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No.42(2010/8/18)
中国政府・共産党:労働者ストの動きを静観

 中国政府・共産党は2001年12月に国際貿易機関(WTO)の加盟に当たって、社会秩序を維持することを目的として、『労働組合法(工会法)』を同年10月に改正した。
 今回の改正ではそれ以前に明記されていたストライキに関する項目は削除され、このため「スト項目がないことは、ストが禁止されたものではない」との意見や見方が中国国内にはある。さらに政府は労働者の労働条件の透明性を図り、保護するため日本の『労働基準法』に相当する『労働契約法』を2008年に制定した。こうした背景もあり、中国の外資系工場で働く労働者は権利意識に目覚め、彼らの主張を強める動きを見せてきた。特に近隣他社の労働条件についての情報交換も進み、労働者は要求を強めた。
 朱東洋学園大教授によれば、約200社あるといわれる国有企業の労働者は、基本的にはストライキは認められていないと解釈する意見が有力である。それというのも、同国共産党の規約には「労働者は国の主人公である」と規定されており、かつ労働組合は「中国共産党の指導を受ける」「労働組合は共産主義を学ぶ学校である」との精神が生きており、ストを自制・自粛する根拠になっている。
 今日、日本から約25,000社の製造業が中国で操業していると言われているが、さらに金融やサービス業などでは、日本から約15000の事業所が中国で営業していると推定。本年5月に発生したホンダやトヨタの日系企業の労働者のストライキは中国南部の広州で起こり、賃金や残業時間問題をめぐって紛争に発展したが、今日ではすでにこの争議は解決している。
 これら労働者は、中国の唯一の中央労働団体である中華全国総工会(ACFTU)とは関係なしに独自の行動をとったことが特徴であり、中国に進出した台湾企業では労働者が企業の低労働条件に抗議して11人の自殺者が出ていると報じられている。中国問題のNGO(China Labor Bulletin)の調査では、2008年中に中国では127000件の争議があり、そのうち、直接労働争議に発展した件数は約4300件と発表している。在日中国人の大学教授の指摘では「中国に進出した外資系企業の中では、とりわけ韓国や香港、台湾系企業の労働政策が労働者の中ではあまり評判が良くない」と述べている。この指摘にも関心持ってこれからも注視していくべきである。
 これまでこのような外資系企業の争議について、当局はメディアに対して、報道を自粛するように指導してきたが、今回の外資系企業の争議については中国メディアがかなり制約なしに自由な報道をしてきたことが確認されている。この主な理由として、政府方針である「社会の調和」「国民所得の倍増」「格差の解消」を経済成長の外需から内需に移行したいとの政府政策の方向におおむね沿っており、「積極的にこうした争議に介入すべきではなく、むしろこの動きが社会不安に結びつかない限り、政府は大目に見ておこうとしたのではないか」との観測もある。こうした政府の方針を裏づけるかのように、早期争議解決のためのACFTUの介入の動きはほとんど見られず、これらの争議からむしろ一歩退いた立場にいたようである。以前、ACFTUは事前に争議終結を図るために積極的に紛争解決の努力をしていたが、今回はこの様相は様変わりした様子。なお、スト労働者には官製労働組合とは別の自分たちの独立や自主労組を設立しようとの動きは見られなかった。

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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