現地支援事業

外務省 日本NGO支援無償資金協力事業 実施プロジェクト

バングラデシュにおける労働組合による
労働安全衛生(POSITIVE)活動実施報告書

1.プロジェクト概要

(1)クルナ地域セミナー

1)開催地:クルナ

2)開催時期:2004年5月23~25日

3)参加者数:25名、現地専門家5名

4)主な内容:

  • 今回対象としたクルナ地域は、第二の工業都市でありジュート、繊維を中心に、化学、金属、港湾関連も含め約50万人の工場労働者が従事している。
  • ICFTU-BC各5組織からそれぞれ各企業で活動している組合リーダー25名が参加。
  • 今回が始めてのPOSITIVEプログラム導入であるため、新たな労働安全衛生の専門家を育て、職場の改善を図ることが目的。
  • セミナーは、現地専門家により実施された。初日はマッチ工場を訪問し、「良い事例」と「改善すべき事例」をチェックリストエクササイズにより確認。その後、工場訪問で確認した事例を基にグループディスカッションを実施。二日目からは、現地専門家が中心となり、グループディスカッションやグループプレゼンテーションを取り入れながらPOSITIVEセミナーを実施。最終日には、参加者からマッチ工場の経営者に「改善するべき」点を提案。具体的には、環境面や機械の取り扱いは良いものの、福祉施設の充実を求める提案がなされた。これらの提案は低コストで実施できる有益なものであった。
  • このセミナーを受けた参加者がクルナ地域でのPOSITIVEトレーナーとして活動する事を確認。今後の自主的な活動に向けてそれぞれが活動計画を策定した。

(2)全国専門家会議

1)開催地:ダッカ

2)開催時期:2004年7月20~21日

3)参加者数:49名、現地専門家5名

4)日本からの派遣者:
外山 尚紀(東京労働安全衛生センター 事務員)
高井 定考(国際労働財団 常務理事)
柳谷 公彦(国際労働財団 現地支援事業部員)

5)主な内容:

  • これまでダッカ、チッタゴンを中心に、工場レベルセミナーの講師を務めてきた現地トレーナー(300名)の中から中核となる人物を49名集めた。
  • 目的は、参加者が「これまでの活動状況の報告」、「改善事例の収集」、「課題の整理」、「自主的活動計画の策定」を行い、その後に「職場レベルセミナー」、「職場での改善活動における効率的かつ効果的な展開」を行う事である。
  • 開会式においては、ICFTU-BCリーダーから労働安全衛生に対する取り組みがいかに必要であるかを述べるとともに、参加者に対して激励の言葉が送られた。
  • JILAF高井常務からは、JILAFの概要説明を行うとともに、今回器材を供与したこと、こうした器材を今後の展開に向けて有効に活用して欲しい事を述べた。
  • 外山専門家からは、「アジアにおけるPOSITIVE」と題して、他国の活動状況を紹介することで様々な展開例を紹介した。また、今回供与した器材を活用した教材の作成方法について指導を行った。
  • 参加者からは、「これまでの活動状況の報告」として、約300枚以上の改善事例写真が持ち寄られた。主に、「消化設備」、「福祉施設」などの改善例が目立った。これらの写真を基にグループごとに「何が達成できたか」、「今後の課題は何か」という視点でディスカッションを行いその後にプレゼンテーションを実施し参加者間の情報共有化を図った。
  • また、今後の課題をグループごとにディスカッションし、プレゼンテーションがなされた。
  • 最後には、「職場レベル」、「地域レベル」、「国レベル」ごとの活動計画を策定する為に、グループディスカッション行い、その後にプレゼンテーションを実施した。
  • 外山専門家からは、「身近で安価な改善がなされている」、「経営資源を大切にする改善がなされている」などの点で評価がなされた。

(3) 教材作成用器材の供与

1)供与器材:

供与器材名 個数
ノートパソコン 5
OHP 5
UPS 5
ソフトウェア 5
デジタルカメラ 5
カラープリンター 1

2)活用状況:

  • 供与にあたり、[1]製造番号ごとの保管者の明確化、[2]設置場所の明確化を行った。
  • 現在では、「工場での事例収集」、「トレーニングツールの作成」、「セミナー時のプレゼンテーション」、「現地専門家間の情報交換」と事業展開に有効に活用されている。

(4)フォローアップセミナー

1)開催地:ダッカ、クルナ

2)開催時期:2005年2月16日~20日

3)参加者数:125名、現地専門家5名

4)日本からの派遣者:
仲尾 豊樹(東京労働安全衛生センター 事務員)
柳谷 公彦(国際労働財団 現地支援事業部員)

5)主な内容:

  • フォローアップセミナーは、これまでPOSITIVEセミナーに参加した現地トレーナーが職場の組合員を対象にセミナーを実施しているものである。今回は、ダッカ、クルナ地域で実施した。特に、クルナ地域では5月の地域セミナーでトレーニングされたトレーナーが組合員を指導した。
  • コアトレーナー5名は、現地トレーナーの運営を補佐する役割を果たした。
  • セミナーでは、工場を訪問し、「良い事例」、「改善すべき事例」収集を行うとともに、経営者との意見交換も行った。
  • 日本人専門家からは、現地専門家や現地トレーナーに対して使用教材やトレーニング方法などに関する助言を実施するとともに、他国での改善事例などを紹介し現地トレーナーのスキルアップを図った。また、「日本の労働安全衛生活動の状況」についても説明がなされた。

2.事業の実施成果

 バングラデシュにおいては、他の開発途上国と同様に、政府や経営者によって労働安全衛生に関する投資や教育等十分な対策が講じられていない。その結果、安全衛生への配慮が不十分な劣悪な職場環境で就業せざるを得ない労働者も依然として多く、特に繊維、化学薬品、運輸、建設等の産業では労災事故、死亡事故が多く報告されている。

 労働安全衛生の維持・向上は、労働者自身の安全・健康に深く関わる本質的な要素である。労働者が労働災害の予防方法について、その責任と義務を理解し、職場改善の過程に自主的かつ積極的に関与し、経営者と共に努力することにより実現できるものである。

 そこで、(財)国際労働財団は、国際自由労連バングラデシュ協議会(ICFTU-BC)を通じ、労働参加型の労働安全衛生プログラム「POSITIVE」を1996年度より実施している。専門家育成トレーニング、工場レベルセミナーの実施により約300名の専門家を養成し、3500名以上の労働者に労働安全衛生に関する職場レベルセミナーを実施してきた。

 今年度は、これまでダッカ、チッタゴンを中心に、職場レベルセミナーの講師を務めてきた現地トレーナー(300名)の中から中核となる人物を集め、活動状況の報告、改善事例の収集、課題の整理、自主的活動計画の策定を行い、その後の職場レベルセミナー、職場での改善活動における効率的,効果的な展開を行った。これらの活動においては、供与した器材を有効に活用しながらセミナーを進めていた。

 上記活動により、クルナ地域の労働者の安全衛生に対する意識の向上が図れたとともに、今後クルナ地域で中心となって活動していくトレーナーを育てる事ができた。また、全国専門家会議では、トレーナーの活動状況の確認ができ、更にこれまで活躍してきたトレーナーのスキルアップを図ることもできた。

 今後は、各トレーナーから出た意見も参考にしながらICFTU-BCが主体的に今後のプランを策定し、ICFTU-BCと各トレーナーが供与器材を有効に活用しながら普及ツール(教材、パンフレット等)の作成を円滑に行うとともに、職場でのアウェアネス活動や職場改善活動を継続的かつ自主的に行っていくものと思われる。