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No.61(2011/2/7)
チュニジア・エジプト情勢に対するITUCの対応

チュニジアの政変とITUC
 2010年12月17日、チュニジアの街頭で物売りをしていた青年が警官によって商品を没収され、この行為に抗議した少年は焼身自殺を図った。この事件が原因となり、国民の抗議行動が全国に瞬く間に広がった。

 (以下ITUCニュースの概要)

(1月4日付)
 ITUCに加盟するチュニジア労働総同盟(UGTT)の地方組織も抗議行動に加わり、失業や政治腐敗に反対する街頭行動を展開した。その抗議行動で数人が警官により射殺され、数多くの負傷者を出し、組合事務所が占拠された。また、多くの弁護士やジャーナリストが逮捕・拘禁されたという。

(1月12日付)
 治安部隊とデモ参加者の衝突で50人以上が死亡。多くの負傷者が出たとも報じており、ITUCは全世界の加盟組織に対して、チュニジアの治安部隊によるデモ参加者への暴力的な弾圧に抗議するよう要請。また国連による調査では抗議行動開始以来、約100人もの犠牲者を出しているとも報じている。

(1月14日付)
 1987年以来、約30年にもわたり強権的な政治を行ってきた、ベン・アリ大統領はサウジアラビアに国外逃亡した。その後チュニジアでは暫定政権が設立されたが、閣内に前政権の閣僚が含まれており、依然として国内の抗議行動が続いてきた。

(1月24日付)
 ITUCは1ヵ月以上にわたって平等、社会正義、政治的自由、民主主義を求めて勇敢に戦ってきたUGTTの多くの労働者とチュニジア国民に対して全面的な支持を表明。その中でITUCは強権的な政治の崩壊を歓迎し、腐敗と縁故政治に終止符を打つUGTTの呼び掛けに全面的な支持を行った。

(1月25日付)
 UGTTに対する支持を再確認し、真の民主主義への移行を呼び掛けた。その中で暫定政府は1月24日、「学校再開命令」を発令したにも関わらず、小学校の教職員の約90%がストライキに参加したと報じている。ストライキ中の教職員は、他のデモ参加者と共に首都チュニスの首相官邸前に集合し、前政権の閣僚を含む暫定政権の辞任を要求。デモ参加者に対して、警察は催涙ガスと暴力で排除したことをITUCは厳しく糾弾した。

(1月25日付)
 6つのチュニジアの都市で、UGTTの事務所が官憲によって襲撃を受けたと報じ、UGTTに対する暴力攻撃を即時中止するよう要請。この事態を受けてITUCは、「労働組合権」「労働組合の自由」を侵害する暴力行為として、政府を相手取りILOに提訴することを決定したと報じている。

エジプトの反政府デモとITUC

 チュニジアの動向は、同じような専制的な政治状況にある他のアラブ諸国、特にエジプトにも飛び火し、反政府デモが全国に広がった。
 ITUCニュース(1月25日付)では、同日エジプトで首都カイロをはじめ、アレキサンドリア、アスワン、マハラ、イスマイリヤ――などの都市で政治社会改革を求め、政治腐敗、貧困、物価高、警察の暴力を非難する何万人ものデモが行われたという。これらのデモには多くの労働組合員が参加し、警察による激しい取り締まりを受けた。ITUCは平和的なデモに対する催涙ガスの使用を非難、同日に逮捕された人々の即時釈放を要求し、当局による通信手段の遮断を非難した。
 ITUC・シャロン バロー書記長は、他のアラブ諸国の事態も憂慮し、その地域の政府に対して「社会正義と表現の自由への自らの正当な権利を平和的に表明している国民の声に耳を傾け、考慮しなければならない」と述べ、真の社会対話を開始し、国民の正当な要求に対して耳を傾けるよう要請した。
 その後エジプト全土で連日にわたって拡大していった反政府デモは、特に1月28日のイスラム教礼拝後に行われたデモに関連して、ITUCは同日付けのニュースで、エジプト政府に対して平和的なデモへの参加者に対する暴力的な取り締まりを即時中止し、市民の流血を回避することを要請した。
 併せてITUCは前IAEA事務局長でノーベル賞の受賞者である、モハメド・エルバラダイ氏の拘禁をはげしく非難し、すべての逮捕者の釈放を要求した。ITUC書記長シャロン・バロー氏は「エジプト政府は弾圧を即時中止し、国内の貧困、政治腐敗と警察の暴力に反対して平和的に闘っているエジプト国民の正当な期待に耳を傾けなければならいと」と述べた。
 またインターネットや携帯電話などの通信手段が遮断されていることに対して、表現と報道の自由を尊重することを要請。また「これらの地域の最近のできごとを明確に示すこと、弾圧は事態の打開策にはならない」と強調し、エジプトで行われている抗議権をはじめとする基本的権利の深刻な侵害に関して、国際社会がその責任を果たすことも要請した。

エジプトの新労組がゼネストを呼びかけに対してITUCが支持
 ITUCニュース(1月31日付)によると、ITUCは民主主義と基本的権利の尊重を求めてゼネストを呼びかけている野党勢力に支持を表明。この野党勢力の動きは新たに設立された独立労働組合センターによるゼネスト呼び掛けに応じるものである。
 ITUC・シャロン バロー書記長は新組織を歓迎して以下の通り述べた。「今回のゼネストの呼び掛けは、長きにわたって職場で民主的に代表する権利を拒否されてきたすべてのエジプト人にとって重要な一歩である。これまで当局により承認を拒否されてきた独立した労働組合は、ここ何年間も数限りない職場ストライキや座り込み、抗議行動を展開してきた。今回見られたエジプト国民の大動員の牽引力になったのもこの組織であった」と述べている。

設立された新組織
 新ナショナルセンターは、保健衛生労働者、課税査定官、基幹製造業の労働者代表、公務員、その他の労働者など、独立系労働組合を糾合するものであり、1月27日にカイロのタリール広場で行われた集会で設立を宣言し、直ちにゼネストの呼び掛けを行った。さらに新組織は全国での職場委員会の設置も宣言した。
 ITUC・シャロン バロー書記長は「ITUC加盟組織のUGTTが民主的な運動の前衛であったチュニジアと同様に、専制的で正当性のない体制に対して立ち上がったエジプト国民の勇気と決意に敬意を表するものである」と強調した。

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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