解決する組織として、労働委員会の強化・発展と労働局の新設が重要である」と述べた。
 これに対して、ハン・ミョンスク代表は「国民のための政党を作ることが重要である。これまでの民主党では労働問題の解決には限界があったが、FKTUが加わったことにより、労働の価値を向上させる政策を取れるようになる」と強調した。
 民主統合党は、本年に行なわれる、総選挙と大統領選挙の勝利に向けて、ハンナラ党およびイ・ミョンバク政権への対決姿勢を強めている。
 
日本には存在しない組織
 
韓国の社会的企業育成法を学ぶ
最後に、日本には同様の組織がない「韓国社会的企業振興院」を紹介したい。
 韓国では、1997年の通貨危機後、賃金水準の低い非正規労働者が増加し、雇用不安や格差拡大が社会問題となる。このような状況から、政府は雇用政策を活発化させるため、雇用労働部で2003年から社会的な雇用創出事業をスタートさせ、2007年には、社会サービスや雇用の担い手を育てるため、『社会的企業育成法』を施行した。
 その後、2010年に法律が改正され、「韓国内の社会的企業を支援し、社会サービスの拡充に努め、国民生活を向上させる」ことを目的に「韓国社会的企業振興院」が2011年2月に設立された。現在、労働側からFKTUの政策局長を務めていたキム・ジョンガク氏が役員を務めている。
 振興院は、[1]地域社会への貢献[2]弱者と高齢者の雇用[3]環境問題[4]文化財保護――等に取り組んでいる企業578社を社会的企業と認証している。認証された企業は人件費の補助、低利の貸付、法人税・所得税の50%免除、経営コンサルティング支援、社会保険料の負担――等のさまざまな支援を受けることができる。
 北朝鮮からの脱北者を雇用している企業や低所得者を優遇するレストラン、環境に配慮したリサイクルショップ等が社会的企業として認証されているそうだ。
 
おわりに
 世界がグローバル化へと進む中、その国の現状や変化を把握することは極めて重要なことである。JILAFはKOILAFとの定期交流を貴重な経験・情報共有の場と位置づけており、今後も継続し、情報発信していく。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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