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No.62(2011/2/9)
エジプトの労働運動に新しい風

 エジプトにおいて独立した全国的な労働団体(ナショナルセンター)が2011年1月30日、新たに旗揚げされた。新組織はエジプト労働組合連合(Federation of Egyptian Trade Unions)と呼ばれ、結成にはさまざまな産業や職種、地域の代表者が参加した。産業と職種では、固定資産税局員、退職者、医療技術専門職員、繊維被服、金属、薬剤師、化学、公務員、鉄鋼、自動車など、地域代表はマハラクブラ市やラマダン市、サダト市などからそれぞれ派遣された。
 新連合は1月30日午後、カイロ市内で記者会見を開き、新組織の結成を発表するとともにゼネストを宣言した。同時に「職場を防衛し労働者と市民を守るためにすべての工場・企業に委員会を設置する」と発表。新連合はエジプト民衆革命にすべてを捧げることを強調し、特に今日までの長い間に行われた、何千回にも及ぶストライキや座り込み、抗議運動を経験してきた労働者の「経済的民主的要求」をいまこそ実現すべく、全国的な運動を展開していくこととしている。
 エジプトはILO条約87号(結社の自由および団体交渉の保護に関する条約)と98号(団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約)を批准しているが、組合の結成や加入する権利は法律で厳しく制限している。新連合には「固定資産税局員独立一般労組」が参加しているが、同労組は度重なる政府の反組合的な介入に対しては法廷闘争を続け、組織を防衛し活動を継続してきた最初の「独立労組」として国際的にもよく知られている。第1回定期大会を2009年1月に開き、組合員は2万7000人。また、国際産業別組織(GUF)の一つである国際公務労連(PSI)に加盟している、固定資産税局員独立一般労組(RETA)のカマル・アブェイタ委員長は、2010年8月、エジプトの労働運動を代表してアメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)から「ミニーカークランド人権賞」が授与されている。この人権賞は同時にもう一つの団体の代表に贈られている。組合教育や法律相談などで労働運動を支援し、児童労働問題などに取り組んでいるエジプトのNGO「労働組合・労働者サービスセンター(CTUWS)」総括コーディネイターのカマル・アッパス氏である。CTUWSはフランスから「フランス共和国人権賞」も授与されている。
 国際労働組合総連合(ITUC)は、1月31日のプレスリリースで、強権的な政権に対して立ち上がったエジプト労働者の勇気と決断に敬意を表し、新組織の誕生を歓迎するとともにゼネストを強力に支持する、と発表した。

エジプト独立労組連合結成宣言の要約
 エジプトは歴史的瞬間を迎えようとしている。国民は人間らしく生きる権利を守るために勇敢に闘っている。エジプトのすべての人々が、公平な富の配分を受けられる社会をつくらなければならない。国民はだれでも自由に息ができる社会、自由に話ができる社会、階層や職業に関係なく自分の利益を守り自由に交渉ができる社会、いかなる人々をも抑圧することのない社会をつくらなければならない。エジプトの労働者と市民は過去何十年もの間、特にこの4年間は自分たちの権利を守るために未曾有の闘いを続けてきた。その運動は独立労組が少ない中でも成功を収めることができた。闘いの輪はエジプトの社会や労働者、労働運動にますます広がり大衆革命へとつながっていった。独立労働組合(固定資産税局員労組、退職者労組、医療関係専門職労組、教職員独立労組)と委員会は、2011年1月30日、エジプト独立労組連合の創設を宣言し、以下の点について特に強調する。

 1. エジプト市民の働く権利と政府の失業手当の支給。
 2. 最低賃金は1200LE(約$200)以上とし、年1回の物価調整を実施する。
  ボーナスの支給と労災補償。賃金の最高額は最低賃金の10倍を上限とする。
 3. 公平な社会保障の受給権利、医療サービス、住宅、教育の権利。教育は無料とする。
 4. 労働者の組織化と自らの規則作成の権利。これらに関係する法的規制はすべて撤廃する。
 5. 1月25日以降の拘留者は全員釈放すること。

 エジプト独立労組連合は、この危機的状況の中で職場と労働者、市民を守るために市民委員会をつくること、特定の職場を除き市民の要求実現のために抗議行動とストライキに参加するようすべての労働者に要請する。

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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