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No.94(2011/11/20)
米国オハイオ州での公務員団体交渉権の制限法
 米国・オハイオ州では公務員労組の『団体交渉権制限法』が共和党優位の議会で可決。この採決に反対した労働組合および民主党支持者が反対運動を展開した結果、11月8日、信任を問う住民投票が行なわれた。
 この住民投票は多くの住民の関心を集め、高い投票率を記録することとなった。共和党優勢の議会で制定した『団体交渉権制限法』であるにもかかわらず、反対61%、賛成39%の大差で否決される結果となった。
 共和党は2010年11月の中間選挙で米国議会だけでなく、各州でも大きな勝利を収めたが、逼迫する州財政を理由に政府支出に大きな割合を占める公務員給与を削減する動きを見せていた。これはウィスコンシン、オハイオ、ペンシルバニア、ミシガン、インディアナ、ミズーリ、フロリダ――等の州で顕著となった。特にウィスコンシンとオハイオの2州では、2011年当初に『団体交渉権制限法』が制定されていいる。
 この法律は公務員の「団体交渉権」を賃金に限定して認め、「強制仲裁裁定」はなく、労使合意が成立しない場合は、政府や教育委員会が決定権を持つ。また年金や健康保険への労働者負担の増額や組合費の強制徴収はできないことも規定された。
 オハイオ州の場合、財政赤字が80億ドルとなっており、公務員年金と健康保険基金への滞納が1660億ドルという厳しい財政状況が続いている。また警官や消防士が退職時、未取得の病気休暇が数百日分も換金できるなど、公務員に対して行き過ぎた優遇制度となっていることから、『団体交渉権制限法』を支持する住民は多い。住民からは「公務員は良い生活をしながら、賃金諸手当や雇用保障、退職金を要求している。これを支払うのは住民だ」と反発している。
 またこの制限法の公正さに疑問を持つ住民も多く、「行き過ぎだ」との批判も強く、「この法律で公共事業の安全性が危険にさらされる」との指摘もある。ある退職教員は「問題は1%に集中する富の配分だ。強い経済には強い中産階級の存在が必要。批判より中産階級をどのように増やしていくかを検討する方が重要だ」と強調した。
 その中で、各労働組合や民主党支持者である35万人の公務員を中心に強力な反対運動を展開、130万人の署名を集め、今回の住民投票を実現させ勝利した。
 オハイオ州の共和党は「税金を軽減し企業を誘致するにはこの法律が必要である」と述べ、『団体交渉権制限法』を修正し、再提出の動きを見せているため予断を許さない。しかしこの結果は過去数十年の労働運動の中でも大きな勝利と言える。労働組合側はこの勝利の勢いで、取り組みを始めたウィスコンシン州での「共和党知事リコール運動」を成功させ、他の州での反対運動にこの勢いで望む決意だ。
カナダ・ケベック州の建築労組に対する非難
 カナダ・東部に位置するケベック州の建築業界で、[1]ワイルド・キャット・ストライキ[2]労働大臣への脅迫[3]職場での殴打事件[4]労働者への仕事の配分をめぐる汚職や共同謀議――等が問題視されている。
 この脅迫事件は、自由党政府がケベック州で認められている建築労組による労働者への仕事の配分に規制を設けようとする中、リサ・レイト労働大臣に対し、「足を折るぞ」との脅迫電話があった事件である。「Bill33」と呼ばれる規正法案は主要な建築について、仕事の配分を独占的に決める労働組合の権限を政府と使用者による委員会に移管しようとするもので、ケベック労働組合連合会(QFL)と州国際労組評議会に加盟する各建築労組が影響を受ける。
 それと同時に政府の道路建設契約をめぐり、汚職の常習化や暴力団の介入も指摘されている。さらに業界では女性に対する暴力や差別も多くあり、政府委員会で証言予定の女性が労働組合幹部に腹部を建築用ブーツで蹴られて、証言を取りやめたとの訴えも出されている。
韓国に第三のナショナルセンター結成
韓国の労働運動は韓国労働組合総連盟(FKTU)と韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)が拮抗し、活発な運動が展開されてきたが、11月1日、第三のナショナルセンター、国民労働組合総連盟が結成され翌日、雇用・労働部(行政区分では省に相当)に登録申請がされた。雇用・労働部では、「産業別労働組合や全国レベルの労働組合が2組織あれば、ナショナルセンターとしての登録用件は満たされる」としている。
 韓国第二のナショナルセンターとしてKCTUが1995年に結成されてから16年間、FKTUとともに二大ナショナルセンターとして活動。しかし『労働組合および労働関係調整法』の改正が論議されるとFKTUとKCTUは共闘し反対運動を展開。この法改正の最大の争点は、[1]労働組合専従者賃金の支給禁止(2010年7月より実施)[2]複数労組制の解禁(2011年7月実施)――である。
 専従者賃金については単一労働組合や産業別労働組合、ナショナルセンターまでの専従者の賃金は「労使協定」により伝統的に出身企業から支給されてきた。それを禁止することに対して韓国の労働運動では、「専従者賃金の支払いについては個々の労使関係の問題であり、法律が介入することではない」と主張してきた。
 また、複数労組の解禁については、一企業一組合と法律で規制されてきたが、同一企業内における組合の乱立と経営側の介入の可能性を警戒して両ナショナルセンターとも反対の姿勢を示していた。しかし複数労組制が2011年7月に解禁されると、わずか2ヵ月足らずで、489の新たな組合が登録された。新規登録組合の大多数は、FKTUかKCTUに加盟していた組合だとされているが、72の組合が既存のナショナルセンター加盟を選択した。新ナショナルセンター結成の理由として結成大会の議長を務めたジャン・ヨース氏は「われわれの調査では一般大衆の80%が今の労働運動のやり方を認めていない。労働組合自身が変革しない限り一般大衆の信頼を取り戻すことはできない」と述べた。
 新ナショナルセンターには運輸、都市鉄道、教員・教育、環境、地域公社等の約70組織・7産別・組合員3万人が結集した。現在、韓国の組織労働者164万人のうち、[1]FKTU・74万人(45.1%)[2]KCTU・59万人(36.0%)――であり既存のナショナルセンターに比肩できる勢力ではないが、「韓国労働運動に変革をもたらす」との意見もある。新規登録組合の今後の動向が注目されている。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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