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No.83(2011/8/10)
韓国の文化と個別業績給制度
イギリス労働組合会議(TUC)は7月27日、金融関係をはじめ、ざまざまな産業を組織している傘下のUniteとUNIグローバルユニオンと連携し、韓国の金融労働者支援のための街頭デモをイギリス・ロンドンで行なった。
 これはイギリスを本拠地とし、世界70ヵ国・1700店舗を展開する、スタンダードチャータード銀行が、2005年に「韓国第一銀行」を買収し、スタンダードチャータード(SC)ファースト・コリア・バンクを設立。新たな賃金制度導入を巡り労使が対立したことによるもの。この労使紛争で約3000人の組合員がストライキに突入。現在に至っても解決のめどが立たず、韓国の金融業界で最長となる1ヵ月にもおよぶ労使紛争となっている。
 この労使紛争の発端は、昨年の団体交渉で組合側が提出した2%の賃上げ要求に対して会社側が、「業績給制度(Performance -related Pay System=PRP)」の実施を提案したことによる。会社側は「この提案を無条件で受け入れない限り賃上げ交渉は行なわない」と主張。一方、組合側は、「個別業績給制度は韓国の慣行・文化になじまない」と拒否し、労使双方の主張が真っ向から対立している。また、SCファースト・バンクは、高い利益をあげているにもかかわらず、従業員の賃金を過去4年間凍結し、会社側の幹部には高額のボーナスを支給している。
 組合側は座り込みやハンガーストライキなど闘争を展開してきたが、5月に全面ストライキに突入。その後、事態打開のため、SCファースト・バンク労組は、上部団体である韓国金融業労組(KFIU)と代表団を結成し、ロンドン本店での直接交渉を求めたが拒否された上、本店からは韓国部門のマネージャーに対して、「組合に妥協するな」という指示が出されたと言われる。
 しかし代表団はTUCとともに、「韓国の金融労働者支援集会」を本店前で開き、Uniteの金融担当である、デビット・フレミング氏は、「英国内でも銀行員は、金融商品の販売で強い精神的圧力を受けており、賃金や労働条件も悪化している。残念だが、これは世界的な傾向となっている。この状況を阻止するため、このような銀行とはイギリスはもちろんのこと、世界中で闘争を展開していく」と連帯行動の継続を強調。
 TUCのブレンダン・バーバー書記長は、「これは単なる海外の問題ではない。多国籍企業の身勝手な行動を阻止する運動である。グローバルな労働運動は多国籍企業に対しては、世界のどこであろうとも団結して活動する」と述べた。
 UNIとKFIU、SCファースト・バンク労組の三者は2011年7月、「経済協力開発機構(OECD)・多国籍企業ガイドライン」に違反しているとして、韓国とイギリスのOECDナショナル・コンタクトポイントに提訴した。「OECD・多国籍企業ガイドライン」は、“雇用および労使関係”のなかで、「受け入れ国の類似の使用者が遵守している雇用および労使関係の基準より低くない基準を遵守する」と規定している。現在のところ、韓国の銀行業界では「個別業績給制度」を導入している銀行はないと言われている。
南アフリカ全国金属労働組合の賃金闘争
南アフリカにおいて、トヨタ自動車や日産自動車、ブリヂストンの労働者を組織し、主要な産業別労働組合である、南アフリカ全国金属労働組合(NUMSA)の金属・エンジニア部門は会社側との賃金交渉で、組合側は13%の月例賃金改善の要求に対して、会社側は7%と回答したことから妥結に至らず、2週間のストライキに突入。その後、労使交渉を重ねた結果、経営側と3年間の賃金協定を締結した。
 この賃金交渉での妥結内容は、[1]1年目の最低等級労働者が10%アップ[2]熟練工が8%アップ[3]2年目以降はインフレ率が8%以下の水準であれば、最低等級労働者が8%、熟練工7%のアップ[4]インフレ率が8%を超える場合は、インフレ率プラス2%のアップ――等の妥結内容となっている。
 また、組合側は「賃金協定期間を2年間で提案したが受け入れられなかったことや最低等級労働者のアップ率2桁をめざし、この国の格差圧縮を狙ったが実現できなかったことに不満は残る。しかし賃金以外で課題となっている臨時工の処遇については、労働者斡旋業者を通じて採用をしないことや臨時工の採用期間を4ヵ月とし、その後は期限の定めのない契約とすることなどで成果を上げることができた」と強調した。
 トヨタ自動車や日産が所属する自動車部門でも2010年8月20日、NUMSAと自動車経営者連盟が3年間の協定を締結しており、[1]1年目の賃金改定は10%増[2]2年目以降は9%か、インフレ率のどちらか高い率を採用する[3]労働者斡旋業者の使用禁止――などの項目を締結。この時の労使交渉も8日間のストライキに突入した。この国の賃金闘争にはストライキが慣行となっている。NUMSAは賃金協定の期間を3年から1年とすることを目標と掲げており、今後も厳しい交渉が予想される。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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