連絡員だより第1号

インド非正規学校の運営に携わって
V.R.ジャガナタン:JILAFインド学校プロジェクト連絡員

 JILAFでは、国際的な社会開発活動の一環として、インドとネパールにおいて、現地労働組合ナショナルセンターと協働し、「児童労働撲滅のための非正規学校ブロジェクト」を長年にわたって展開しています。このプロジェクトでは、インドで1校、ネパールで9校の学校を現地労働組合ナショナルセンターとの協力のもとで運営し、家庭の貧困等が理由で普通教育に接することができていない子どもたちに対して教育の機会を提供しています。
 今回は、インド・アンドラプラデシュ州で運営している学校について、現地でプロジェクトを統括しているV.R.ジャガナタン氏(インド労働組合会議(INTUC)組織担当中央執行委員/INTUCタミルナドゥ州支部書記長)より、モニタリングレポートが寄せられました。インド非正規学校のいまについてお伝えします。

<JILAF学校プロジェクトの立ち上げ>

JILAFインド非正規学校プロジェクトの展開

 非正規学校のプロジェクトはタミル・ナドゥ州のコビルパティで19年前に始まりました。
 当時、コビルパティ地域は数千人の児童が過酷な労働現場で働いており、国際機関その他からも危険な産業で児童労働が行われていたことによる批判が大きくなされているような状況にありました。
 そこで、インドナショナルセンターであるINTUCは、JILAFと協力してタミル・ナドゥ州の、特に花火やマッチ製造のような危険な産業における児童労働を排除するための活動を行うことにしました。貧しい労働者を援助し、子どもたちが教育を受けるのを助けることに興味があった私は、INTUCのそういった活動を知り、応募して採用されました。

<多くの困難を経て>

算数の授業の様子

 立ち上げには多くの困難がありました。まず、地元とのコミュニケーションからです。私はコビルパティ地域を何回も訪れ、地元の組合や地域社会の人々と多くの話し合いをしました。そして、地元の組合は趣旨を理解し、校舎を提供してもらえることになりました。次は教師です。これも地元の組合から教員資格をもつ先生たちを派遣してもらいましたが、さらに教える技術を習得してもらうため、非正規教育センター(ネパール政府運営の非正規学校の管理・運営を実施している機関)から講師を招き、5教科(国語、英語、理科、社会、算数)の教授方法や生徒を授業に集中させる方法などについて学習してもらいました。JILAFには、子どもたちのための制服や学用品、教師の給料などを提供してもらいました。
 最も苦労したのは、生徒集めです。子どもは両親と一緒に仕事をするのがこのあたりの地域の常識です。それを仕事場ではなく学校に出すわけです。そのために子供たちの両親や地域社会に対し、教育や、児童労働をなくすことの必要性を理解してもらうようにしました。それは簡単なことではありませんでした。

グントゥール校の外観

 しかし、そういった苦労の甲斐もあって、現在までに数百人の児童を卒業させることができました。JILAFコビルパティ非正規学校は今では州内では誰でも知っているような有名校になっています。それは教師の継続的なスキルアップと児童へのテストの実施によるモチベーションアップ法が評判を呼んでいるからだと言われています。他の学校の生徒が子供とスタッフを動機づけるために非正規学校に来ているほどです。

<学校運営で気を付けていること>

グントゥール校スタッフの皆さん

 現在、プロジェクトを実施しているグントゥール校では50人の児童を受け入れていますが、これら児童は、両親の職場へ一緒に行き、労働に従事していた子どもや、離婚や死別等で教育費を負担できず学校に行けない子どもなど、さまざまな背景を持っており、学習活動以外のあらゆる面についても気を配らなければなりません。そのため常にスタッフ会議を行い、さまざまな問題について話し合っています。

 私の仕事は、プロジェクトのコーディネーターですが、その仕事は非常に重要です。定期的に地元の組合や学校のスタッフと一緒に行動し、地域の問題やニーズを理解しなければなりません。そしてスタッフにモチベーションを与えることです。
 また、地元の問題やニーズを理解し、子供たちの両親が安心して子供たちを学校に預けられるようにしなければなりません。そのため、児童の両親との会議も実施しています。
 非正規学校のプロジェクトとは別に、職業体験としてろうそくや刺繍技術の訓練を数ヶ月前から始めました。職業を体験することで、将来の夢を抱くことも子どもたちにとって大事なことと考えています。

<プロジェクトに携わってきて>

 20年近く、このプロジェクトに携わってきて、タミル・ナドゥ州、アンドラ・プラデシュ州の2州で計4か所の学校を運営してきましたが、地域によってかなり差があり、それに対応するため、かなり苦労しました。しかし、INTUCとJILAFは私を信頼し、プロジェクトを支えてくれ、結果、多くの児童労働をなくすことができました。そのことはわたしの最大の喜びです。今後ともプロジェクトを続け、一人でも多くの児童が夢を抱けるようにしていきたいと思っています。

<最近の動き>

 本年に入ってからの動きとして、熱心な学校教員によって、親御さんとの面接が精力的に行われ、子どもへの教育の重要性に関するモチベーションがますます高められています。
 また、男子児童はろうそく作り、女子児童は刺繍を新たにカリキュラムに取り入れました。将来、彼らの生活の自立の一助として役に立てば幸いです。
 さて、昨年度は卒業生8名を送り出し、本年度からの地元普通中学校への編入を果たしました。小学校の教育課程を修了した彼らですが、一部は中学2年(第7学年)へと、年齢に応じた学年への編入(※)が認められました。本年度も昨年度同様、卒業生による地元公立中学校への編入が待望されています。
(※)インドでは、小学校教育課程は5年制。本校入学時には、年齢に応じた学年のカリキュラムを学ぶのではなく、その子どもの学力に応じたクラスに編入する柔軟な対応をとっている。その結果、ある学年のクラスにおいては、年齢が異なる児童がひとつのクラスを構成する。

 本校の運営や教育内容に対しては、インド政府の群教育行政官事務所の定期的な調査や視察、運営指導はもちろんのこと、最近は近隣の普通小学校から教員・生徒が視察・見学に訪れるほどになっています。これは、ひとえに同学校の運営に携わる教員・スタッフの熱心さと提供している教育の質の高さなどを物語っております。
 昨年のインドの子どもの日(2016年11月14日)には地区の記念行事が開催され、他の学校の児童とともに本校児童が参加して歌と踊りを披露しました。児童たちは、なんと賞を獲得しました。

 普通初等教育に接していなかった75名の子どもたちが、地元労働組合組織の協力と熱心な教職員のもと、普通中学校への編入を志し、現在も友だちとともに熱意を持って学んでいます。JILAFでは、引き続き現地パートナー組織とともに協力を進めていきます。

  • 男子児童はろうそくを作った

  • 女子児童は刺繍に取り組む

  • 昼食前の手洗い習慣化、これも教育の一環です。

  • 地区のこどもの日記念イベントで出し物を披露

  • イベントでは賞(群庁教育行政官)を獲得

  • 運営に携わる人々。教員とスタッフ、現地組織のコーディネーター(ジャガナタン氏:右から3人目)。

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