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No.69(2011/4/6)
ネパール連邦民主共和国の民主化への変遷(2)
 現在、ネパールでは10年以上にわたる内戦状態が終わり、ネパール王国からネパール連邦民主共和国へと生まれ変わったが、政治や経済、教育のいずれを見ても不安定な状況が続いている。
 このような状況から国際労働財団(JILAF)では「独立ネパール労働組合会議(NTUC-I)」と協同で、(1)職場の環境改善セミナー(2)労使関係セミナー(3)児童労働撲滅のための学校プロジェクト――などを展開しており、ネパールの地域や社会に貢献するプロジェクトを行っている。
 今号では現地に駐在しているJILAF・和田正夫フィールドマネージャーが、ネパール情勢について報告する。
和田フィールドマネージャーからの報告
 ネパールでは首相選挙が7ヵ月の空白期間を経てようやく再開され、UML(ネパール共産党・マルクス・レーニン主義派)の党首であるジャラ・ナート・カナルがマオ党(ネパール共産党・毛沢東主義派)の支持を得て、第34代新首相に選出された。
 今回で17回度目となる選挙もこれまでと同様に、選挙当日まで票の行方が決まらずにいた。しかしマオ党およびUMLの党首同士の密約協議が投票直前まで行われた結果、選挙開始5分前に両者が、[1]独自の社会主義を建設し、国民参加の民主主義を発展させ、新憲法を制憲する[2]国の組織を再編成することで連邦国を建設し、独裁体制をすべて終了させる[3]マオ党の軍人を軍から退職させ、社会復帰については敬意を表した形で行う。また、マオ党軍とは別の防衛軍を組織し、これに入隊させる[4]連立政権を樹立することに両党が合意する。新政府の運営については上部運営組織を設立し、統率者は両党の党首が交互に務め、内務や防衛などの重要省庁の人事は両者が分担する[5]新政府の基本的な規定を作成する[6]新政府の指導者は両者の合意に基づき交互に選出し、両党間で長期的な協力体制を前進させる[7]首相選挙ではマオ党はUML党首に投票する――などの 7項目の同意書に署名し、反マオ派のコングレス党を退け、ジャラ・ナート・カナルの首相選出を実現させた。
 首相選挙は当初、4人が立候補していたが、マオ党・プラチャンダ党首は、過半数の獲得が困難になると立候補を取りやめ、UMLとの連立を締結した。第二党のコングレス党および少数党はこの連立には参加せず、今後は反政府野党として平和交渉の締結と新憲法の成立実現をめざすことを発表した。
 しかし、新政府の組閣ではマオ党とUMLとの間で、新省庁の獲得争奪戦がすでに展開され、大統領府での新政府での閣僚就任式には、事前に両党から外務、内務、大蔵、防衛――などの主要閣僚数人が出席すると発表していたが、両党の閣僚選出が合意することができず、当日は首相一人の就任式となった。 
 また報道によると、首相選挙の直前に交わされたマオ党とUMLの7項目の合意文章では、「元ゲリラ兵1万9000人の処遇はマオ党の要請に基づき、独立組織を編成し、集団的に入隊させる」としている。これはコングレス派や政府与党少数派を含めたマオ党との合意書には認可されなかった最重要事項であり、新首相選出における両者の駆け引きに利用されたことになる。野党は「新政府がこのような手段をとるならば、合意事項の全面的な破棄を求めるとともに、断固としてこれを阻止する戦いを進める」としている。
 すでに新首相が選出後、約2ヵ月が経過しているが、マオ党とUMLの新連立政府の組閣は、現在も暗礁に乗り上げたままである。組閣合意がなされない理由として、「内務や防衛などの各省庁人事は、進行中の平和締結および新憲法が成立していない現状では、それらの各省庁をマオ党には譲るわけにはいかない」として両党対立の大きな原因となっている。またその争奪戦と両党密約の7項目についてUML党内でも、新首相のカナル派と前首相のマダフ・クマール・ネパール派(反マオ派)の意見が対立しており、「首相選挙での7項目の合意ついては党の議決はない」としている。その一方でマオ党は、「要請した省庁が与えられなければ、合意事項の破棄であり、直ちに野党となる」との発言を繰り返し述べている。
 マオ党は政党政治に参加後も関連する青年団(YCL)や組合組織による、乱闘や強制寄付、土地の略奪など、治安悪化を招く事件を数多く起こしている。そのため国民選挙における最大政党でありながら、国民やマスコミからは市民政党としての活動を疑問視されている。

国際労働財団(JILAF)
  ネパール・フィールドマネージャー 和田正夫

中国とベトナムの最低賃金動向
中国の最低賃金は2年連続で大幅に上昇
 中国では30省が2010年、最低賃金の調整を行った。このため、最低賃金が引き上げられ、上昇率は平均22.8%となり、最低月給が最も高いのは上海の1120元(約1万4000円)、パート従業員の最低時給は北京の11元(約136円)である。また、全国の29省が発表した「賃金指導基準ライン」では、上限の平均上昇率は前年より約3%上昇し、賃金指導基準ラインも約2%上昇している。

 2011年も下記のように最低賃金は大幅上昇となる。
 
 [1]広東省では2011年3月1日から、最低賃金の基準引き上げを行うと発表。第1類に分類された広東省・広州市では、現時点において、正社員の最低賃金が中国全土において最高レベルとなる28.2%増の1300元(約1万6000円)まで引き上げることになる。しかし、その後に深セン市が最低賃金基準を20%上昇させ、1320元(約1万6300円)へと改定を発表。この数値は広州の1300元を上回り、中国最高の水準となった。
 その一方でパート従業員の1時間当たり最低時給は、12.5元(約160円)となっている。
 [2]中国の新華社は2010年12月27日、北京市は2011年から最低賃金を21%引き上げると報じた。北京市は6ヵ月前に最低賃金を20%引き上げたばかりだ。今回の引き上げにより、最低賃金は月間200元も引き上げられ、1160元(約1万4300円)となる。また、北京市は退職者に支払う年金額を10.2%引き上げ、月間2268元(約2万8000円)とすると発表。
 [3]上海市は最低賃金を2011年4月より、現在より10%上昇させると発表。このため上海市の現在の最低賃金は1120元(約1万4000円)から1232元(約1万5000円)に上昇することとなる。

2011年3月11日からの最低賃金と上昇率

地域名 2011年度の最低賃金 上昇率 2010年度の上昇率
広州 1300元 28.20% 19.80%
珠海、彿山、東莞、中山 1100元 19.60% 19.50%
汕頭、恵州、江門 950元 17.30% 20.90%
韶関、河源、梅州などの20都市 850元 19.70% 22.40%
2011年度・ベトナム最低賃金改定動向(ベトナム政府政令)
 ベトナムでは労働傷病兵社会省が2010年9月、「2011年の最低賃金(月額)と地域区分の見直し案」を提示し、意見聴取会を開いた。地域区分の見直し案は多くの参加者から同意を得られたが、最低賃金案については金額が低すぎることから、労働者不足を招くとの批判が相次いで出され、原案を増額しての公布となった。
 
外資系企業の最低賃金上昇率
外資系企業 現在の最低賃金 上昇率(2011年1月1日以降)
1種地域 134万ドン 155万ドン(5984円)15.7%増
2種地域 119万ドン 135万ドン(5212円)13.4%増
3種地域 104万ドン 117万ドン(4517円)12.5%増
4種地域 100万ドン 110万ドン(4247円)10%増
国内企業の最低賃金上昇率
外資系企業 現在の最低賃金 上昇率(2011年1月1日以降)
1種地域 98万ドン 135万ドン(5212円)37.8%増
2種地域 88万ドン 120万ドン(4633円)36.4%増
3種地域 81万ドン 105万ドン(4054円)29.6%増
4種地域 73万ドン 83万ドン(3204円)13.7%増
  • 1種地域:ハノイ市およびホーチミン市の各区
  • 2種地域:ハノイ市の一部の郡部(ドンアィン郡、ソクソン郡、タンチー郡、トウリェム郡等)、ホーチミン市の郡部、北部ハイフォン市の一部の郡部、クアンニン省ハロン市、南部ドンナイ省ビエンホア 市の区部、カントー市の区部 など
  • 3種地域 :ハノイ市の一部の郡部、北部バクニン省の一部(バクニン市・ツーソン町・クエボー郡・ティエンズー郡・イエンフォン郡等)、各省直轄市、一部の中央直轄市(ハイフォン市、ダナン市、カントー市)の郡部、クアンニン省ウオンビー町、中南部カインホア省カムラン町、南部ラムドン省バオロック町、南部バリアブンタウ省スエンモック郡 など
  • 4種地域:上記以外の地域
*ドンの円表示は2011年3月23日現在のレートで換算
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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