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No.66(2011/3/4)
アップル社・行動規範として下請け企業の社会的責任を追求
 中国においてアップル社は2011年、「プログレスレポート下請け企業の社会的責任」を発表した。
 iPhoneやipad組み立てている世界最大のEMS企業であるフォックスコン・深セン工場で昨年に起こった自殺事件は大きな反響を呼び、アップル社は契約下請け企業127工場を詳しく調査した。その結果、超過労働時間、児童労働、外国人契約労働者への法外な紹介料の搾取、職場の安全衛生問題――など、多くの問題が把握され、同社は下請け企業の行動規範を徹底するとしている。
 特にフォックスコン対策では、アップル社とフォックスコンとで特別チームを作り、心理学者などの専門家を交え、深セン工場の労働者を面接して自殺の背景を分析。この悲劇が2度と起こらないよう24時間開業のケアセンターを設置。労働者のメンタルヘルスケアを実施することとしている。
 児童労働問題では127の下請け工場のうち、9工場で49人を雇用していることが判明。これらの児童はただちに学校に戻されたが、年齢詐称など職業斡旋業者や学校の問題もあることから、工場の担当者には教育訓練を実施している。また1工場で児童労働に42人も従事させていた工場では、子供たちを学校に戻し契約を解除している。職業訓練学校の視察でも児童労働が見つかり、子供からは「年齢のことは絶対しゃべるなと言われている」との証言を得ることができ、職業訓練学校については中国当局に告発している。
 また18の工場で外国人契約労働者が働いているが、職業斡旋業者に規定以上の紹介料を払わされていたため、2008年にさかのぼってアップル社の基準以上の紹介料については業者から労働者へ返還させた。アップル社の労働時間の基準は週最長60時間で週に最低1日の休暇取得が義務付けられているが、76の工場で週の労働時間を50%も上回っており、これを是正するために指導している。
 その他に、職場の労働安全衛生問題では多くの工場で、安全ベルト無しでの高所作業、安全眼鏡や耳栓、マスクの不着用、資格無しでの危険作業――などが多く見られた。
 安徽省のウィンテック社(iPhoneのタッチスクリーンを供給している台湾企業)では、化学物質N-ヘキサンの汚染により、137人の労働者が労働災害となっている。アップル社はN-ヘキサンの使用を禁止、空調設備の完備をさせることによりアップル社の規格を厳守させた。2011年には再調査を実施すると報告している。
 この件でニューヨークタイムス(2月22日付け)は、「N-ヘキサンは洗浄剤として早く蒸発し効率が良いがこれを吸い込んだ労働者は神経にダメージを負い、10ヵ月も入院している。いまだにウィンテック社の工場にアップル社の担当者が来た形跡はなく、被災労働者に対して同社は、仕事を辞めるように強要している」と報道されている。
中東・北アフリカ情勢とITUCの対応
 混乱する中東・北アフリアの情勢についてITUCの対応をについて報告する(以下ITUCニュースより)。
 
[1]バーレーン情勢
デモ参加者に対する警察の暴力的な取り締まりを非難する (2月16日付)
 ITUCは平和的なデモ参加者に対する警察の暴力的な取り締まりを非難し、バーレーン政府に対して、「表現と集会の自由」を尊重するよう要請する。少なくとも2人のデモ参加者が殺害されているが、それでも数千人のデモ参加者が首都マナーマの真珠広場を占拠している。
 昨日、2月15日、バーレーンのITUC加盟組織であるバーレーン一般労働組合連盟(GFBTU)は、今回のデモ要求が、[1]新憲法の制定や公正な選挙の実施[2]経済的・政治的自由の拡大――などであるとして、それを支持する緊急声明を発表した。ITUCもこの声明を全面的に支持する。 またGFBTUはこの声明の中で、政府に対して犠牲の真相を徹底的に究明し、平和的なデモ参加者に対して受け入れがたい弾圧を行った責任者を免責しないことやまたデモで逮捕された者の釈放を要請した。国民の不満表明の根本的な原因となっている危機を緩和するために全国的な対話の開始も提案した。
 
殺害を止めよ(2月18日付)
 2月17日、警察の暴力により殺害された4人のデモ参加者の葬儀に参列していた数万人の人々に対して、バーレーン軍隊は発砲を開始した。ITUCシャラン・バロウ書記長は「ITUCは弾圧の拡大に戦慄を覚える。世界の加盟組織に対して、治安部隊による暴力の拡大を即座に中止するよう自国政府を通してバーレーン政府に圧力をかけるよう要請している」と語った。
 バーレーン政府による弾圧に対して、市民団体や野党はさらなる平和的なデモへの参加を呼び掛けている。国民が求めているのは憲法の改正や表現の自由、集会の自由など、基本的な権利の尊重である。ITUCは弾圧を公然と非難し、デモへの参加を呼びかけているバーレーン一般労働組合連盟(GFBTU)を支持し、バーレーン政府が労働組合運動をはじめとする市民社会団体と対話を開始するよう改めて要請する。
 
[2]リビア情勢
カダフィはリビア市民の殺戮を止めよ(2月21日付)
 リビアでは少なくとも300人のデモ参加者が殺害され、驚くべき数の負傷者が出ていると報道された。ITUCは弾圧の激しさに戦慄を覚える。リビアにおける大量殺戮を即座に終止符を打つために、全世界の加盟組織に対して自国政府に遅滞なく要請行動を行い、42年にわたるカダフィの独裁政権に圧力を加えるよう要請する。
 ITUCシャラン・バロウ書記長は、「基本的権利や表現の自由、集会の自由の尊重を正当に求めている市民のデモに対してリビア政府が行った前例のない暴力行為は、リビアを恐るべき血の海にした。カダフィはこの激しい弾圧を即座に止めるべきである。国際社会はその方向で即座に行動を起こすべきである。この大量殺戮はその責任者の処罰なしで終わるべきでない」と激しく非難した。
 今回の混乱により国外に逃れようとしている多くのチュニジア人やエジプト人、その他の国の労働者の報に接し、国際社会にそれらの労働者の保護を要求する。
 
[3]中東・マグレブ諸国
弾圧即時中止!社会的政治的対応が必要(2月21日付)
 チュニジア革命によって引き金が引かれ、続いてエジプト革命によって刺激を受け、中東とマグレブ諸国の全体に拡大した抵抗の波は、日を追って拡大し続けている。抵抗への対応はますます暴力的になり、リビアではカダフィ大佐の残忍な独裁による大量殺戮に至っている。ITUCはカダフィに対してリビア市民の殺戮を即時中止するよう要求する緊急アピールを発表した。
 ITUCシャラン・バロウ書記長は「今回の混乱の原因は、失業、貧困、不平等、基本的人権の弾圧など、各国の特性を超えてどの国でも共通しており、それが未来と自由を奪われた多くの若者を幅広く勇敢に立ち上がらせた根本にある。まさしく歴史的な瞬間である。民主主義と社会正義の拡大を求めるこの地域の人々の正当な期待に対してITUCは支持を表明する。権力にある者は弾圧に訴えることを止め、国民の声に耳を傾けなければならない」と語った。
 リビアだけで1週間もたたないうちに何百人もの市民が殺害され、チュニジアとエジプトにおける、おそるべき人命の損失に続いて、バーレーン、ジブチ、イラク、クルド人自治区、イエメン――においても多くの人々が弾圧の犠牲となった。アルジェリアにおいてもデモが弾圧されている。
 ITUCは国際社会にこれらの弾圧的な犯罪行為に対して責任者を確実に裁きの場に出すことを要請する。反乱はモーリタニアでも起こっており、同国のITUC加盟組織である、モーリタニア労働者一般連盟(CGTM)、モーリタニア労働者自由総連合(CLTM)、モーリタニア労働者組合(UTM)はデモを行い、「国の爆発的な情勢」に取り組むために社会的対話の開催を要求した。2月17日には、ITUCシャラン・バロウ書記長はG20会議にメッセージを送り、雇用と所得の拡大を支援するグローバルな政策を実施することによって、抗議行動の波を激しくしている失業と不平等などの諸課題に緊急に取り組む必要性を強調した。「仕事と権利・・・それがアラブ世界の若者がまさしく求めているものである」と語った。
 さらにITUCシャラン・バロウ書記長は「ITUCは昨年、カナダのバンクーバーで開催した世界大会でアラブ地域におけるその存在感を高めた。今回の抗議行動の発生の当初から、チュニジアにおいて、ベン・アリ独裁体制の転覆に中心的な役割を果たした加盟組織チュニジア労働総同盟(UGTT)と共に、変革を求める何千人もの労働組合活動家に全面的な支持を表明してきた。ITUCはUGTTと密接に協力し、チュニジア将来の挑戦に立ち向かう。エジプトにおいて200万人ものデモ参加者が体制の変革意思を表明した。ITUCは今回の変革で中心的な役割を果たしたエジプトの新しい独立労組を今後とも支援し続けていく。同様にバーレーンにおいての弾圧を非難し、全国的な対話を呼び掛けているITUC加盟組織のバーレーン一般労働組合連盟(GFBTU)を支援していく」と語った。
 続いて「今後数日間が極めて重大である。国際社会は今回の民衆の行動によって提起された挑戦の大きさに相応しい行動をとるべきである。弾圧を確実に終わらせ、また雇用と社会的保護など、またこの地域のすべての人々が待ち望んできた自由と発展をもたらす政治的・社会的・経済的な解決策を確実なものにしていかなければならない。この地域に自由で独立した労働組合運動を築き上げていくことが、より良い将来の建設にとって不可欠である。労働組合の自由と社会的対話は民主主義と開発の両輪である。多数のジャーナリストが殺傷され、国民に正確な情報を提供することが妨げられている。シリアの15歳のブロガーが5年の禁固刑を宣告された。当地域の権力支配者が強行しているインターネットなど通信手段に対する妨害行為を即座に中止するよう要請する。クウェートでは、何百人もの外国人出稼ぎ労働者が平等な市民的権利を求めて過去数日にわたってデモを行ってきた。リビアでは、何万人もの外国人労働者が混乱から海外脱出しようとしている。ITUCは、当地域における人権と労働組合権を求める闘いは、特に広範な搾取と差別を受けている外国人労働者が労働力の大半を占めているペルシャ湾岸諸国において、労働者の権利を求める世界的な闘いと密接に関わっていることを想起する」と語った。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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