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No.53(2010/11/12)
世界最大の台湾系EMSメーカーフォックスコン調査報告書

 世界最大の台湾系EMS(Electronics Manufacturing Service)メーカーであるフォックスコン中国工場での自殺者13人、またインドチェンナイ工場での労働争議など、ITUCニュースで報道されているが、この度、香港のNPOであるSACOM(企業行動に対し労働基本権を守る学生と学者の組織)がフォックスコン中国工場に関する調査報告書を発表した。 以下その概要である。

 アップルやヒューレットパッカード、デルの最新製品を製造しているフォックスコン中国工場で2010年1月~8月17日の間に13人の若者が自殺したが、その後、労働条件改善の方向はいっこうに見えない。依然として低賃金や加重労働、不適切な学生労働者の使用、不十分な労働安全衛生など不法労働慣行が存在している。

 SACOMは2010年5月22日から9月21日にかけ深圳にあるフォックスコンの2つの工場で100人の労働者に面接をした。

 賃金
 10月1日、フォックスコンは深圳工場の労働者の賃金を月額2000元増やすと発表し、約85%の労働者が賃上げの対象になるとした。しかし、今日まで労働者はいかなる公式通知は受け取っていない。それどころか過去数ヵ月において、手当や補助給付、賞与は打ち切られ、中国のその他の地域のフォックスコンでの賃上げについては無視している。SACOMが掌握している中国における電子産業の基本賃金は地域により異なり、1686元から2293元である。注、1元=12.2円

 労働時間
 フォックスコン中国工場では自殺者が出てから月の超過労働時間を80時間に制限しているが、これすらまだ法定最大超過労働時間を36時間オーバーしている。労働者との面接によると、時間外管理は時間外記録をごまかしており、サービス残業が発生している。また仕事の始まりと終わりに行われる集会や週末の仕事の配分や目標に使われる集会は1日に1時間ぐらいはかかり、強制にも拘わらず賃金は支払われていない。

 経営管理システム
  フォックスコンは労働者が入社すると先ず、服従を強いる。労働者は自分の割り当てられた仕事でない場合でもミスは処罰されるし、トイレ時間も厳しく制限される。懲戒処分はボーナスカットだけでなく、仲間の面前でミスを告白させられ、叱責を受ける。保安要員は労働者に罵声をあびせるだけでなく暴力もふるう。
 労働者管理は寮生活にもおよび、ヘアドライヤーの使用禁止など私生活にも関与し、従わないと告白書を書かされる。

 再配置計画
 中国でフォックスコンが雇用している労働者は90万人に達し、深圳だけでも42万人におよぶ。自殺事件後、フォックスコンは生産ラインを中国の中央地域、西方地域、北方地域各々に再配置すると発表した。より労働力が豊富で法定最低賃金が低い地域へ工場を移すということだ。しかし労働者にこの再配置計画は知らされておらず、ただ会社の方針に従うだけである。これらはバイヤーであるメーカーから絶えずプレッシャーをかけられている結果で、アップルは40%も利益を出しているのにもかかわらず、サプライヤーは4%程度の利益率だ。その結果、労働者は賃金を削られ、最低限の生活できるぎりぎりの賃金さえもらえない。

 深圳の工場にも労働組合、総工会が存在する。しかしインタビューした労働者は組合を信用していない。労組委員会のメンバーは民主的に選ばれておらず、労組の委員長は広報の責任者で社長の秘書でもある。組合事務所は人事部と机を並べている。苦情処理は直接管理職に出すように組合からは云われている。要は中国の労組法においては、組合を組織する自由は無いに等しい。

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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