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No.37(2010/6/18)
ベトナム女性労働者の待遇

 ベトナムの中央労働団体であるベトナム労働総同盟(VGCL)は、2008~2010年の間、「女性労働者の生活実態」について調査を行い、2010年5月に報告書を発表した。しかし、調査結果では“実情はほとんど変わっていない”との結論をまとめた。
 報告書によると、「産業公園(Industrial Parks=一定期間減税などの優遇措置を与え、企業を誘致する制度)で働く女性労働者は、低賃金や過重労働で不十分な生活水準に置かれている」と述べている。この調査はベトナムの10県34企業を対象に行ったもので、外資系企業や地元企業、国有企業が含まれており、10県の女性労働者約70%を対象としている。これらの企業に働く女性労働者は主に[1]繊維[2]被服[3]海産食品[4]建設資材――などの業種に従事。この調査は政府に女性労働者に関連した政策を策定することを目的としている。
 また、調査では、女性労働者の36%は少なくとも、1日当たり2時間の時間外労働を強いられていることがあげられている。女性労働者の平均賃金である月140万ドン(約6800円)では生活必需品代も賄えない水準であり、時間外労働での残業代が生活費を補う唯一の方法となっている。
 こうした労働慣行のため、一般的な女性労働者は[1]テレビを見る[2]本を読む[3]スポーツを楽しむ――などの自由時間がほとんど取れていないのが実情である。しかし、[1]女性労働者の約10%はスポーツなどの自由時間を取ることができても、そのうち約67%はラジオや新聞を買えない生活をしている[2]女性労働者の43%が賃貸住宅に住み、十分な衛生状態の中で生活をしていない――などの実情にある。この女性労働者の日常生活は文字通り、生産ラインに縛られたにも等しく、『労働法』を学ぶ機会はほとんどないのが実態である。
 このような状況のため、企業は「労働契約」の条項を無視し、女性労働者を保護している規則を適用しない状況を作りだしており、労働者の権利である育児休暇や病気休暇などの法律を遵守しない企業が顕著に現れている。ベトナムで起きた事例では、女性労働者が子どもの病気の世話するために休暇をとる場合、その申請は「事前に30~40日前に行わなければならない」というような規則の企業があり、これを無視すると解雇の理由となっていた。子どもの病気を1ヵ月前に予想することなどできるはずもなく、あまりにも理不尽である。
 また、ベトナムの現行法では、多数の女性労働者を雇用している企業には所得税の軽減などの特別措置が講じられている。
 これに対してVGCLは、「この法律の目的は女性労働者の雇用を促進させるため、企業に低金利での優遇融資を行うことにある。これを女性労働者の職業訓練や保育所の設置、出産休暇に関係する経費などに当てれば有効なものとなり、女性労働者の労働条件の改善に役立つことになる」と政府に提案している。
 

広州ホンダのストライキ

 広州ホンダ自動車の広東省・仏山市にある変速機工場で、長年の過酷な労働環境に対し、(1日12時間、1週間6日の労働時間)5月21日、中国人労働者がストライキを行った。
 日本のメディアがこのホンダ変速機工場の閉鎖を報道した5月20~21日、大きな注目はされなかったが、中国メディアやインターネットが中国国内で全面的に報道することが許された。
 中国当局がこのようなストライキ報道を許すのは、5月に深セン市で起きた台湾系企業での労働者自殺事件報道に続くもの。
 広州ホンダ自動車のストライキ参加者1900人は若い従業員が中心である。ある従業員はインタビューで「われわれの目的は“もっと金を”ということであり、政治的な意図はなく、月800元(10600円)賃上げとなればすぐにでも職場に戻る」と語った。現在の状況は、平均賃金150ドルに対して、117ドルの賃上げを要求していることになる。また、この従業員は、インターネットで他の工場の賃金がかなり高いことを知っており、「ホンダはすぐに賃上げで答えるべき」と強調した。
 中国南東部の工場で働く労働者の賃金は、月300ドルほどであるが、これは凄まじい残業をした結果である。この収入でも中産階級の夢である、ささやかなアパートと小型車を持つという夢の実現には不十分だ。公式の中国日報紙は5月28日、社説で「ホンダのストライキは政府の賃金政策の無策が労使の緊張を増した結果だ」と主張し、“賃金規制の修正を約束しながら経営者が反対しているという新聞報道で原案作りが遅れている”として人材社会保障省を非難している。
 中国は共産党に実権があり、政府管理下の労働組合となっている中華全国総工会(ACFTU)があるが、組合は主に労働者を監視する役目を負っており、賃上げや労働条件改善の交渉はしない。中国の法律では明確に「ストライキの禁止」となっていないが、ストライキ行為は許されてない。また、中国労使関係研究所の専門家は「ストライキは中国労使関係史上、意義のある進展でこのような大規模なストライキが組織されたことは中国の労働組合組織に変化をもたらし、市場経済に適応する力を生み出すことになる」とホンダのストライキを評価した。
 その後、ホンダが24%の賃上げを回答し、6月3日にストライキは解除されたが、中国日報は「賃金闘争には政府が介入しないという慣例ができた」と報じ、これまでにない事例となった。

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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