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No.73(2011/4/28)
ネパール連邦民主共和国の民主化への変遷(3)
 現在、ネパールでは10年以上にわたる内戦状態が終わり、ネパール王国からネパール連邦民主共和国へと生まれ変わったが、政治や経済、教育のいずれを見ても不安定な状況が続いている。
 このような状況から国際労働財団(JILAF)では、独立ネパール労働組合会議(NTUC-I)と協同で、(1)職場の環境改善セミナー(2)労使関係セミナー(3)児童労働撲滅のための学校プロジェクト――などを展開。ネパールの地域や社会に貢献するプロジェクトを行っている。
 今号では現地に駐在しているJILAF・和田正夫フィールドマネージャーが、ネパール情勢について報告する。
和田フィールドマネージャーからの報告
 ネパールではマオ党(ネパール共産党・毛沢東主義派)とUML(ネパール共産党・マルクスレーニン主義派)の密約協議により、ジャラ・ナート・カナルが新首相に選出されたが、現在も新政府の組閣発表は行われていない。しかし両党の省庁争奪戦の結果、副首相と教育省、大蔵省、防衛省はUML所属議員を選出。その一方でマオ党は、副首相、情報通信省、法務省、観光空港省、保険人口省、土地改革省、建設省、労働運輸省、青年スポーツ省――などを獲得し、今回は8省庁(UML3人、マオ党5人)での大臣が任命された。
 両党の懸案事項であった内務省人事については、しばらくの間、首相が兼務することでようやく合意。内務省人事が決定できなかった理由は、両党の党首が選挙直前に合意した7項目の同意書の中で、「新政府の運営は上部運営組織を設立し、内務省や防衛省などの重要省庁の人事は両党が分担する」と定めてられているが、両党の駆け引きが長期化し、このような暫定的な決着となった。
 すでに両党は国会における議決権の過半数を獲得しているが、新政府参加をほのめかしていたタライ・マデシ民主党(党首ウペンドラ・ヤダフ) はUMLとマオ党と、[1]タライ地域の人口比にあわせた選挙議席の設置[2]タライ地域民族の各政府組織への参加を進める[3]イスラム系の民族委員会設置[4]タライ民族の国民証書の入手円滑化――の4項目の同意書に合意し、新政府に参加することを決定。また外務省や農業省、エネルギー省、地方開発省――などの閣僚ポストを新政府に要求したといわれている。
 またUMLとマオ党は、「第2党であるコングレス党(ネパール会議派)との連立なくして、新憲法の制憲はあり得ない」としており、連立参加を呼びかけている。しかし、コングレス党は「マオ党とUMLが合意した7項目の同意書を破棄しなければ、連立を組むことはない」と述べている。他の20党以上の野党も同様の主張を繰り返している。
 マオ党はUMLとの連立政権発足時に合意した、「マオ党の軍人を軍から退職させ、社会復帰については敬意を表した形で行う。マオ党軍とは別の防衛軍を組織し、入隊させる」との事項では、ネパール共産党主義青年連盟(YCL)を解体せず、新たな人民奉仕団を結成したことを発表。しかしマオ党軍の解体については、以前から各野党は「YCLはすぐに解体すべきである」との批判が出されていたこともあり、政権運営の新たな課題となっている。
 さらに元建設大臣である、チランジビ・ワグレ(コングレス党)が、贈収賄事件での最高裁判決で、罰金4,300万ルピー・1年6ヵ月の刑罰が確定。チランジビ・ワグレは10年前の王制時代に4年7ヵ月間、各省庁で7度も大臣を務めて来た人物である。その他の大臣・閣僚級の贈収賄事件11件も裁判が行われている。
 またネパールの制憲議会は、新憲法制定を2010年5月28日に公布することをめざしていたが、連邦共和制の国の分割方式や首相および大統領の権限などがまとまらず、作業が難航した。そのため、制憲議会の設置期間を1年間延長したが、その期限も残り約1ヵ月強となっている。
 このような政権不安や汚職事件、新憲法の制定などの問題が解決されず、しかも無責任な政府の姿勢が継続しており、国民の批判は高まるばかりである。

国際労働財団(JILAF)
  ネパール・フィールドマネージャー 和田正夫

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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