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No.40(2010/7/9)
国際労働組合総連合(ITUC)労働組合権侵害に関する調査報告書

 国際労働組合総連盟(ITUC)はICFTU時代から長年にわたり、全世界の労働組合権侵害状況について各国別に、毎年6月に開かれるILO総会時に年次報告書を発表してきた。2010年6月9日に発表された「2010年ITUC労働組合権侵害年次調査報告(2010 Annual Survey of Violations of Trade Union Rights)」は2009年度の世界の労働組合権侵害について調査報告したものであり、その総括的な内容についてITUCニュースは以下の通り報じている。

悪化する労働組合活動家の殺害・投獄事件
 2009年に殺害された労働組合活動家は世界で101人に達し、前年度との比較では30%の劇的な増加を示した。最も多い国は南米のコロンビアで48人、次いでグアテマラ16人、ホンジュラス12人、メキシコ6人、バングラデシュ6人、ブラジル4人、ドミニカ3人、フィリピン3人、インド1人、イラク1人、ナイジェリア1人であった。中南米諸国が圧倒的に多く、次いでアジアとなっている。
 さらに投獄中の労働組合活動家も依然として数多くおり、2009年度だけで新たに109人が投獄された。特に投獄の多い国はイラン、ホンジュラス、パキスタン、韓国、トルコ、ジンバブエであった。今回の報告では140ヵ国の労働組合権の侵害事例を扱っているが、報告書には表れない侵害事例もある。例えば、訴える手段を持たない労働者や雇用ないし肉体的安全への脅迫を理由に訴えることのできない労働者の事例が数多く存在する。調査では殺害・投獄事件以外にセクハラや脅迫、その他の反労働組合的な迫害事例を詳細に記載している。労働組合権について全般的に情勢が悪化したのはエジプト、ロシア、韓国、トルコであった。

スト破り・逮捕・拘禁
 各地域でスト破り、スト中の労働者に対する弾圧事例が報告されている。アルジェリア、アルゼンチン、ベラルーシ、コートジボワール、エジプト、ホンジュラス、インド、イラン、ケニア、ネパール、パキスタン、トルコなどでは、賃金引き上げを要求し、また厳しい労働条件と世界の金融経済危機の悪影響を糾弾するデモに参加した数千人の労働者が殴打や逮捕、拘禁された。労働組合活動を理由とする解雇が多くの国で報告されている。バングラデシュでは賃金引き上げを求めた6人の衣服工場の労働者が、警察の介入の後、死亡する事件が発生した。

組合潰し
 多くの国で労働組合潰しが頻繁に行われている。労働者が労働組合を結成、もしくはそれに加盟しようとすると企業は工場の閉鎖、もしくは他国への移転などで脅迫してくる。当局側が傍観を決め込む中で、使用者が正当な労働者の代表との交渉を単に拒否するだけという事例が数多く見られた。いくつかの国では労働法が改正されて使用者にはより多くの“柔軟性”が与えられ、一方では社会福祉制度がつぶされ、そのため既存の労使関係制度が影響を受け、労働組合権が抑えられるなどの事例もあった。
 

国際労働基準無視
  国際労働基準を無視した政策が横行し、世界の多くの労働者は雇用の不安定や脆弱性に直面し、現在、世界の労働者の約50%が不安定雇用に就いている。特に影響を受けているのは南アジアや中央アメリカの「輸出加工区(EPZ)」の労働者であり、また中東や東南アジアの家事労働者や移民労働者、農業労働者である。さらにインフォーマルな雇用や新しいタイプの「非典型雇用形態」が地域と産業を超えて出現している。これらの労働者は労働市場における立場が極めて脆弱であり、自ら団結して労働組合権を行使するのが困難である。
  調査によると、労働組合権は法律により正式に保護されているが、法の適用範囲が制限されており、法の施行が不十分で、この権利は存在しないに等しいために、労働者の脆弱性に拍車をかけている。多くの国でストライキが厳しく制限および禁止されている。一方では、複雑な手続き要件、強制仲裁、「不可欠業務」の極端な定義などにより、労働組合の代表性や争議への参加など正当な権利を労働者から奪い、労働組合権の行使を事実上、不可能にしている。

いくつかの主要国でILO98号条約が未批准
 2009年は、「団結権と団体交渉権に関するILO第98号条約」が採択されて60周年に当たる年であった。しかし、カナダ、中国、インド、イラン、韓国、メキシコ、タイ、アメリカ、ベトナムなどいくつかの主要な国で依然として未批准であり、世界の経済活動人口の約半数がこの条約の適用を受けていない。
 ITUC・ガイ ライダー書記長は、「今回の調査報告は、世界の大半の労働者が団結権や団体交渉権を実体的にきちんと保護されていないことを示しており、それが長期的に見て、国内および国家間で格差を拡大させている大きな要因である。世界の労働力の多くが適切な所得を得ていないことが、世界の経済危機の原因であり、経済を維持可能な成長の道の乗せることを困難にしている」と指摘した。

 今回の調査報告書の中で、日本に関して[1]長年の懸案となっている公務員の労働基本権の制限問題[2]非正規労働者の増大と組織化の問題[3]外国人労働者への「研修ビザ」制度の悪用[4]旧国鉄労働者への取り扱い――などが記載されている。

 報告書全文(英文)についてはhttp://survey.ituc-csi.orgを参照。日本語翻訳は連合より公表される予定。

ワールドカップ 南アフリカ大会とワーク・ライフ・バランス

 ワールドカップは6月11日から南アフリカで熱戦がくり広げられている。サッカー発祥の地、イギリスにはサッカーファンは多い。しかし、今回の試合開始時間がイギリスでは平日の勤務時間に当たることもあり、サッカーファンは職場で落ち着かない。試合開始時間は南アフリカ時間で、昼の1時30分、夕方の4時、夜の8時30分と試合によって違う。ヨーロッパでは一般的に有給休暇に加え傷病休暇が付与されているが、ワールドカップに限らずサッカー観戦のため、傷病休暇が使われることもあると言われている。また、労働組合は「ワールドカップ期間中の生産性を維持するためにもサッカー観戦の機会を従業員に与えるべき」と考えている。
 イギリスのナショナルセンターである労働組合会議(TUC)はワーク・ライフ・バランスを推進する立場から、サッカー観戦を従業員ができるよう経営側に特別の配慮を求めており、「欠勤よりサッカー観戦を認める方策を考えた方が生産性も上がる」としている。イングランド対スロベニア戦の開始時間はイギリスでは6月23日・午後3時であったが6月20日、TUCは「このゲームが観戦できるように勤務時間をフレキシブルタイムにするか、会社の敷地内に観戦できるよう適切な措置をとること」を使用者に配慮を求めた。すでに多くの職場でフレックスタイムが導入され、従業員はコアタイム(一日のうちで必ず就業する時間)を除いては早めに出勤し、その分、早めの退社は自由である。逆に遅く出勤して遅めに退社するという働き方もしている。TUCとしては「ワールドカップ南アフリカ大会期間をフレックスタイム導入拡大の機会にしてほしい」としている。
 TUC・ブレンダン バーバー書記長は「誰もがワールドカップに熱を上げているわけではないが、たくさんのサポーターがイギリス全土にいるのも事実。それぞれ違った祖国をもつサポーターが自宅やパブ、あるいは職場で応援したいと願っている。職場の上司はこのことを理解してほしい。イギリスは“多様な人種の国”であり、フランス人7万人以上、アメリカ人6万人、オーストラリア人5万4千人、ナイジェリア人5万人、ブラジル人3万人の人々がいる。彼らに対してもイングランド・サポーターと同じ扱いをサッカー観戦ではしてほしい」と述べた。
 TUCは平日のサッカー観戦について従業員が職場の上司に観戦許可をもらうためにどう話を進めたらよいかアドバイスしているが、会社に対しては「不況下でなかなか賃上げができない状況において、サッカー観戦への配慮は会社が従業員へ誠意を示すいい機会にもなる」と経営者の理解を求めている。しかし、フレックスタイムで勤務している従業員は5人に1人であり、タイムオフの申請ができる環境にも限界がある。幸いなことにフレックスタイムなど、従業員の権利拡大を新連立政権が公約としていることをTUCは歓迎している。

 参考資料:TUCホームページ

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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