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No.68(2011/3/30)
韓国における韓進重工の労使紛争
 韓国造船業のトップ企業である韓進重工・建設社(以下韓進重工)では、2010年12月20日から釜山や蔚山の造船所で大量解雇に反対するストライキが続いていたが、2011年2月14日、会社は労働組合に通告せず、突然ロックアウトを行った。
 韓進重工のストライキは2010年2月26日に合意した労使協定を会社側が破棄したことが原因で発生。協定では、「2009年12月18日から実施している大量リストラおよび一時解雇を中止する」としていたが、韓国金属労組(KMWU)と何の協定も無く、再び大量解雇を実施。さらにストライキによる損害を労働組合とその指導者に支払いを要求している。
 労働組合の要求は、[1]大量希望退職の取り下げ[2]2009年と2010年の成果連動手当の支給[3]生産職場の適切な環境・設備の保証[4]組合指導者への非難や中傷の中止[5]不公平な休職の取りやめ[6]労働協約の遵守――などである。
 韓進重工による大量解雇の狙いは、『労働組合権』の弱い国へ生産を移管しようという「反労働組合政策」であり、投資先のフィリピンでも労働組合の組織化を抑圧している。また国際建設林業労働組合連盟(BWI)・ニュースによると、以下のようにスービック工場でも「不当労働行為」を続けている。
 韓進重工・フィリピン社は2005年、「スービック自由貿易地域」で操業を開始。まず第1段階として、造船所建設に向けて7000~1万人の建設労働者を雇用し、今年の第2段階で造船労働者をさらに3万人雇用する予定となっていた。同社はこの地域で最大の外資直接投資であり、直接間接の雇用のみならず、職業訓練などで地域経済を活性化することが期待され、フィリピン政府は韓進重工・フィリピン社に工場設備を50年間のリースにするとしている。
 全国建設労働組合(NUBCW)は韓進重工・フィリピン社で労働法、労働基本権、法的雇用契約、労働組合と労働者の訓練を受ける権利――などのセミナーを開いてきた。その活動の結果、労働者たちは同社の「人道に反する労働条件を改め、人間らしい労働者の権利を闘い取ること」を決意し、2008年6月、労働組合を結成した。しかし、多くの多国籍企業と同様に、同社の回答は労働組合の抑圧であった。
 労働組合が組織されると、韓進重工・フィリピン社は選ばれた労組役員や組合員をミンダナオの新工場へ配置転換させ、降格人事と賃金引下げによるハラスメントを行った。さらに会社側は14人の韓進重工・フィリピン労働組合役員と組合員が法的権利を守るため、労組を組織したことで解雇。工場に入ることを禁止しただけでなく、工場内の安全掲示版にも犯罪者のごとく写真を貼り付けていった。
 韓進重工・フィリピン社は、「労働組合の組織化をやめなければ、400人の労働者を解雇する」と脅迫しており、「造船所で働き続けたければ"忠誠宣誓書"にサインすること」を労働者に要求。また会社側は労働組合活動家の身分証明書を取りあげ、工場に入ることを拒否し、欠勤扱いとして雇用契約を一方的に破棄した。
 また、韓進重工では過去に労働災害が多発し、この事故でかなりの負傷者や死者が出ていることから労働者や組合の主たる関心は工場内の安全確保である。その前の週も工場内で労働者が死亡したと警察が発表し、2006年に韓進重工・フィリピン社が操業して以来13人の労働者が死亡したことになる。
 NUBCWは2010年3月と6月に、スービックにおける致命的な事故の増加について注意を喚起する声明を発表。その中で、NUBCWのアーネスト・アレラノ委員長は「韓進重工・フィリピン社のスービック工場は、OHS基準を国際基準に合わせることを保証すべきである」と強調した。
 韓進重工・フィリピン社は依然として健康と安全基準に違反しているだけでなく、労働組合の組織化を阻止し、労働者や組合の権利を侵そうとしている。この圧力にも拘わらず労働者は「最後まで粘り強く闘い抜く」として、韓進重工・フィリピン労働組合のクリステン・バイヨン書記長は、「われわれは自分たちの権利を掲げる自由がある。韓進重工・フィリピン社が労働者を動物のように扱うような思い上がりを許さない。今後も組織化を続けていく。なぜならそれが権利であり、労働組合の責務でもある。もはや引き返すことはできない」と力強く決意を述べた。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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