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No.26(2010/3/27)
欧州労連(ETUC)・2010賃上げ交渉ガイドライン

 欧州労連(ETUC)は、2009年12月1~2日の執行委員会で、2010年の賃金上げ交渉に関するガイドラインを採択した。ガイドラインでは2008~2009年の賃上げ交渉を検証した上で、2010年度の交渉を“賃上げか雇用か”を迫る経営側に対して、国を越えた密接な情報交換と連携を図る中で賃上げ交渉を進めるよう呼び掛けている。そのために欧州労連は「団体交渉調整委員会」の下に、「運営委員会」を設置して各国の団体交渉をサポートしていくことを決定した。ガイドラインの概要は次の通り。

1.2009年の賃上げ交渉は、欧州連合(EU)が発足以来、最悪の経済環境であったが、2~3%の賃上げを獲得した。物価上昇が0.5%程度あったので、2009年の賃上げ交渉で購買力の向上を図ることができた。

2.2008年は原油価格と物価の上昇によって購買力が目減りしたが、2009年の賃上げによって購買力を回復することができた。その要因の一つは経済危機がはっきりと認識された時までに賃上げ交渉が終了していたことである。しかし、2008年の3~4%以上の賃上げから、2009年の2~3%とすでに不況の気配は現れていた。

3.2009年は経済活動の急落による雇用喪失、その延長から失業率は2011年までにEU27ヵ国で10%、ユーロ圏で11%まで上昇すると予測されている。この予測はヨーロッパ全体の賃上げ交渉にマイナス要因となることは避けられない。

4.しかし、ヨーロッパの労働者は、今般の経済危機のツケを払うつもりはない。この危機は労働者の権利が強すぎたことに起因するものではない。10年におよぶ金融市場の規制緩和と労働者諸権利の緩和に起因するものであり、格差の拡大にも与した。

5.雇用か賃金か経営者の攻勢に直面するかもしれない。しかし、賃金凍結や賃金カットがヨーロッパ中に蔓延したら内需拡大もならず、さらなる経済悪化の悪循環に陥る。

6.労働は商品ではない。賃金は単に提供したサービスの対価だけを反映しているわけではない。生産性の低下した分、自動的に賃金を下げるべきということは認められない。

7.企業の経営幹部には巨額のボーナスが支給されたことに対して過去10年の間、賃上げはインフレと生産性に見合ったものではなかった。

8.ある国の団体交渉の結果が他の国の経営者に都合良く利用されないように、国を越えた団体交渉担当者間の情報交換を徹底する必要がある。モデルになる妥結内容は他の国で利用できるように努める。

9.「団体交渉調整委員会」の下に「運営委員会」を設置し、各国の団体交渉を監視する事務局のサポート体制を作る。

イギリスの不払い残業(サービス残業)

 イギリス労働組合会議(TUC)はワーク・ライフ・バランスの実現に向けた運動の一環として、残業時間削減を呼び掛けている。特に不払い残業が増えていることに注目し、2月26日(金)を「ノー残業デー」に指定し、全国キャンペーンを展開した。
 この取り組みの中でTUCは、「みんなが努めて、労働契約通りの労働時間内で適切に仕事をしよう。たとえ1年に1日だけでもこの違いが分かるはず。この日は昼食時間となったら、しっかりと昼食をとろう。職場のデスクで、サンドイッチだけで昼食を済ませてしまわないように。そして、定刻に職場を出て、金曜日を自分の時間として楽しもう」と呼びかけた。
 イギリスでは不払い残業が多く、毎年500万以上の人々が恒常的に不払い残業を行っており、TUCの統計によると、イギリスの未払い残業は週平均7時間12分・年間平均5402ポンドに上り、全労働者の年間未払い賃金を計算したら途方もない金額になる。これに対してTUC・バーバー書記長は「経営者が不況を乗り越えようと闘っていることは分かるが、従業員を意味もなくデスクに引きとめておくような文化は見直さなければならない」と述べている。
 TUCの統計によると不払い残業について、官民を比較すると民間より公務員の比率が高いという。2009年の統計では公務員の4人に1人(25.3%)、民間では6人に1人(18.3%)が未払い残業をしている。さらに週10時間以上の不払い残業を「過度の未払い残業」と位置づけているが、2009年は14000人増え、約90万人近くまで上っている。公務員では4.9%(週平均18時間)、民間では3.1%(17.8時間)が度を越した不払い残業をしている。未払い残業を性別でみると、独身女性の方が独身男性より多い。また教員は過度の未払い残業をしている職種であり、5人に1人は週平均約17時間という統計が出ている。
 過度の不払い残業が行われている職種で共通しているのは時間賃率ではなく、月給制で仕事をしている労働者である。これは不払い残業という意識もなく、残業をしている人が多いことである。
 TUC・バーバー書記長は「残業代が支払われようとなかろうと長時間労働は、労働者自身の健康のためにも家族のためにも良くない」とキャンペーンの趣旨を強調した。
 過度の不払い残業が増えている一方で不完全就労が増えているという統計もあり、「不払い残業と不完全就労との因果関係はないが、職探しで苦労している人たちにとって、多く労働者がタダ働きをしていることは理解できないでだろう」とも指摘されている。統計では、280万もの人びとが現在の仕事をもっと長時間したい、すなわちパートタイム労働ではなくフルタイムの仕事を希望しているという。

スコットランド・暴力から店員を守る緊急労働者法

 スコットランドでは新たな『緊急労働法』が議会を通過すれば、商店等の従業員に対する悪質な暴行が少なくなるものと期待されている。
 この法案は「店員に対する暴行は、救急車など緊急サービス業務に従事し、市民と接触する最前線にある係員に対しての暴行と同様に、店員に対する暴行も加重犯罪として認めることを可能にする」ものである。関係産別はスコットランドのほか、イングランドとウェールズの店員保護のために「法的制裁措置導入」の運動を進めている。
 スコットランド議会のヒュー・ヘンリー労働党議員によると「公共サービスに従事する労働者はしばしば肉体的暴行を受けている。これらの犯罪に対する罰則強化は改善されつつあるが、職場における暴力から従業員を守るためには不十分である。緊急労働者法は特定グループの労働者に対する暴行や妨害等に対しては、より強い罰則を適用し関係労働者を保護するものである。新たな法案はこの緊急サービスに従事する労働者を暴力から守る緊急労働者法の労働者保護規定を店員にも適用することである」としている。
 これに対して商店流通関連労組(USDAW)・ジョン・ハネット書記長は、「店員は一般の人々に重要なサービスを提供しているが、あまりに多くの従業員がたやすく暴力や暴言のターゲットになりやすい。最近の調査では10人に1人の割合で仕事中に暴行を受けており、ヒュー・ヘンリー法案の議会通過を応援していきたい。イングランドとウェールズでも同じような法律が施行できるように運動をはじめている」と述べている。
 『緊急労働者法』の施行以降、緊急サービスに従事している労働者に対する暴力は減少したが、この法律が適用されない労働者への暴力は増加しており、今回の法案はスコットランド議会の多くの議員の支持を得ているため、2010年5月上旬までに起草される予定である。同法案の採択に向け運動を展開している産別はUSDAWの他に[1]Unite(運輸、製造、電機、金融)[2]Unison(公務員)[3]CWU(情報)[4]ASLEF(鉄道運転手機関士)――である。

*国際運輸労連(ITF)によると英国鉄道海員運輸労組(RMT)の調査では鉄道労働者が受けた暴力件数は2008年には4865件にも上がるとされている。交通運輸労働者にとっても、仕事中に受ける暴力が日常化しており、ITFは暴力から労働者を守る「暴力反対」キャンペーンを展開している。

発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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